AIでリバーブ除去やSTEM分解、EQマッチングができる魔法のソフト、SpecraLayers Pro 8同梱で19,000円!?今年もSOUND FORGE Pro 16 Suiteの値付けがオカシイ!

ここ最近、毎年この時期にバージョンアップしているドイツMAGIXの波形編集ソフト、SOUND FORGE Proですが、今年も新バージョンSOUND FORGE Pro 16およびSOUND FORGE Pro 16 Suiteが発表され、本日6月15日、ソースネクストより日本語版の発売が開始されました。SOUND FORGE Pro 16単体のダウンロード版の価格は38,500円となっていますが、それにSteinbergのSpectraLayers Proの新バージョン、SpectraLayers Pro 8およびCelemonyのMelodyne 5 essentioalなどがバンドルされるSOUND FORGE Pro Suiteは49,500円となっています。

ご存じの方も多いと思いますが、SpectraLayers Pro 8は単体価格が33,000円、そしてMelodyne 5 essentialの価格が10,000円なので、これだけでもソースネクストの価格設定が異常なのが分かると思いますが(ほかにもiZotope Ozone 9 ElementsやRX8 Elementsもバンドルされている)、6月15日から28日の期間、発売記念キャンペーンということで、SOUND FORGE Pro 16が13,000円、SOUND FORGE Pro 16 Suiteでは19,000円という理解不能な価格設定で販売されているのです。このSpectraLayers Proとのセットという販売は以前にも同様のセール価格が実施されて大きな話題になりましたが、今回はSpecraLayers ProもVersion 8へと進化し、かなり画期的な機能がいっぱい搭載されているのです。発売を前に、ソースネクストからSOUND FORGE Pro 16 Suiteを提供いただいたので、実際、どんなものなのか簡単に紹介してみましょう。

※2022.6.27追記
以前にSOUND FORGEを購入したユーザーの場合、ソースネクストのセールページにアクセスの上、画面右の「アフターサービス」のところを見ると、さらに安く購入可能な情報が出ている可能性があるので、チェックしてみてください。

※2022.7.1追記

6月30日、SteinbergからSpectraLayers Pro 9が発表されました。先日、この記事でSOUND FORGE Pro 16 Suiteを購入してSpectraLayers Pro 8を入手した人はGrace Periodに相当する、ということで無償でSpectraLayers Pro 9へのバージョンアップが可能です。この際、eLicencer Control Centerを起動するとその旨の表示がされるので、指示に従い、続いてSteinberg Activation Mangerから「Grace Period(更新可能期間)チェック」を選択することで、入手可能となります。あとは、指示通りに操作していくとSpectraLayers Pro 9が入手できます。なお、今回のバージョンからは日本語対応になったため、日本語メニュー、日本語での各種表示で操作可能になっています。

SOUND FORGE Pro 16とSpectraLayers Pro 8をセットにしたSOUND FORGE Pro 16 Suiteがトンでも価格でセール中

先に断っておくと、ここで紹介するSOUND FORGEはWindows専用のソフトでMac版は現在ありません(以前は存在していた時代もあるのですが)。一方で、SOUND FORGE Pro 16 Suiteに付属するSpecraLayers Pro 8もMelodyne 5 essentialもWindowsとMacのハイブリッドなのでMacユーザーでも使えるもの。もちろんiZotopeの各ソフトもWindows、Macのハイブリッドです。もし、SpectraLayers Pro 8単体を買おうと思ったら33,000円するので、ややイレギュラーな購入の仕方だとは思いますが、このSOUND FORGE Pro 16 Suiteというセットを購入したほうが絶対的に安くなるので、お勧めではあります。

ちなみにそれぞれに収録されているされているソフトとしては、以下のようになっています。

SOUND FORGE Pro 16 SOUND FORGE Pro 16 Suite
SOUND FORGE Pro 16
SpectraLayers Pro 8
Melodyne 5 essential
Ozone 9 Elements
RX 8 Elements

さて、その本体ソフトであるSOUND FORGE Pro 16 Suiteからざっと見ていきましょう。これは私個人的にも25年以上使い続けているソフトであり、今でも毎日のように使っているソフトです。DAWほど多機能ではないけれど、とにかく軽快に使える波形編集ソフトであり、音を編集する際にはいつでもこれを使っている感じです。64bitフロート/768kHzまで対応するソフトで、DSDの読み書きにも対応しているからハイレゾ音源の制作には必須のツールだし、wav、aiff、mp3、aacはもちろん、ogg、flac、au、mov、avi、swf、wma、mp4……と、ほとんどのオーディオファイル形式の読み書きが可能なので、ファイルコンバーターとしても便利に使えます。また、編集した結果をCDに書き込みできるのはもちろんDDP出力にも対応しているから、マスタリングにおいても重要なツールです。

