ランティスのアニソンプロデューサーは世界屈指のシンセマニア!

アニメやゲーム関連の音楽を中心に展開しているレコード会社・ランティスアニソンファンなら、誰もが知っているランティスですが、そのランティスで、これまで数多くの作品を手掛けてきたプロデューサーが今回紹介する佐藤純之介さんです。現在はランティス系列の制作会社アイウィルの音楽制作部に在籍する佐藤さんは、プロデューサー、ディレクター、エンジニアとして、アニソンのみならず、ランティス以外のレーベル作品を含め、年間約300曲弱の制作に携わっているのだとか……。

最近では、「ラブライブ」などのアニソンのハイレゾ配信をスタートさせた仕掛け人として、メディアにも取り上げられていましたが、その一方で、佐藤さんは別の顔も持っているのです。そう、彼の自宅には、膨大なシンセサイザのコレクションがある、世界屈指のシンセマニア。先日、その佐藤さんの自宅に遊びに行き、お話を伺ってきたので、紹介してみましょう。
アニソンを中心に膨大な曲のプロデュースを行っている佐藤純之介さん


--佐藤さんは、1975年生まれとのことですが、どんなキッカケでシンセの世界にのめり込んでいったのですか?

佐藤:中学生のとき「戦場のメリークリスマス」を聴いて衝撃を受けたのです、この音楽、このサウンドは何なのだ!って。調べたら坂本龍一さんの曲であり、そこからYMOを聴くようになり、スネークマンショーなどにハマリながら、シンセに興味を持つようになっていきました。

最近ついに入手したというFairlightCMI IIIは今でも鳴らすことができる完動品

--中学生ということは、当然YMOのリアルタイムではないですよね……。

佐藤:はい、でもいろいろなCDを聴いたり、文献を調べていくと、いろいろなことが分かっていきました。その後、当時活動されていたPSY・Sの音楽も聴くようになったのですが、そのPSY・Sの松浦雅也さんがFM雑誌で連載をされていて、Fairlight CMIについて語っていたのです。「サンプリングマシンがあれば、世の中のすべての音が楽器にできる」って。このことに感動して、サンプリングマシンがあれば自分にも何かできるのでは…、と思うようなりました。それ以来、Fairlight CMIを持つことが夢となったんですよ。

ビンテージ機材から最新の音源まで、膨大なシンセに囲まれて仕事をする佐藤さん

--世代がちょっと違いますが、それは私も同感。Fairlight CMIはまさに未来のマシンという感じでカッコよかったですから。もちろん1,200万円だかするものを手にできるはずもなかったわけですが……。
佐藤:その中学校当時、親にお願いして買ってもらった初めてのシンセサイザがEOS YS100。シーケンサ機能もない4オペのFM音源でしたが、そこから小室さんのサウンドに憧れるようになって、DX7 IISY77なんかも買ってね……。そして最初に買ったDTM機材がATARICubaseの初期バージョンでした。当時、関西にいたのですが、石橋楽器の心斎橋店に徹夜で並んで安売りされたシステム一式を入手したんですよ(笑)。さらにはDATのレコーダーを買ったり、自宅で完パケできる環境を作って、高校卒業をするころには、BGMの仕事などもするようになりました。

--本当に機材から入っていった感じなんですね。

佐藤:仕事といったって、当時は微々たる金額しか稼げなかったので、本当の意味でプロといえるほどではなかったわけですが、2001年に上京し、とにかく音楽の仕事をしようと、片っ端から門を叩いた結果、ある作曲家さんの元でマネージャーをすることになり、そのうち機材が得意ということでエンジニアとして働いたりもしたのですが、「これからはアニソンが来るらしい」、「ランティスという会社の勢いがあるらしい」という話を聞いて、ランティスに営業に行ってみたのです。その後、エンジニアとして作品に参加するなど右葉曲折ありまして、結果的に2006年にランティスに入社することができ、現在はランティス系列の制作会社のアイウィルに在籍しています。

Waldorfのpulse 2rocketなど、最新の音源も結構活躍しているという

--その後も、シンセはいろいろとコレクションしてきたわけですよね?膨大なお金がかかっていそうですが……。

佐藤:そうですね、いろいろと売ったり、買ったりしていますが、自分で言うのも何ですが、結構相場感覚はしっかりしているので、安く仕入れて、使用後に高く高く売ることができたものもあるので、想像されているよりは投資額は抑えられていると思います(笑)。

Emulator II(左下)や OberheimのOB12(その上のブルーの機材) 

--尋常じゃないですね!この部屋、とってもキレイに収まっていますが、すごい機材が並んでいますよね。ちょっと紹介していただけますか?

