究極のキャビネットシミュレーター!? 豊富なIRライブラリ搭載で超高性能・多機能なCABINETRON誕生

プラグインメーカーのThree-Body Technologyから非常にユニークであり、超高性能、多機能なギターキャビネットシミュレーター、CABINETRONというプラグインがリリースされました。これまでもIRを利用したキャビネットシミュレーターはいろいろ存在していましたが、このCABINETRONは単なるシミュレーターに留まらず、8つのシミュレーターを同時に動かして、それをミックスしたり、スピーカーインピーダンスのシミュレーションも可能なEQを備えたり、複数のキャビネット間での自動移送調整機能、セッティングした仮想マイクの自由な位置設定、リファレンスサウンドと近い音に補正するトーンマッチング機能、複数のIRデータを混ぜられるDimension Mixer機能……などなどユニークで強力な機能がてんこ盛り。

まさにこれまで存在しなかった究極のキャビネットシミュレーターといえる機能、性能を備えたプラグインとなっています。Three-Body Technologyをご存じない方も少なくないと思いますが、同社は超バリバリなメタルギター音源として有名なHeavier7Stringsをはじめ数々の高性能音源を開発してきたメーカーとしても知られている実績ある会社です。そのThree-Body Technologyが出すギター系のプラグインということで注目が集まっていますが、そのCABINETRONのリリース記念ということで11月30日まで50%OFFの$59(SONICWIRE価格では税込み8,888円)と手ごろな価格で入手可能となっています。実際どんなプラグインなのか試してみたので紹介してみましょう。

Three-Body Technologyから誕生した究極のキャビネットシミュレーター、CABINETRON

あのメタル系ギター音源メーカーが出したキャビネットシミュレーター

Three-Body Technologyは以前、「ギター経験のなくても本気のプレイができるメタル系・超ギター音源、Heavier7Stringsがスゴイ!」、「誰でも簡単にヘビメタギターサウンドを演奏できるHeavier7Stringsはまだまだ進化中」といった記事でも紹介したメタル系ギター音源Heavier7Stringsを開発していたり、「手軽に自分だけのサチュレーションサウンドが作れる、OwnTHDが面白い」で紹介したサチュレーターなど、ギター系で高い評価と実績を持つメーカーです。

超強力なメタル系ギター音源として話題を呼んだ、Hevier7Strings

そのThree-Body Technologyが今回キャビネットシミュレーターであるCABINETRONを出したわけですが、まずはそのデモ動画があるので、10分強とやや長めな英語ビデオですが、こちらをご覧になってみてください。

いろんな機能を紹介しているので、一気に理解するのは難しいかもしれませんが、そのサウンドのすごさ、威力は何となく感じられたのではないでしょうか?

そもそもIR・キャビネットシミュレーターって何だ!?

CABINETRONそのものの前に、簡単にIRを用いたキャビネットシミュレーターについて触れておきましょう。ご存じのとおりギターアンプは通常、アンプ部分であるアンプヘッドとスピーカー部分であるキャビネットで構成されています。

中には一体型のものもありますが、この2つから構成されているからこそ、あのギターサウンドが出てくるのです。今回登場したCABINETRONはそのキャビネット部分をシミュレーションするプラグインなのですが、このスピーカー部分は完全にアナログというか物理的な構造なわけですが、それによってかなりサウンドが変わってくるのです。そこをシミュレーションしようというわけなんですね。

そうしたキャビネットシミュレーターはこれまでもいろいろ存在していますが、デジタルでのシミュレーターのほとんどがIRという仕組みを使っています。IRとはImpulse Responseの略で、それを通すと音がどう変化するかをサンプリングの形で捉えたもの。いわゆるサンプリングリバーブなどでも使われているものですが、音の変換を関数化して再現する技術を使っているのです。

もう少しいうと、IRは瞬間的な音=Impulseがどう変化するか=Responseをサンプリング=録音したものなので、WAVファイル形式となっており、これを読み込んでシミュレーションするわけです。

そしてIR自体はフリーのものを含め数多く存在していますが、いいIRがあれば、いいシミュレーションが可能になる、ともいえるのです。

8つのキャビネットシミュレータを1つにまとめたCABINETRON

さて、本題に戻りましょう。CABINETRONはそのIRを使ったキャビネットシミュレーターなのですが、単に1つのキャビネットシミュレーターではなく最大8つのキャビネットシミュレーターを同時に動かせるという構造になっています。

