超高性能オーディオインターフェイスAntelope Audio Discrete 4 Pro Synergy Core最速レビュー

5月26日、Antelope Audio(アンテロープ・オーディオ、以下Antelope)からDiscrete 4 Pro Synergy Coreが発売されます。これは新たなラインナップDiscrete Proシリーズの製品であり、Discrete 4 Synergy Coreの次世代モデル。「Pro」が付いているとはいえ、上位モデルというわけでなく、これまでAntelopeの人気製品であったDiscreteシリーズの後継モデルとなっています。

Discrete 4 Pro Synergy Coreは、Thunderbolt 3およびUSB 2.0接続で14in/20out、ディスクリートの6トランジスタ・プリアンプを搭載しており、内蔵のDSPおよびFPGAにより、PCのCPU負荷をかけずに数多くのエフェクト処理ができるのが特徴。最大130dBのヘッドルームを持ち、192kHz/24bitでの録音が可能。また独自の64bit AFC™(Acoustically Focused Clocking)技術とジッター管理アルゴリズムにより音の奥行き、分離、ディテールが向上しているとのこと。そのDiscrete 4 Pro Synergy Coreを一足早く入手し、いろいろとテストすることができました。最速レビューということで、Discrete 4 Pro Synergy Coreが実際どんな機材なのか、紹介していきましょう。

超高性能なオーディオインターフェイスAntelope Audio Discrete 4 Pro Synergy Coreが発売開始


Antelopeはプロ御用達のクロックジェネレーターでお馴染みのメーカー。フラグシップモデルとして憧れの機材、ルビジウム超安定性レゾナンスコントロールドマスターオシレーターを搭載した10MX(税込実売価格876,700円)は、スタジオでトッププロが使用するなど、その音質、クロックには絶対的な信頼があります。とはいえ、値段の高い製品以外にも、最近は手ごろな価格のオーディオインターフェスなどもいろいろ展開しています。Zen Go Synergy Core(同69,300円)などはバスパワーで動作するコンパクトながらも超高性能・超多機能な機材として、プロからアマチュアまで幅広い層のユーザーが使っています。

ディスクリートの6トランジスタ・プリアンプを搭載しているDiscrete 4 Pro Synergy Core

さて今回発売されたDiscrete 4 Pro Synergy Coreについては、以前「Antelope Audioが超高性能なオーディオインターフェイス、Discrete 4 Pro Synergy Core、Discrete 8 Pro Synergy Coreを発表」という記事でも取り上げています。そこにもあるように、発表された新製品はDiscrete 4 Pro Synergy CoreとDiscrete 8 Pro Synergy Coreの2つのラインナップ。今回は、そのDiscrete 4 Pro Synergy Coreに焦点を当てて、より詳しく紹介していこうと思います。

まず、以下の表はDiscrete 4、Discrete 4 Synergy Core、Discrete 4 Pro Synergy Coreの違いです。

Discrete 4、Discrete 4 Synergy Core、Discrete 4 Pro Synergy Coreの比較表

「Discrete 4 → Discrete 4 Synergy Core → Discrete 4 Pro Synergy Core」と発売されてきたわけですが、どんどん進化しているのが分かると思います。Discrete 4 Synergy CoreとDiscrete 4 Pro Synergy Coreの違いでいうと、AFXチャンネルストリップの数が4から16に増え、ルーティングの自由度が増し、PCとの接続はUSB 2.0のインターフェイスを装備つつ、さらに高速なThunderbolt 3にも対応しました。またAD/DA、モニターアウトのダイナミックレンジも増えており、ベーシックの部分でもより強力な機材へと進化しているのが伺えます。

実際に入出力など基本的なスペックからチェックしていくと、フロントに2つ、リアに2つのマイク入力が装備されています。ちなみにこのマイクプリは、Discreteという名前の由来にもなった、これはアナログのレコーディングコンソールからインスピレーションを得て開発した6トランジスタ回路構造を持つディスクリート・ウルトラ・リニア・マイクプリアンプを搭載。ディスクリート回路とは、いわゆるICやLSIを使わずトランジスタ、抵抗、コンデンサなどのアナログ部品だけで作った回路のことで、Antelopeがかなりこだわりを持って作っている部分。このマイクプリに関しては、これまでのDiscreteシリーズと同じものとなっているよう。なお、このマイク入力のうちフロントにある2つはギター入力も兼ね備えた端子になっています。