新たな機能をいろいろ追加して発売されたSOUND FORGE Pro 16

一方、バッチ処理と呼ばれる機能を持っているために、膨大なサウンド素材を扱うゲーム業界のサウンドチームでは、まさに御用達ソフトとなっているものです。まあ、いろいろなことができるソフトではありますが、今回の新バージョンではWindows 11に正式対応するとともに、いくつかの新機能が追加されています。

バッチ処理機能を装備しているので、膨大な数のファイルを扱うゲーム業界では必須のツールとなっている

中でも大きいのがラウドネスの可視化機能です。SOUND FORGEは波形編集ソフトなので、これまでもラウドネスメーターは装備していたし、ピークメーター、トゥルーピークメーター、スぺクトロスコープ、オシロスコープなどなどさまざまな分析ツールは搭載していましたが、今回、新たにラウドネスの可視化というのができるようになったのです。

もともとさまざまなメーター、分析機能を装備していた

ラウドネスとは音の大きさ、音圧を表すもので、最近のネット配信などにおいて重要性が高まっているものです。YouTubeなどはラウドネス規制があるため、ある一定以上音圧になると、この制限が効いて全体のボリュームを下げられてしまうのです。そのため、思った音にならない……という問題が起こるのですが、それをしっかりチェックできるようにするのが、この可視化機能。単純にラウドネスメーターで見るだけでなく、時間経過に伴ってどうなっているかを見ることができるので、大きく役立ちそうです。

今回新たにラウドネスを可視化する機能が搭載された

ちょっとマニアックなところですが、今回リサンプリング・エンジンが刷新されています。個人的には96kHzの音を44.1kHzにするとか、48kHzにするといったリサンプリングを、DAWで行うよりもSOUND FORGEを使ったほうがいい音でできるので使っているのですが、今回、ここに新たなリサンプリング・エンジンが追加されたとのことなので、今後いろいろ比較しながら試してみようと思っているところです。

リサンプリング・エンジンとして新たなものが追加された

また10年ちょっと前のバージョンアップで削除されてしまった、録音専用のミニウィンドウが復活しているのも個人的には嬉しい点。これによって、ARMをオンにすることで、録音スタート前に入力レベルをメーターでチェックできるようになっています。

録音準備中でも、入力音量をチェックできる機能が復活

一方、SOUND FORGE Pro 16には、MAGIXのプラグイン群、Audio Plugin UnionのプラグインであるCore FX、Wizerd FXなど、かなり莫大な数のエフェクトが収録されており、Dynamic Equalizerなどを含め、使えるものがいっぱいあります。もともとSOUND FORGEには内蔵のエフェクトがいろいろあり、最近増えてきたプラグインも、同様のもの…と思い込んでいたのですが、よく見ると、VST2とかVST3という記載があるんです。

SOUND FORGE Pro 16本体に、数多くのプラグインが収録されているが、よく見るとVST2やVST3の表記が…

そこで、もしかしたら、CubaseやStudio One、AbilityなどのDAWでも使えるのでは…と思って、試してみたところ、使えてしまいました。ただし、これらのプラグインは\Programi Files\VSTPluginsとか\Program Files\Common Files\VST3など、一般的なフォルダにはインストールされていないため、そのままだとDAW側は認識してくれません。これらのプラグインは\Program Files\SOUND FORGE\SOUND FORGE Pro 16.0\MAGIX Pluginsというフォルダに収録されているので、DAWからここを指定するんです。すると、MAGIX製品はプロテクトもかかっておらず、使うことができました。ただし、Audio Plugin Unionのエフェクトについてはライセンスが別途必要なのようで、トライアル版としてのみ使える形でした。

※2022.6.26 訂正とお詫び
上記のプラグインについてですが、ほかのDAWからは見え、起動できるもののバイパス状態になっていて使うことはできませんでした。訂正してお詫びします。なも、Audio Plugin Unionのプラグインに関してはトライアル版であるためパラメータの変更はできないものの、機能的には使うことが可能です。