佐藤:Emulator IIが3台あり、これが1番のメイン機材です。またProphet-5 Rev3が結構活躍しますね。そして、最近入手したのがそのFairlight CMI III。まさに25年間、追い続けてきた機材であり、完動品でフルセット揃っています。8インチフロッピーディスクが、いまなかなか入手できない、という問題などもありますが、早くシステムディスクのバックアップをとらなくては……と思っているところです。

状態のいいProphet-5 Rev3 を弾きながら堪能している佐藤さん

--先日、iPad版のFairlight CMI(現在、権利上の問題で名称がPeter Vogel CMIとなっている)を入手して喜んでいましたが、ここでホンモノの完動品にお目にかかれるとは驚きです。

佐藤:そのほかにもEmulator IVがトータル6台くらいあります。そのうち2台はSSD搭載改造を施しているのですが、これもなかなか使える音源ですよ。またOberheimMatrix-1000OB-12NordLead 2XNovationのSuperNOVA2、さらにWaldorfのシンセサイザもそのサウンドが大好きでいろいろと買いそろえていますね。最初はMicroWave Ver2.0を手に入れたのですが、この無骨なデザインに赤いノブというのがかっこよくてね…。PropehtともOberheimとも違ったアナログサウンドなんですよね。さらにMicroWave XTを入手したり、Waldorf倒産後にMicroQを買ったり……。

ラックにはSSD改造したEmulator IVやWaldorfのMicroQをはじめとする機材がズラズラと 

--すごいコレクションですが、これをアニソンの仕事に使ったりはしないんですか?

佐藤:基本的に仕事はプロデューサーという立場なので、作詞家、作曲家、アレンジャー、エンジニア、そしてプレイするミュージシャンを人選し、全体をコントロールしていく形です。ただ制作する曲によってはテクノポップであったりエレクトロニカ作品だったりすることもあります。その際、人に頼むより、明らかに自分がやったほうがいい、ということもあるので、自分が担当することもありますね。ニューウェーブやテクノポップ、Lo-Fi、Lo-bitのシンセサウンドのときなどですね。プロデューサーの自分がオーダーするエンジニアやマニュピュレータの選択肢の中に自分がいる、という感じでしょうか……。

レコーディングは192|HDを経由してPro Tools|HDで行っている

--最近、ご自身の作品で、これらのシンセが活躍したケースってありますか?

佐藤:そうですね、いろいろなところで使っていますよ。いま、ちょうど1月からオンエアされる予定の「ウィッチクラフトワークス」というアニメの劇伴がテクノ中心のサウンドなので、ここにいろいろな機材を投入していますよ。そうした中、かなり大きな力を発揮してくれているのが、そのWaldorfのpulse 2という音源です。これ、復活したWaldorfが出した最新の音源なのですが、これが意外といいんですよ。倒産前の初代pulseも持っていて、Moogっぽいアタックのある太いベース音が作れてよかったのですが、このpulse 2はその雰囲気を残しつつも、抜けのいいサウンドで使えるんですよ。よかったら、そんな点にも注意しながら作品を聴いていただけると嬉しいですね。

現在制作中の「ウィッチクラフトワークス」の劇伴ではWaldorfのpulse 2が活躍している

--ありがとうございました。
【関連サイト】
ランティスのホームページ
アイウィルのホームページ
Waldorf pulse 2の製品情報

Commentsこの記事についたコメント

7件のコメント
  • Neko

    それにしては売ってるCDの音が酷いですね。
    シンセに拘る前にまず自分の会社の商品に拘って欲しい。

    2013年12月25日 2:36 PM
  • GA-j

    ランティスのCDってクリップしまくりで音が歪んでるよねぇ。
    せっかくいい楽曲が多いのに。
    音圧上げるのもいいけどそのせいで楽曲をダメにしてる、というのがランティスの印象。
    せっかくの機材も可哀想と思いながら記事を読みました。

    2013年12月25日 10:13 PM
  • yuu

    今の人は音圧上げるの好きというか上げないと満足しないみたいね
    もう一個の特徴はドンシャリ重低音w
    あんたは珍走ですか?って言いたくなるわ

    2013年12月26日 3:02 PM
  • 藤本健

    ランティスに限らず、どこのレーベルも音圧上げまくりで、せっかくの曲がダメになってしまうケースが見受けられます。
    佐藤さんと、その話はしていませんが、まわりのエンジニアと話をしていると、誰も、音圧を上げるのを
    好んではいないようです。できれば、音圧を下げて、いい音にしたい…と。
    でも、スポンサー側、またメディア側での要請で音圧を上げなくちゃダメということになるらしいです。
    エンジニアの手の届かないところで、そうした状況にさせられてしまっているようです。
    結局、yuuさんのおっしゃるとおり、「今の人」は「音圧が大きく」、「ドンシャリ」じゃないと
    良しとしない、ということなんじゃないですかね…。
    だからこそ、外圧がかからない、ハイレゾ配信という世界に打って出たということなんじゃないでしょうか?
    作り手側の良心というか……。

    2013年12月26日 3:38 PM
  • wooon

    >佐藤さんと、その話はしていません
    しなさいよ!

    2014年1月6日 12:52 PM
  •    

    ※5
    代わりにどうぞ

    2014年1月17日 6:44 PM
  • おにおた

    あれランティスのエンジニアって
    白井じゃないんだ
    ランティスってメジャーレーベルの中で音質良いよね
    もうちょっとバンドデビューしてぼしい
    nanoとGRがスキ

    2015年9月16日 11:19 PM

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