Discrete 4 Pro Synergy Coreのフロントパネル

一方、フロントの右側には4つのヘッドホン端子があり、これらはすべて独立した信号を割り当てられるようになっています。なので、ボーカルレコーディングする際にボーカリストへは、クリックを追加して返したり、エンジニアとは違うバランスを作って、歌いやすい環境を整えることが可能。

フロント右側には独立したヘッドホン出力が4つも装備されている

リアには4つのTRS出力によるラインアウト、さらにステレオでのモニターアウト(これはヘッドホン1と同じ信号)がTRS出力×2の形で搭載されています。

リアパネルには、右側にコンボジャックの入力、その左にラインアウト、モニターアウトがある

また、ADATの入出力およびS/PDIFの入出力、そしてワードクロック出力も2つ用意されています。44.1kHzまたは48kHzでの動作時にはADATが8ch、S/PDIFが2chとなるので、デジタルで10IN/10OUTを装備していることになります。そして、このクロックはAntelopeが誇るマスタークロック製品、「Isochrone Trinity」や「OCX HD」と同等の第4世代 64bit AFCテクノロジー Master Clockを搭載。なので、Discrete 4 Pro Synergy Coreをクロックジェネレーターとして使うことも可能。クロックだけのためにDiscrete 4 Pro Synergy Coreを導入してもいいレベルですね。

デジタル系はADAT入出力、S/PDIF入出力があり、ワードクロックの出力も装備。PCとはUSBもしくはThunderboltで接続

ちなみにフロントパネルには、小さいディスプレイと3つのボタン、大きなノブが搭載されています。ここでは、マイクのゲインを調整したり、4つのヘッドホンへのボリュームやラインアウト、モニターアウトをそれぞれ操作可能。見やすいメーターも付いているので、さっと操作したいときに便利です。

フロントの操作パネルで、ゲインやボリュームを操作可能

さて、内部的な部分も見ていきましょう。まずは、Antelope製品ならではのSynergy Coreについて。Synergy Coreについては、これまでも「FPGAx2とDSPx4で構成されるスーパーデスクトップインターフェイス、AntelopeのZen Tour Synergy Coreの実力」といった記事で紹介したことがありましたが、DSPとFPGAという2種類の役割が異なるプロセッサを搭載しており、より高度なエフェクトを高速に処理することができるのを特徴としています。

具体的にはDiscrete 4 Pro Synergy CoreはFPGAを1基、DSPを2基搭載しており、PCのCPUに負荷をかけることなく、さまざまなエフェクト処理ができるようになっているのです。Synergy Coreの詳細についてはAntelopeサイト(https://jp.antelopeaudio.com/synergy-core/)でも解説されているので、ぜひ参照してみてください。

Synergy Core

また先ほどAFXチャンネルストリップの数が16に増えていると書きましたが、これはそのSynegy Coreによるエフェクトが利用できるチャンネルストリップのこと。DAWから、ここにルーティングしてやることで、アウトボードを使う感覚でAntelopeの各種エフェクトが使えるのです。

アウトボード感覚でエフェクトを使うことが可能

そして、新しいDiscrete Proシリーズでは、コントロール・ソフトウェアを一から設計し直し、ルーティングにおいては前世代のDiscreteに搭載されていたドロップダウン・ルーティングの使いやすさと、Galaxy 32のようなハイエンドのスタジオインターフェイスで採用されているヴァーチャル・パッチベイ、ルーティング・マトリクスを組み合わせてコントロールできるようになっています。この新しいソフトウェアは、あらゆる信号ソースをあらゆる出力先に自由にルーティングすることができ、さまざまなシチュエーションにも幅広く対応できる柔軟性を持っています。
より自由度高くルーティングが可能になっている

