先日11月1日、2日の2日間、第3回目となった東京楽器博2025が東京・九段にある科学技術館で開催されました。東京楽器博実行委員会が主催し、一般社団法人 日本シンセサイザープロフェッショナルアーツ(JSPA)が企画制作を行う形で行われた今年の楽器博は参加企業/団体数107社団体(2023年:27社/団体、2024年:96社/団体)、2日間での来場者数8,571人(2023年:2,918人、2024年:8,115人)と、過去最大となり、まさに大盛況となっていました。
筆者個人的にも一昨年、昨年に続き、今年も参加しましたが、回を重ねるごとに大きく盛り上がってきており、まさに楽器の一大イベントになっているのを実感しました。ギターやベース、ドラム、ブラス関連の展示も増えてきていましたが、もともとJSPAが行ってきていたシンセフェスタが基盤となってできたイベントというだけあって、シンセサイザーやDTM関連の展示が非常に多いのも楽器博の特徴。そこでDTMステーションとして気になる全20ブースを基本1ブース1点でごく簡単に一気に紹介して紹介していきましょう。
- DTMユーザーに気になるステージ、セミナーもいろいろ
- JSPAとシンセマニアクスがコラボレーションを発表
- 国際色豊かだった今年の楽器博
- DTMステーション注目の20ブースを一挙紹介
- 01:DOTRED AUDIO DESIGNS Lagoonシリーズ
- 02:0-9studio EMシンセサイザー
- 03:PLUS LAB PICO WIND
- 04:SEQUENTIAL SEQUENTIAL Fourm
- 05:KORG Liano LIVE!
- 06:Roland TR-1000
- 07:Yamaha MODX Mシリーズ
- 08:GEMVOX 乙辺サファイア/乙辺ヒスイ
- 09:NUX NAI-24
- 10:REON driftbox XL
- 11:UVI Falcon 2026
- 12:MUSICUS B-free 2.0
- 13:LYYL MD1200 MIDI Desk
- 14:studiologic SL MK2
- 15:MPAG mymusic5
- 16:Popu Music PartyStudio
- 17:HOTONE VALETON GP-50
- 18:Positive Grid BIAS X
- 19:Teenage Engineering EP-40 riddim supertone
- 20:Tahorng Windkey
- JSPA代表理事・浅田祐介氏に聞く、東京楽器博の現在と未来
DTMユーザーに気になるステージ、セミナーもいろいろ
今年の楽器博は
DJ・音楽制作
管楽器・弦楽器
ドラム・打楽器
エレキ・アンプ・エフェクター
アコギ・ウクレレ
その他ブランド
と大きく7つのカテゴリーでエリア分けされて各ブースが数多く並ぶとともに、各所にステージ・体験コーナーが設置され、さまざまなセミナーも行われていました。
ステージ・セミナーとしても「Roland TR-1000 x REMO CON Special Perfomance」、「モジュラーシンセサイザーで楽しむ音楽」、「AMEI MIDI 2.0セミナー」、「The Share presented by JSPA xTuneCore Japan」、「子供シンセサイザーワークショップ」……などなど。
DTMユーザーやシンセサイザーユーザーにとって気になるイベントも目白押しでした。
JSPAとシンセマニアクスがコラボレーションを発表
先日、DTMステーションの「6人のVTuber少女とシンセが織りなす物語、SYNTHMANIACSが9.21始動、Yamaha・Roland・KORG商品のプレゼントキャンペーン開催中」という記事で、シンセサイザをテーマにした6人のVTuberが誕生したことを紹介しました。
そのシンセマニアクスが楽器博会場にも降臨。ホワイエのスペースに6人のポスターが展示されるとともに、その中央に設置されたディスプレイにはタイムテーブルにしたがって、6人が順番に登場し、会場に集まった人と会話をしたり、楽器演奏などを行っていったのです。
そのタイミングでJSPAがシンセマニアクスとのコラボレーションを行っていくことも発表されました。「シンセサイザーの魅力をもっと広めたい!」という共通の想いから、今回のコラボレーションが実現したとのこと。今後JSPAメンバーによる、シンセサイザーの操作、演奏レクチャーから、作曲方法やシンセサイザーの歴史の勉強などを「特別授業」として配信する予定とのことなので、DTMステーションとしても注目していきたいと思っています。
国際色豊かだった今年の楽器博
年々、規模が大きくなってきている楽器博ですが、今年目立っていたのは海外メーカーのブースが増えていたり、アメリカのMIDIの団体、MIDI ASSOCIATIONが参加する形で、MIDI Inovation Awordsの展示がされるなど、非常に国際色豊かになっていたという点です。
このMIDI Inovation Awordsに関しては近日中に改めて記事で取り上げる予定ですが、さまざまな画期的デバイスが展示されており、来場者の注目を集めていました。
また、この後のブース紹介にも出てきますが、中国や韓国の企業の参加も増えていて、日本のマーケットが各国から注目されていることを改めて実感しました。
DTMステーション注目の20ブースを一挙紹介
では、さっそく各ブースの気になる展示内容を紹介していきましょう。
01:DOTRED AUDIO DESIGNS Lagoonシリーズ

