ギリシャのソフトメーカー、accusonusからドラム関連の魔法のツールが登場
ご存知の方も多いと思いますが、飛澤さんとは、DTMステーションEngineeringというサービスをご一緒させていただいていますが、その飛澤さんから「InterBEEでプレゼンするよ~!」と伺っていたので、いまいち状況も分からず指定されたブースに行ってきたんです。お会いすると「これから面白いデモをやるよ」というので、見ていたのですが、あまりに衝撃的な内容でした。
Inter BEE会場でセミナーを行っていたレコーディングエンジニアの飛澤正人さん
飛澤さんは、いつも愛用のPro Toolsを起動。このPro Toolsにaccusonusのプラグイン(AAX版)を使って2つのデモを行ったのですが、1つずつ見ていきます。
Regroover Proのデモでは、まず空のセッションに、ごく一般的な2小節分のドラムループ素材を置いて試聴。でも、これは本題ではなく、次にRegroover Proのインストゥルメントトラックを起動します。そして、ここに、先ほどのドラムループをドラッグ&ドロップ。すると、1~2秒「Analyzing…」という表示が出て考えた直後に、4トラック(Regroover Proではレイヤーと呼んでいる)の画面が表れてきたのです。
ステレオ2chだったドラムループが一瞬で4トラック(4レイヤー)に分離された
確かに昔からReCycle!などのスライスというツールは存在していました。スライスすれば、リズム素材からスネアを切り出したり、ハイハットを切り出したり…ということはある程度できます。でも、普通キックとハイハットは一緒に鳴ってるから、スライスでは絶対に分けることはできないですよね。でも、このRegroover Proは、そこをキレイに分離してくれちゃうんです。これが人工知能の威力だというのですよ。
WindowsのCubase Pro 9.5上で同じことを試してみたら、あまりにも簡単にできてしまった
で、実は疑り深い私としても、騙されてる気がして自分のPCにRegroover Proをインストールして試してみました。ここではWindowsのCubaseにVST版のプラグインを入れたわけですが、まあ見事に飛澤さんのデモが目の前で再現できました。いろんなドラムループを試してみましたが、どれも瞬時にできてしまいます。
とはいえ、必ずしもすべてが完璧とはいかない部分があるのも事実。たとえばキックのトラックにうっすらとハイハットの音が混じったりもしているんですね。でも、そこは手動でより正確に処理することが可能です。消しゴムツールを使って、うっすら入っているハイハットを消すと、その消えた成分が本来のハイハットのレイヤーに移動するんです。だから、全体を聴いてバランスがおかしくなることはなく、あくまでもオリジナルの音のままなんですよ。
ここでキレイに分離ができたら、たとえばキックを一発分選択した上で、右下のパッド部にドラッグ&ドロップすると、これがMIDIのキーに割り当てられるんです。この辺はReCycle!など昔からあるスライスツールでもできた機能ではありますが、より完璧な形で各音を抜き出せるという点では大きな進化ですね。
飛澤さんのデモで面白かったのは、この各レイヤーのループの長さを自由に変更できてしまうというところ。つまりハイハットはオリジナル通りに2小節分をループしながら、キックは頭の4拍分を繰り返し、スネアは途中の3拍分を繰り返す……なんて遊びもできるんですね。
まあ、そんなことをしなくても、各レイヤーを個別にWAVで書き出すことが可能で、それをDAW側で読み込んで再構成することもできるので、使い方はいろいろとありそうです。
11月に開催されたInter BEE 2017
では、次の魔法を紹介しましょう。今度はDrumatomというツールの紹介で、飛澤さん的には、こっちのほうが実務に大きく役立つということをおっしゃっていたのですが、これもなかなかビックリするものでした。
飛澤さんが以前にレコーディングしたというあるアーティストのセッションファイル
このDrumatom本体はプラグインではなく、スタンドアロンで動かすツールなのですが、飛澤さんが用意したのは、以前に飛澤さんがレコーディングしたという、あるアーティストの曲のセッションファイルです。そのレコーディングでは、生ドラムを録っているため、数多くのマイクで収録しています。具体的にはスネア上からと下から、キックは内側、外側、さらにサブ、またハイハット用、シンバル用、ライド用……と別々のトラックにレコーディングされていました。
ドラムを録音した各トラックをまとめてDrumatomへドラッグ&ドロップ
Windowsでも試してみた。レコーディングしたトラックのWAVファイルをまとめてドラッグ&ドロップ
その結果、各音を再生する際にパラメータを動かすことで、完全に独立した音にしたり、多少被り音を混ぜていく……といったことが可能です。そして各処理結果は1つずつWAVファイルとして書き出すことができるので、その後、各種DAWに読み込んで利用することが可能です。また解析した結果は別ファイルとしてまとめて保存することもできるようになっており、これがまたちょっと面白い使い方ができるのを飛澤さんが実践していました。
飛澤さんがPro Toolsを起動すると、Drumatom Playerというインストゥルメントのプラグインが用意されていました。これはDrumatomとは別売のソフトで、Windows、MacのVST、AAX、AudioUnitsで動作するというもの。これ自体では解析処理はできないのですが、Drumatomが解析した結果のデータを読み込んで活用するツールとなっているんです。先ほど保存した解析結果データを読み込むと、それぞれのトラックごとに再生が可能となり、ほかのトラックと合わせたり、エフェクトを使いながら、ここで被り具合を調整していくことができるのです。
それぞれのトラックに個別にEQやコンプ、その他エフェクトを使って音作りができる
SONICWIREであれば、現地価格と基本同額で、購入手続きはすべて日本語・円で決済可能。また購入後は日本語でのメールサポートが受けられるので安心です!
【関連情報】
Regroover Pro製品情報
Dramatom製品情報
Dramatom Player製品情報
SONICWIRE accusonic製品