8つのキャビネットシミュレーターから構成されるCABINETRON

そう上から同じものが8つ並んでいる格好で、それぞれ独立して動かすことが可能になっています。まあ、普通は1つでよさそうにも思いますが、ギターアンプの出力を分配して、複数のキャビネットで鳴らすことができる、というわけなのです。

1つ分のキャビネットシミュレーター

もちろん、まず大切になるのはどんなIRを使うかですが、CABINETRONにはあらかじめ370種類以上ものIRがプリセットとして用意されています。この中から好きなものを選んで、8つあるシミュレーター=IRローダーへとドラッグ&ドロップすれば、もうそれだけでキャビネットシミュレーターとして動き出します。左側にその周波数特性を示すグラフが表示されるので、どんな音になるのか視覚的にもなんとなくわかります。どのIRもかなり高品質なものばかりなので、通常はこれだけあれば十分すぎると思います。


画面左側のブラウザには370以上のIRが並んでいる

とはいえ「ほかのIRを試してみたい」、「すでにほかのIRを持っている」という人もOK!そのIRであるWAVファイルをドラッグ&ドロップすればそのまま使えるし、それをFavoritesとしてお気に入り保存することもできるので、汎用性高く使えるはずです。

数多くのパラメーターで音作りは自由自在

8つあるキャビネットシミュレーターのモジュールは単にIRを読み込ませるだけというわけではありません。画面を見てもわかる通り、さまざまなパラメーターがズラリと並んでおり、これによって、かなりな音作りが可能になっているのです。

ざっと左から見ていくとVolで音量、Panでパンニング、Phaseで位相を設定し、Dryは元の音=Dryをどのくらい混ぜるかを設定します。

Vol、Pan、Phase、Dryで基本的な設定を行う

さらにMutationというパラメータがありますが、直訳すれば突然変異。このパラメータを動かすことで、ちょっと変わった挙動となるようです。

Mutantを使ってニュアンスを変更する

その右のMikingはその名の通りマイキングに関する設定。FREDとSmoothingの2つのパラメータで、45度の角度をつけて配置された2つのマイクからの入力信号をミックスし、2つの信号の比率を調整することで、レコーディングにバリエーションを付けていく形です。

MikingとXYでマイキングに関する設定を行う

さらに、XYではそのマイクの位置を決めていきます。Xで横方向の位置、Yで距離を設定していくことで、サウンドも大きく変化していきます。

EQやFiltersで音色に関する設定も行う

そしてその右のEQはLow、Mid、Highの3パラメータで音質の設定を行い、一番右のFiltersではHP=ハイパスフィルタ、LP=ローパスフィルタで音作りをしていきます。

IRでは表現できない非線形な部分もシミュレーションできる

このように、8つあるIRを使ったキャビネットシミュレーターで、実際のキャビネットそのものともいえる音をシミュレーションすることができます。というのも、キャビネット/スピーカーの動作の99%線形だからです。ただし、100%が線形なわけではなく、残り1%は非線形な部分があります。

その非線形な部分に対してもリアルにシミュレーションするのがCABINETRONの最重要ともいえる特徴となっています。CABINETRONでは透明なリニアIRローダーとしてだけでなく、ボイスコイルがマグネットの中でどのように動くかというノンリニアな挙動もモデル化し、それを再現できるようになっています。

NonLinボタンをオンにすることで、キャビネット動作の非線形な部分もリアルに再現できるようになる

そのためのスイッチが画面右上にある「NonLin」というボタン。これはノンリニア・エンハンスメントを意味するもので、まさにギターキャビネットの非線形動作をシミュレートしてくれます。この非直線性を強化することによってより本物のスピーカーに近づき、立体的で、タイトな音を作ることが可能となるのです。これこそがCABINETRONならではの機能であり、一般的な単純なIRローダーと異なるポイントとなっています。

ユニークなミキサーで複数のキャビネットの音をミックス

そんなIRをロードして使うキャビネットシミュレーターが8つあるわけですが、それぞれの出力バランスを調整するためのミキサーが用意されています。

3つのキャビネットを使った場合は三角のミキサーでバランス調整する

画面左上のMixerタブをクリックするとユニークなミキサーが現れてきます。DAWのミキサーとは大きく異なり、IRローダーを3つ使っていれば三角形、4つ使っていたら四角形、5つなら五角形……というように図が現れ、各キャビネットシミュレーターのバランスを視覚的に調整できるようになっているのです。