10年ほど前からユーロラックのモジュラーシンセを開発してきたというDOTRED AUDIO DESIGNS。これがほぼ完成したとのことでの展示となっていました。写真上の青緑色のものがそれでMIDI-CV変換やアルペジエータ―などのユーリティであるCLUTCH、それにVCO、EG、VCF、VCA、MIXという構成でセットで20万円程度になるとのこと。現在最終調整をしており、年明けごろには発売する見込み、とのことでした。
02:0-9studio EMシンセサイザー

ほかにはない唯一無二のサウンドを奏でたい、という要望に対しての解として0-9studioが提供するのがEMシンセサイザー。環境音をインタラクティブに調整して奏でるというもので、10年前から開発を続け、日米で特許を取得しているとのこと。コンピュータ(Mac mini)とオーディオインターフェイス、コントローラなどで構成され、セッティングしたMac miniをレンタルする形での提供となっているそうです。
03:PLUS LAB PICO WIND

現在Makuakeで12月末までというクラウドファンディング実施中のウィンドMIDIコントローラです。たった99gという超軽量・コンパクトなもので、USBでスマホなどと接続して演奏する形になっています。ソプラノリコーダーの運指なので、誰でも吹くことができる一方、#キー、♭キーなどを搭載するとともに、オクターブ切り替えで7オクターブの範囲に対応。2027年ごろの一般販売を想定しており、30,000円程度にしたい、とのことでした。
04:SEQUENTIAL SEQUENTIAL Fourm

あのProphet-5を基盤とするデュアル・オシレーター、伝統的な4ポール・ローパスフィルター、そして1978年のオリジナルをモデルにした特徴的なエンベロープ・カーブを完全装備した4音ポリのシンセサイザ。VCO、VCF、VCAはフルアナログで構成され、ポリフォニック・アフタータッチに対応しているとのことです。プリセットサウンドもProphet-5を再現するものがいろいろ搭載されており、価格は15万円程度となっています。
05:KORG Liano LIVE!

ライブストリーミング配信に特化したというユニークな電子ピアノです。電子ピアノ本体に加え、マイク、マイクスタンドがセットとなって、USBでスマホやパソコンと接続すれば、即配信ができるようになっています。本体にはピアノ音とマイク音、リズムパターン、USBオーディオのバランスをとるためのミキサー機能や効果音などを入れたポン出しボタン6つも装備しており、誰でも簡単に使えるのが特徴です。
06:Roland TR-1000

先日「TR-808、TR-909以来42年ぶりにRolandがアナログ回路搭載のフラグシップ機、TR-1000を発表。PCとの接続性も完璧」という記事で大反響のあったTR-1000の実機が楽器博にも展示され、大きな注目を浴びていました。「見た目の迫力がすごい」、「思っていたより大きい」、「アナログサウンドがかっこいい」など実機を触ってのさまざまな声が聞かれましたが、人気で国内での年内出荷分はすべて予約で埋まっているのだとか。
07:Yamaha MODX Mシリーズ

フラグシップのシンセサイザー、MONTAGE MシリーズのDNAを継承しつつ、より手ごろな価格を実現したMODX Mシリーズ。アナログモデリングのAN-X ENGINE、サンプリング系のAWM2、それにFM系のFM-Xの3つのエンジンを搭載。MIDI 2.0に対応するとともに4in/10outのオーディオインターフェイス機能を搭載しているのも特徴です。61鍵のMODX M6(希望小売価格170,500円)、73鍵のMODX M7(198,000円)、88鍵盤のMODX M8(247,500円)があります。
08:GEMVOX 乙辺サファイア/乙辺ヒスイ
AI Singerが所属する次世代レーベルであるGEMVOXが、楽器博のタイミングで発表していたのがVOCALOID6のキャラクタである乙辺サファイアと、VoiSonaのキャラクタである乙辺ヒスイという姉妹キャラクタ。詳細は「姉はVOCALOID 6、妹はVoiSona──Yun*chiが歌う姉妹AIボイス、乙辺サファイア・乙辺ヒスイ誕生。アニメ化も視野に展開」で記事にしているので、そちらを参照してみてください。
09:NUX NAI-24