また各チャンネルストリップごとに、最大8つまでのエフェクトを入れられる形となっているので、かなり自由度高く利用することができるのですが、一つ注意点として挙げて起きたのは、このAFXはいわゆるプラグインとはちょっと概念が異なるということ。通常のプラグインはDAWの中に完全統合されてDAWの機能のようにしてエフェクトを使えるのに対し、AFXの場合はあくまでも外部バス=ストリップに信号を出し、そこでAFXをかけて、DAWに戻すという使い方であること。また、リアルタイム処理においてはほぼレイテンシーなく信号が戻ってくるのですが、オフラインバウンスといったことはできず、実時間をかけて処理していく必要があります。

各ストリップに最大8つのエフェクトを設定可能

そのため、プラグインしか使ってこなかった人だと、最初戸惑う部分はあるかもしれませんが、非常に高音質であり、またCPUに負荷がかからないので、慣れれば非常に快適であることが実感できるはずです。なお、AFX2DAWというプラグインを利用することで、AFXのエフェクトをDAWのプラグインのように使うことも可能になります。ただし、その場合でもリアルタイムでの処理が必要。

AFX2DAWを使うことで、DAWのプラグインのように使うこともできる

さて、そのAFXとしては37種類のSynergy Coreエフェクトが標準で搭載されていることも重要なポイントです。アナログのビンテージ機材を忠実に再現したコンプレッサー、EQ、マイク・プリアンプ、ギターアンプ、キャビネットなどがあるほか、Antelopeオリジナルの強力なリバーブAuraVerbを使用することで、追加の費用をかけずに、効果的で効率のいいサウンドプロダクションが実現可能。

ビンテージのEQやマイクプリ、モジュレーションなどのエフェクトが標準で付属

このSynergy Coreには、標準で用意されている37種類のエフェクトのほかにも、AUTO-TUNEをはじめ60種類以上のエフェクトが、Antelope Audioソフトウェアストアで販売されており、これらをインストールして利用することも可能となっているので、必要に応じていろいろな拡張ができるわけです。

AUTO-TUNEは別売となっているが、Synergy Coreにより最速の処理が実現できる

以上、Discrete 4 Pro Synergy Coreについて紹介しました。Discrete 4 Synergy Coreの次世代モデルなわけですが、できることがさらに増え自由度が増し、基礎的な機能も上がっている、いいアップデートだと思いました。これ一台あれば、自宅でもスタジオに持ち込んでも最高な音質でレコーディングすることができますね。価格は、187,000円(税込)と、手軽に購入できるものではありませんが、本格的に音楽を作るのであれば、導入を考えてみてはいかがでしょうか?

 

【関連情報】
Discrete 4 Pro Synergy Core製品情報

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Commentsこの記事についたコメント

3件のコメント
  • 初心者

    いつも興味深く拝見しております。
    質問なのですが、現在第二世代discrete4scを使用しております。
    プリアンプはアウトボードを使用して、4scのプリアンプはゲインを0にして使っております。アンテロープのAD/DAが好みなので、そのような使い方をしております。
    AFXは抜きにして、ADDAのクオリティがかなり向上しているなら、買い替えを検討しているのですが、藤本さまのpro 4scのADDAのご感想など教えていただけたらありがたいです。

    2022年5月24日 12:49 PM
  • 藤本 健

    初心者様

    お返事が遅くなってごめんなさい。実は手元に以前のDiscreteがあるわけではないので、あまり音の比較ができていません。そのため、確証はないのですが、パッと聴きの印象は非常に近いです。おそらくはアナログ回路は踏襲しているのでDiscreteの音なのだと思います。ただDACチップ、ADCチップへより高性能なものに載せ替えたようなので、その点では音質向上をしているようです。お答えになっているかわかりませんが、お伝えできるのは現時点ではその程度です。すみません…。

    2022年5月26日 9:17 AM
  • 初心者

    ご丁寧にありがとうございます!アンテロープはやはりコスパも良く、最近は安定性サポートも良くなってきたので好きなメーカーです。
    Proの音、聞いてみて検討したいと思います。
    ご返信ありがとうございます。これからも参考にさせていただきます(^^)

    2022年5月29日 9:51 PM

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