• 自動音場補正システムが内蔵で、オートキャリブレーションができる高性能モニタースピーカー、iLoud MTMを試してみた

以前からずっと気になりつつ試したことがなかった機材をようやく使うことができました。それはIK Multimediaが出すモニタースピーカー、iLoud MTM。結構多くのレコーディングエンジニアさんがいいと言っていたり、知り合いの作曲家さんなどが導入して使っているので、どうなんだろう……と思っていたのです。店頭で実物を見たり音を聴いたことはあったのですが、スピーカーの音って、自分の慣れた作業環境で聴いてみないことには、ホントにいいのかよくわからないのが正直なところなので、自宅で試してみたかったのです。

これに興味を持っていた最大のポイントはiLoud MTMには自動音場補正システムが内蔵されていて、これを使うことで自動でキャリブレーションができるという点。こうしたキャリブレーション機能を持つモニタースピーカーとしてはGenelecのスピーカーやNeumannのKH80 DSPなどがありますが、やはり結構価格的に高価なので、戸惑うのも事実。それに対し、iLoud MTMはもう少し手ごろな価格であり、スピーカー本体にキャリブレーション用のマイクというが付属しているのも嬉しいところ。先に結論から言ってしまうと、物凄い威力を持った超高性能モニタースピーカーであることを実感できました。実際どんなモニタースピーカーで、どうやって使うものなのか、紹介してみましょう。

キャリブレーション機能をもったIK Multimedia iLoud MTMを試してみた

モニタースピーカーをどう選べばいいかって、とっても難しいですよね。オーディオインターフェイスやMIDIキーボードなどは、ある程度スペックなどから絞り込んでいくことができますが、モニタースピーカーって、基本的には入ってきたオーディオ信号を音にして出すだけですから、機能としてはどれも同じ。とはいえ、出てくる音はそれぞれ違いがあるので、やはり「いい音」のモニタースピーカーが欲しいところですが、そもそも何をもって「いい音」なのか、という定義もハッキリありません。となると、誰かが「いい音だ」と言っていたということから判断するか、自分で聴いて判断するしかないのが難しいところ。

iLoud MTMのフロントパネル(左)とリアパネル(右)

もちろんメーカーや機種によって大きさや出力の違いはあるので、自分のデスクトップ環境、部屋にマッチしたスピーカーを選ぶことは必要です。大きすぎてデスクに置けないとか、ディスプレイが邪魔して設置できない……という物理的な問題は避けなくてはならないし、部屋の大きさに対し、必要以上に大きすぎる出力のスピーカーを置いても無駄になってしまうと思いますから、その点から、ある程度選択肢を絞っていくことはできますが、それでもその先の選び方はやはり難しくなります。

まずは自分のデスクトップ環境に設置できるかで選ぶことになるが、iLoud MTMはコンパクトなので、設置しやすい

もう一つの問題は「いい音だ」と言われているモニタースピーカーであっても、自分の部屋で鳴らすと必ずしも、いい音になるとは限らないこと。そう、スピーカーの音は本体だけで決まるのではなく、どこにどの方向を向けて設置するのか、部屋の大きさや部屋の壁の形状がどうなっているのか、部屋にどんなものが置かれているのか……といった環境によって、まってくといっていいほど音が変わってしまうので、モニタースピーカー選びと同じくらい、部屋の環境づくりも重要なのです。

一般的にスピーカーの音は部屋の環境によって大きく変化する

といっても、普通、部屋でできるのは、あまり音の反射がひどくないようにするくらい。カーテンをつけるとか、カーペットを敷いてみるとか、場合によっては吸音材などを設置してみる……くらいでしょうか。そこから先は試してみないと分からないのが実際のところであり、どんどん難しい方向にいってしまいます。

ここで改めて「いい音」について考えてみると、モニタースピーカーの場合、いかにフラットな特性なのか、が重要になるところ。つまり低域も高域も出るし、中域が出すぎたりすることもなく、フラットにすることが大切になりますが、いずれもスピーカーの特性とともに部屋の環境によって変わってきてしまいます。そこで登場するのがキャリブレーションという考え方。つまり設置した環境に合わせて、スピーカーの特性自体を調整してフラットにしてしまう、という方法です。

通常のブラックモデルのほか、ホワイトモデルも用意されている

そのキャリブレーションに対応したモニタースピーカーの代表ともいえるのがGenelecのスピーカーでしょう。プロの世界でも幅広く導入されていますが、価格的に手が出しづらいのも事実。また以前に何度か紹介したNeumannのKH80 DSPもキャリブレーションに対応していますが、やはりいいお値段です。