中国の大手メーカーであるNUXでは電子ピアノやMIDIキーボードとともに、NAI-24という2in/4outのUSBオーディオインターフェイスを参考出品していました。これはD/AおよびA/DにAKMのチップを使った高品位なものでありつつ、アナログのコンプレッサを搭載したことで、自動で入力音をいい感じに調整してくれるというもの。特に配信者やポッドキャスター向けに開発されたものとのこと。発売時期、価格などは未定ですが、今後の展開が気になる製品です。
10:REON driftbox XL

日本のシンセメーカー、REONがこれまで20年以上続けてきたdriftboxの最終形状として来年2月予定で発売されるのがこのDriftbox XL。まさにdriftboxの集大成であり全部入り。モーフィングシーケンス機能などこれまでにない新たな機能も追加され、価格は20~30万円になる予定。ただ最終的にいくらになるのかは現時点未定となっています。限定30台のみの生産とのことで、現在予約受付中。
11:UVI Falcon 2026

フランスのUVIが展示していたのは、同社のフラグシップである統合型ソフトウェア音源、Falcon 2026。従来のFalconから大幅にアップデートされ、より直感的なワークフローと新しいエフェクト、シンセシスエンジンが追加されたとのこと。サンプラー、シンセサイザー、エフェクトプロセッサーを統合した強力なプラットフォームとして、複雑なサウンドデザインから即戦力のプリセットまで幅広く対応。16のオシレーター、90以上のエフェクト、そして膨大なライブラリを搭載し、プロフェッショナルなサウンドクリエイションを実現します。
12:MUSICUS B-free 2.0

韓国メーカーのMUSICUSが展示していたのは、さまざまな防音ブース。その中のメイン製品であるB-free 2.0は92cm²~204cm²というサイズで-26dBを実現するというもの。サイズにもよりますが、基本的には1人で組み立てることが可能となっています。ファブリック素材を重ねた4重防音&吸音構造となっているため、自宅に簡単に防音のスタジオが構築できるのが特徴となっています。
13:LYYL MD1200 MIDI Desk

こちらも韓国のDTM用デスクメーカーです。88鍵キーボードがしっかり収まるWorkstation 88と61鍵キーボード用のWorkstation 61をそれぞれ黒と白で出しており、価格的には70,000円と68,000円。鍵盤を置く部分は前後にスライド可能で、左右だけでなく中央でも支えていることで非常に安定した構造になっているのが特徴です。
14:studiologic SL MK2