5つのキャビネットがある場合は五角形になっている

こういうミキサーなので、中央に持っていけば、すべてがバランスの取れた音になるし、1つに寄せれば、その音のみが出るという形です。

複数のキャビネットを同時に使った場合に生じる位相のズレをAuto Phase Alignで一発補正

ただ、複数のキャビネットを同時に鳴らした場合、問題になるのが位相のズレ。変に位相がズレていると、音が聞こえにくくなってしまったり、うねりを持ってしまって思った音になりません。そこで、CABINETRONでは自動移送補正という機能が用意されています。これはキャビネットの上で右クリックして出てくるコンテキストメニューの一番した「Auto Phase Alignを選ぶだけ。これで瞬時に位相を合わせてくれるので、便利ですよ。

パワフルなEQを搭載

前述のとおり、8つあるキャビネットシミュレーターそれぞれにLow、Mid、HighのEQを搭載していますが、それとは別に8つをミックスした最終結果に対するパワフルなEQも搭載されています。

ミックスされた音に対してEQをかけることが可能

これは画面左上のEQタブをクリックすると登場してきます。この画面の上半分がEQとなっているのです、まずは真ん中上のEQと書かれた文字の左にあるスイッチをクリックしてオンにすることでEQが動き出します。

あとはこのグラフ上でマウスをダブルクリックするとドットが現れるのでそれを上下にドラッグすることで、持ち上げたり、引き下げたりといった操作が自由に行えるのです。

Three-Body Technology製品の中でも非常に高い評価のプラグインであるKirchhoff-EQ

実はこのEQ、Three-Body TechnologyがすでにリリースしているEQ製品で、非常に評価が高い32バンド・パラメトリックEQプラグイン、Kirchhoff-EQの一部の機能を取り入れたもの。これはThree-Body Technologyの開発製品でありながら、Plugiin Allianceのラインナップにも加わっている製品。機会があれば、改めてKirchhoff-EQについても紹介できればと思っています。

トーンマッチング機能で、目的の音へ

このEQ画面ですごいのは、その下にあるTone Matching=トーンマッチング機能です。Tone Matchingとは、まさしく音色をマッチングさせるための機能。

たとえば、気に入っているギターの音があり、その雰囲気に近づけたいという場合に、これを使うことで、簡単に近い音にすることができるのです。使い方はとっても簡単。リファレンスとなる音をトラックで再生してCaptureボタンを押すか、WAVファイルをドラッグ&ドロップで画面左下に読み込ませます。その上で、変化ささたいターゲットとなる音を再生してCaptureボタンを押せばOK。これだけで、それっぽいサウンドになるのです。

Tone Matching機能を使いターゲットとなる音と近づけることができる

また必要に応じてマッチングさせたい音域を何Hz~何Hzといった形でグラフ上で絞り込んだり、Smooth、Depth、Rangeの3つのパラメータを動かしていくことで、似せ方を変化させられることができるようになっています。

必要に応じて、トーンマッチングさせる帯域を調整したりパラメーターをいじることもできる

一度いい感じにできたら、保存することもできるので、あとはいつでも再現できますね。

以上ざっと、Three-Body Technologyの新プラグイン、CABINETRONについて紹介してみましたが、いかがだったでしょうか?ここまでパワフルで多機能で、高性能なキャビネットシミュレーターはなかったのではないかと思います。

これを手持ちのアンプシミュレーターと組み合わせてもいいし、ギターアンプのスピーカー出力をつないで使うのもいいと思います。もちろん、すでにレコーディングした音にかけてもいいし、サンプリング素材などに利用するのもあり。あとはアイディア次第でさまざまな音を創り出すことができるはずです。

Three-Body TechnologyのCABINETRON製品ページにあるFREE TRIALボタンを押せば無料体験版が入手できる

なお、Three-Body TechnologyのCABINETRONのページにあるFREE TRIALというボタンをクリックすることでCABINETRONの無料体験版を入手可能です。この無料体験版はプリセットの保存、読み込みができないこと、イニシャライズができないこと、IRファイルのエクスポートができないこと、Demoと書かれたアイコンが表示されること以外は製品版とまったく同じです。とりあえず試してみたいという方は、まずはこちらを入手してから購入してもよさそうです。

冒頭でも触れたとおり、今ちょうどリリースされたばかりで、50%OFFの低価格で購入可能なので、この機会に入手してみてはいかがでしょうか?

【関連情報】
CABINETRON製品情報(英語:Three-Body Technologyサイト)
CABINETRON製品情報(日本語:SONICWIRE)

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