そうした中、IK MultimediaのiLoud MTMはもう少し購入しやすい価格のキャリブレーションに対応したスピーカーであり、かつキャリブレーションの方法がGenelecやNeumannの製品と比較してもより簡単で使いやすいというのもユーザーにとってはすごく嬉しいポイントです。

iLoud MTMに付属する測定用のマイク、ARCマイク

そのキャリブレーション、実際に試してみたので、紹介してみましょう。まずはマイクスタンドなどを使って自分が音を聴く位置=リスニングポイントに付属ARCマイクを設置します。そして付属ケーブルを使って片方のスピーカーのARC MIC INと接続するのです。ちなみにとなりにあるUSB端子はメンテナンス用であり、PCと直接接続してオーディオのやりとりをするものではありません。

マイクケーブルをARC MIC INに接続する

するとマイクにあるLEDが緑色に点灯します。その後、接続したスピーカーのリアにあるCAL/PRESETというボタンを長押しするのです。すると、スピーカーフロントにあるLEDが白く点灯している状態から水色の点滅状態に変化。

LEDが青く点滅し、測定が開始される

その後やや大きな音で「ピュイーン」という音が4回ほど鳴ります。これによって音の測定を行っているのですが、うまく行くと一旦LEDは緑になり、通常の白の点灯へ。これでキャリブレーション完了です。この作業を左右のスピーカーで順番に行えばOK。実際の手順を示す動画をIK Multimediaが公開しているので、これを見れば作業の流れは分かると思います。

その後、音を聴いてみると、物凄くクリアな「いい音」になっているんですよ。試しに、リアにある先ほどのCAL/PRESETボタンを使って、FLATというモードに切り替えて聴いてみると、「え?元はこんなに酷い音だったの?」と感じるほど。低音が濁っていたり、高域のキレが悪かったり……、設置している部屋の環境によって、その感想は変わってきそうですが、まったくといいほど異なる「いい音」になってくれるのです。

でも、どうして、そんな魔法のようなことができるのか?それはiLoud MTMにDSPが内蔵されており、先ほどのキャリブレーション作業によって、部屋の特性を理解した上で、その部屋でフラットな特性の音になるように、補正してくれるからなんですね。ここでは周波数特性だけでなく位相特性などもチェックした上で、DSPが補正してくれているのだとか。逆にいうと、キャリブレーションがない状態での音が、これまで酷いのか……と認識できてしまうのが怖いところです。

キャリブレーションの結果、非常にフラットな特性になる

ちなみに、先ほどのCAL/PRESETボタンではFLATのほかにDESKというモードも用意されています。これは机の上にモニタースピーカーを設置すると、机による反射によって中域特性が変わるので、これを補正してくれる機能のようですが、先ほどのキャリブレーションによって、その辺もすべて考慮の上調整してくれるので、このDESKモードを使うことはあまりなさそうです。

もちろん、キャリブレーションによるフラットな特性だと、どうも低域が物足りなく感じるとか、高域をもっと出したいという人もいると思います。その場合はリアにあるLF EXTENSION、LF、HFというスイッチを使ってある程度調整することは可能です。

リアのボタンである程度、周波数特性を調整することが可能

ところで、このiLoud MTMがよくできているのは、その設置の自由度が一般的な箱型スピーカーと比較して、非常に高いこと。付属スタンドが用意されており、これによって、0~20度の角度をつけることが可能になっているのです。しかも、このスタンドがアイソレーターとしての機能も持っているから多少、安定感の悪いデスクであっても、低音をしっかり出すことができるんですね。

付属スタンドを使って20度の角度をつけた状態

水平=0度に設定した状態

また横置き用のゴム製設置台も用意されていているので、場所によっては横置きで使うといった選択も可能。さらに底面にはマイク・スタンド設置用のネジ穴もあるので、スタジオに持ち込んだり、ライブで使うといった場合にも、自由度高く設置して使うことができるようになっているのです。

付属のゴム製設置台を使って、横置きに設置してみた

そして何よりすごいのは、そのように持ち運んだ先で、改めてキャリブレーションを行うと自分の部屋で聴いたのと同じ音にすることができる、という点。持ち運ぶと、当然、そこでの空間の環境が異なるので、モニタースピーカーの音は変わってしまいますが、キャリブレーションをすれば、どんな環境でも同じフラットな状態に持っていくことができるので、いつでも同じ音でモニターできるという安心感は大きいと思います。

キャリブレーション機能の有無は、まさにモニタースピーカーの概念を大きく変える革命的なもの。一度その威力を知ってしまうともう元に戻ることができないかもしれませんが、ぜひiLoud MTMで本当の意味でのフラットなモニター環境を構築してみてはいかがですか?

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IK Multimedia iLoud MTM製品情報

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