さて、やはり今回の目玉はなんといってもSpectraLayers Pro 8でしょう。これまでもDTMステーションで何度も取り上げてきた魔法のツールであり、昔はSony Creative Softwareのソフトとして、数年前まではSOUND FORGEと同じMAGIXのソフトとして存在していましたが、現在はSteinbergのソフトとなっています。実際、Steinbergサイトから33,000円でダウンロード販売されており、Adobe AuditionユーザーおよびiZotope RXユーザーであれば、クロスグレードで22,000円で購入可能となっています。

SpectraLayers Pro 8はSteinbergが33,000円で販売しているソフト

ただ、このソフトはCubaseなどと違って日本語化されていないためか、国内パッケージなどはなく、Steinberg製品の国内発売元であるヤマハも、これまでのところ、あまり打ち出してないんですよね。またMAGIXからSteinbergへ売却したはずのSpectraLayers ProをなぜSOUND FORGE Proにバンドルできるのかは、かなり不思議な気もしますが、売却時にそういう取り決めをしていたんですかね?

昨年のバージョンアップで、大きく機能強化されていたSpectraLayers Pro 8

そのSpectraLayers Pro 8が2021年6月にバージョン8へとアップデートされ、とんでもないほど強力な進化をしていました。昨年SOUND FORGE Pro 15が発売された時点で、すでにSpectraLayers Pro 8はリリースされていましたが、そのときにバンドルされていたのは前バージョンの7。そのため8がバンドルされるのは今回が初ということになります。
※Steinberg製品のライセンス管理はUSBドングルを使うeLicenserからドングル不要のSteinberg Activation Managerへ移行中ですが、SpectraLayers Pro 8は従来方式のeLicenser方式となっています。ドングルを使わないSoft eLicenserでの使用も可能ではありますが、事故防止のためにもUSBドングルであるSteinberg Keyの入手をお勧めします。

従来の機能については、以前の記事「ミックス音をパートごとに分解可能な魔法のソフトSpectraLayers Pro 7同梱で19,000円!? SOUND FORGE Pro 14 Suiteの値付がオカシイ!」などでも紹介していたので、ここでは割愛しますが、CDなどステレオのオーディオファイルをAIを用いてボーカル、ピアノ、ベース、ドラム、その他の5つのステムデータに分解してくれるUnmix Stemsを紹介するビデオも以前作っていたので、こちらを参考にしてみてください。

が、今回のSpectraLayers Pro 8は、そのAI機能がさらに強化されて、さまざまなことができるようになっています。具体的にはまずReverb Reductionという機能が追加されています。これは名前の通り、リバーブ成分を除去するためのもの。たとえば、先ほどのUnmix Stemsからボーカルを取り出すと、ここには元のボーカルに加え、リバーブも乗った形になっているのが一般トラック的。ここからリバーブを除去するというか分離することができるので、ドライ音のボーカルを取り出すことができるのです。その上で、DAWなどに取り込んでさまざまなエフェクト処理を施すことができるので、リミックスなどには最高のツールといえます。

リバーブ成分を分離するReverb Reduction機能

またDe-Bleedという機能も追加されています。これも、Unmix Stemsと組み合わせるとより強力になる機能で、複数のレイヤーをまたぐ形になってしまった音漏れ成分を除去するためのもの。これをいい具合に調整することで、音の分解をよりキレイに整えることが可能です。

音のかぶり成分を取り除くDe-Bleed機能

さらにVoice Denoiserという機能も強化されています。これは街頭インタビューなど、ノイズが大きい人混みの中で喋っている音の中から目的の人の声だけをキレイに抽出するというもの。以前のバージョンにもあったのですが、それがAIによりさらに精度があがり、会話はもちろん歌でも使えるなど、より実践的なものに進化しています。

人の声以外を取り除くVoice Denoizer機能

またEQマッチングという機能が追加されたのも、今回のSpectraLayers Pro 8からです。これはある部分の音の音響特性を抜き出したうえでEQプロファイルとして登録し、ほかのサウンドに適用することができる、というもの。つまり、この楽曲の音の雰囲気に近い音でマスタリングしたい…というときに利用したり、Unmix Stemsで取り出したギターと似た雰囲気の音にしたい…といったときに活用できる結構便利に利用できるツールです。

音響特性をコピー&ペーストできるEQ Match機能

ほかにもハムノイズ除去やクリックノイズ除去、音に若干問題が出てしまった部分をキレイに補修するヒーリング機能……などなど、さまざまな機能を持ったツールなので、1つ持っておいて絶対に損のないソフトだと思います。

そんなSOUND FORGE Pro 16とSpectraLayers Pro 8をセットにしたSOUND FORGE Pro 16 Suiteが、6月28日までの2週間、19,000円と大特価となっているので、このタイミングで入手してみてはいかがでしょうか?