イタリアの鍵盤メーカーとして著名なFatarの独自ブランド、studiologicが出したMIDI 2.0(16bitベロシティ)対応のキーボードの新製品、SL MK2シリーズです。ちょうど先日「鍵盤メーカーFatarが本気で作った!Studiologic SL MK2シリーズ、理想のMIDI 2.0対応キーボード誕生」という記事で取り上げたばかりですが、同社のプラグイン音源、Numa Player 2とセットで使うことで大きな威力を発揮してくれます。
15:MPAG mymusic5
韓国のグローバルデジタル楽譜プラットフォーム運営会社MPAGが、無料で出しているアプリが、このmy music 5。約32万円の楽譜を販売している中、今対応を増やしているのがAI楽譜というもので、これを読み込むと、ユーザーの演奏をサウンド認識AIが音程・リズム・強弱などを分析・判断し、自動的に譜めくりをおこなってくれるのが特徴です。
16:Popu Music PartyStudio
中国メーカーのPopuMusicが開発したワイヤレスMIDI対応シンセサイザースピーカ。ケーブルやPC不要で、MIDIキーボードなどからの入力を直接受けて演奏できる構成になっており、内蔵の128種類の音色+40以上のドラムパターンやキットも備えています。Bluetooth MIDIまたはMIDI端子で接続可能。最大3台のワイヤレスMIDIキーボード+1台有線入力もサポートしています。
17:HOTONE VALETON GP-50
中国のエフェクトメーカー、HOTONEのVALETONブランドで人気のエフェクター、GP-5をさらに使いやすくしたのがGP-50。機能・性能はそのままにリチウムイオン電池を搭載し電源供給不要で動作するようになるとともに、Exp端子、ステレオ出力、MIDI接続機能、ヘッドホン端子も搭載。年内発売の見通しで、価格は20,000円程度になるとのことです。
18:Positive Grid BIAS X
AIとエフェクトを融合させたユニークなソフトウェア。たとえば「****の曲のイントロ部分のギターソロサウンド」といったプロンプトをテキスト入力することで、それにマッチしたサウンドを再現してくれるほか、生成された音を会話のように文字で指定することで微調整するといったことも可能です。またサウンドの調整を学習することでユーザーとともに進化していくのも特徴となっています。
19:Teenage Engineering EP-40 riddim supertone
Teenage Engineeringでは以前「RPGの世界観だ!世界初の中世ヨーロッパをテーマにしたビートマシン、teenage engineering EP-1320 medievalの威力」で紹介したEP-1320などEPシリーズを出していますが、今回CASIOのMT-40をベースにしたEP-40を発表しました。「レゲエに革命をもたらしたスレンテンの母、CASIO奥田広子さんが語るカシオトーンMT-40開発秘話」もぜひ合わせて御覧になってみてください。
20:Tahorng Windkey
電子リコーダーのElefueや電子サックスのElesa 10などのヒットが続くTahorngが新たに発表したのが世界初の電子鍵盤ハーモニカであるWindkey。37鍵のミニキーボードで10音色を内蔵。またUSB-C端子経由でMIDI出力にも対応しています。ヘッドホン/ライン出力も搭載し、税込価格は29,700円。年内の発売が予定されています。
JSPA代表理事・浅田祐介氏に聞く、東京楽器博の現在と未来
今回で3回目となった東京楽器博2025。その成長ぶりと今後の展望について、企画協力を行う一般社団法人 日本シンセサイザープロフェッショナルアーツ(JSPA)の代表理事である浅田祐介さんにお話しを伺ってみました。
──今回の楽器博について、手応えはいかがですか?
浅田:順調に来場者が増えていることを実感しています。今回は会場の規模も広がり、参加企業/団体も100を超え、取扱い項目も過去最大となっています。海外メーカーの展示も増え、初日の来場者数も昨年を既に上回っていますから、最終的には来場者数も過去最大になると思います。
──来場者の様子はいかがでしたか?
浅田:新しい楽器やテクノロジーを見るときの、来場者のキラキラした目を見るのは、やはり力になりますね。何かをやる時のすごく力になります。また、今年特に感じたのは、来場者の年齢層が非常に幅広くなったということです。以前はクリエイター層や学生が中心でしたが、今年は家族連れの方から年配の方まで、本当に老若男女が来場されています。特に年配の方が増えた印象があります。
──年配の方が増えた背景には何があると思いますか?
浅田:日本の社会構造が変わってきて、仕事が一段落して『高校の時にやっていた音楽をもう一回やってみようかな』といった人たちの背中を押すイベントになってきているのかな、と感じています。実際、楽器メーカーの方と質問している様子を見ていると、そういう感じなんだろうなという気がします。
──今年は中国や韓国の企業の出展が目立ちましたが?
浅田:実は営業しに行ったわけではなく、逆に向こうから問い合わせが増えてきたんです。JSPAや運営の方に直接お話が来るようになりました。さらにNAMMからも『一緒に何かできないか』という話をいただいたりしています。国内外に対して『東京楽器博』というブランドのプレゼンスがちょっと上がってきているなと感じています。中国、韓国の開発者の方々のクオリティも高くなっていますし、日本のドメスティックなマーケットでは思いつかないようなユースケースもたくさんあります。新しい血が流れてきて、アジアでの楽器のハブみたいな形になれたらと思っています。
──今後の展開については、いかがですか?
浅田:来年もこの会場で開催する予定です。ただ、この施設の建て替えという話もあり、その後についてはプランBを考えておく必要がありますね。出展者や来場者の増加を見据えたプランニングが必要だと感じています。もし『うちを使ってほしい』というお話があれば、JSPAとしても積極的にお話を聞きたい状況です。嬉しい悲鳴ではありますね。
──ありがとうございました。3年間で着実に成長を続けてきた東京楽器博。来年以降のさらなる発展が楽しみですね。




























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