Mac版の入手法

Sound Forge Pro 16 Suiteの中に入っているSpectraLayers Pro 8、Melodyne 5 essential、iZotope RX8 Elements、iZotope Ozone 9 ElementsはMacにも対応しています。ただし、これらはソースネクストからインストーラは提供されておらず、シリアルコードのみの発行となるため、別途ダウンロードが必要となります。

SpectraLayers Pro 8はSteibergサイトにおいてSteinberg Download Assistantをダウンロードし、これをインストールすることで入手可能です。

またMelodyne 5 Essentialは、まずcelemonyサイトにアクセスの上、ユーザーアカウントを作成し、ログインします。その後「ライセンスを追加」のところで、シリアルを入力することで、ユーザー登録が行え、ダウンロード可能になります。

そしてiZotope RX8 ElementsおよびOzone 9 Elementsは、iZotopeサイトにアクセスの上、ユーザーアカウントを作成し、ログインします。その後「Products Downloads」からダウンロードすることができます。

【関連情報】
SOUND FORGE Pro 16製品情報

【価格チェック&購入】
◎ソースネクスト ⇒ SOUND FORGE Pro 16 Suite
◎ソースネクスト ⇒ SOUND FORGE Pro 16

Commentsこの記事についたコメント

3件のコメント
  • Taka-NX

    16の優待販売のメールが届いたんですけど、優待価格で買えるのは単体版だけなんで「なんだかな」と思っていました。ただ、Suiteも単体版もARAが使えるなど機能差はないようですし、Suiteにバンドルされているソフトはバージョンアップまたはアップグレードできますので(16リリース直前にSpectraLayers Proを8にバージョンアップしてしまいました)、一度Suiteを買ってしまえば今後は単体版でも問題なさそうですね。

    蛇足ですけど、7と8を混在させている状態でSoundForge ProからSpectraLayers Proを起動すると8の方が優先的に起動します。

    2022年6月18日 3:26 AM
  • 壮絶なる宅録

    いつも楽しく読ませてもらっております。
    突然ですが、ひとつ伺いたいことがあります。
    上記にあるMAGIXのプラグインの他DAWでの使用なのですが、肝心の音はwet音が出力されているのでしょうか?バイパスされてはないのでしょうか?

    変な質問で申し訳ないのですが理由があります。
    私も数年前にソースネクストさんでSOUNDFORGE Pro 12 suiteを購入しているのですが、記事にあるようにVSTなのだからとMAGIXのプラグインを他DAWで立ち上げてみたところ、正常に認識とロードはされたのですが肝心のエフェクト音は出力されなかったのです。
    正確にはプラグイン内部にはシグナルは送られていて(インジケータが動く、しかし)処理がなされず(つまりバイパスされて、ただのドライ音が)出力されました。
    もしかして私の環境由来でそうなるのかな?とも考えたのですが、SOUNDFORGEあるいはACIDで使うときちんとエフェクトがかかるのです。
    そこで私はよくあるプロテクトと判断してホッタラカシにしてしまいました。
    で、すっかり忘れていたのです。今この記事を読むまで。

    さて繰り返してたずねてしまうのですが、エフェクト音は本当に出るのでしょうか?
    この文章を書いている最中に今一度試してみたのですがやはりバイパスされてドライ音しか出ません。ちなみに試したDAWはAbletonLive11、Cubase10.5、FLStudio20、StudioOne5です。
     
    長文で申し訳ありません。
    差し支えなければ回答の程よろしくお願いします。

    2022年6月21日 12:49 AM
    • 藤本 健

      壮絶なる宅録さま

      ご連絡ありがとうございます。
      おっしゃるとおりでした。Audio Plugin Unionのほうが、
      アクティベーションは求めるけれど、エフェクトはかかっていて、MAGIXのほうは起動するけれど、
      バイパスされてしまう状況でした。

      私のミスです。後ほど記事のほう、修正します。

      2022年6月21日 11:25 AM

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