80年代末~90年代の音楽シーンを支えたKORGのデジタル・シンセサイザ、M1ミュージック・ワークステーションというカテゴリーの機材を世に広めた機材でもあり、世界中で累計10万台も売れたという、まさに時代を切り拓いた伝説の名機です。

そのM1をKORG自らがiPad上で復刻させ、「KORG iM1 for iPad」としてApp Storeで3,600円(6月末までは2,400円のキャンペーン価格です)で発売を開始しました。KORG自身による開発であるだけに、そのサウンドはオリジナルのM1そのもの。当時設計された回路図を解析し、細部のパラメータまで忠実に再現するとともに、オリジナルに関わったエンジニアによる丁寧な調整によって、完全な形で再現しているというのです。実際どんなものなのか試してみたので、紹介していきましょう。


M1を完全な形でiPad上に復刻させたKORG iM1 for iPad
 
まずは、そのKORG iM1 for iPad(以下、iM1)のプロモーションビデオがあるのでちょっとご覧ください。



わぁ、M1の音だ!」と感じられた方も多いと思いますが、すごくきらびやかな、デジタルシンセサイザというサウンドですよね。こうしたM1のシンセサウンドは、いろいろなソフトシンセメーカーがこれをサンプリングした上で、音色としてよく使っています。でも、サンプリングしただけでは、M1の良さすべてを出すことはできません。M1はシンセサイザであるため、音作りや演奏の仕方によって音が変化し、幅広い表現力を持っていたからですね。

でも、このiM1はそうしたサンプリング音源とはまったく違うもので、M1の表現力すべてをiPadで再現できるというのです。そんな音源が、たった3,600円で手に入れることができるのですから、いい時代になったものです。たとえば先ほどのビデオにもあったM1ピアノなんかも、一世風靡したサウンドでしたが、それがそのままiPadから飛び出してくるわけです。


1988年に発売され、世界的な大ヒットとなったKORGのM1

最新のサンプラーによる、限りなくアコースティック楽器に近いサウンドとは違い、デジタルシンセ!というサウンド。芯がハッキリしつつ、リバーブを効かせた広がりのある独特な音色が多いんですよね。各プリセットを鳴らすだけでも、かなり楽しいし、M1を知っている人なら、すごく懐かしい感じのするサウンド。こうしたプリセットサウンドを順番に選んで弾いているだけでも楽しくて、すぐに何時間も経ってしまうので、要注意ですよ!

さらにこのプリセットにおいて凄いのは、M1本体内蔵のプリセットが再現されているだけではなく、当時オプションとして発売されたM1用のPCM ROMカード全19種類、さらにはM1の内蔵PCMを拡張して発売されたM1EXサウンドなど、全34種類のカード、計3,300ものサウンドが詰まっているんです。


PCM ROMカードが、全34種類、計3,300の音色が用意されている

プログラム選択画面を見ても、画面上部にそのPCM ROMカードがズラリと並び、膨大なプリセットから音色が選択できるようになっているのが分かると思います。この34枚のカードのうち一部はアプリ内課金によるオプションという扱いで、M1のサウンドを拡張できる「M1 Cards Pack」(600円)、さらにM1の後継機であるT1のサウンドまで拡張できる「T1 Cards Pack」(600円)のそれぞれが用意されています。


オプションのM1 Cards PackとT1 Cards Pack 

ちなみに、このプログラム選択画面には楽器やキャラクタから絞り込みができるSEARCH機能があるほか、世界中のiM1ユーザーがどの音色を選んでいるかによって表示されるRANKINGなんていうものもあるので、ちょっと面白そうですよ。


コンビネーションモードでは、複数の音色を重ねて演奏できる


では、もうちょっとiM1の機能的なところを見ていきましょう。これは1つの音色を鳴らすプログラムモードのほかに、その音色を重ねて鳴らすコンビネーションモード、さらには実機のM1にはなかったマルチモードというものも用意されています。マルチモードは、いわゆるマルチティンバーで鳴らすためのモードで、外部のシーケンサからコントロールする場合、MIDIチャンネルごとに違う音色で鳴らせるというものとなっています。


EASY画面を使うことで、基本的な音色設定が簡単に行える


では、そのシンセサイザとしての機能ですが、M1はPCMの波形を使うai(advanced integrated)音源というものだったので、それを完全な形で踏襲しています。EASYという画面を使うことで、もっとも基本的な音色エディットが可能です。つまり、数多くあるPCM波形の中から音色の元となるものを選択した上で、フィルタの設定、フィルタ用EGの設定、アンプ用EGの設定などを行うのです。


オシレータを細かく調整していくOSC画面

 
さらに詳細にエディットしたいという場合にはオシレーターを調整するためのOSC、フィルターを細かく調整するためのVDF、アンプを調整するためのVDAといった画面で、自在に音を作っていくことができます。


2系統あるエフェクトを設定していくINSERT FX画面


また、CONTROL画面ではアフタータッチやコントローラーに関するパラメータの設定、そしてINSERT FXでは2系統用意されているエフェクトの設定ができるようになっています。このエフェクトのバリエーションも数多くあり、リバーブ、ディレイ、コーラス、フランジャー、オーバードライブ、エキサイター、ローターリースピーカー……といったものが揃ってますね。


もちろん、キーボードを大きく表示させることも可能。この場合、上のパラメータの一部は隠れてしまう

ところで、この画面を見ていて、「キーボード部分が小さくて弾きにくそう…」なんて持った方も少なくないと思いますが心配はいりません。まずKEYBOARDボタンを押すことで、キーボードを大きく表示させてiPadだけで弾くことが可能です。

またLightning-USBカメラアダプタを利用すれば、KORGのnanoKEY2microKEY(25鍵)、taktileをはじめとするUSB-MIDIキーボードに接続できるのはもちろん、Bluetooth-MIDIにも対応しているのもiM1の大きな特徴です。


MiseluのBluetooth-MIDIキーボード、C.24も認識して接続することができた 

以前に記事でも紹介したmiseluC.24QUICCO SOUNDmi.1などと接続して使えるのは、KORG Moduleと同様ですね。この際、Audio LatencyをFasterに設定することで、まったくといっていいほどレイテンシーを感じない快適な演奏が可能になりますよ(古い世代のiPadだとFasterに設定すると音が途切れるなどの問題が発生することがあります)。


KAOSS PAD機能を使うことで、鍵盤が苦手な人でも簡単に演奏することができる
 

鍵盤があまり得意ではないという人の場合は、KAOSS PADを使うのも手ですよ。これを使うと、右側のパッドを指でなぞるだけで演奏ができ、スケールの設定によって、いろいろな雰囲気の演奏に切り替えることも可能です。また左側のパッドを同時に操作することでフィルターを動かしたり、コントローラを操作するなど、キーボードプレイヤーさながらのプレイが誰でもできてしまうのも楽しいところです。


KORG GadgetにはiM1がDARWINという名前の音源として追加される 

さらに、外部アプリとの連携機能がいろいろと用意されているのもiM1の凄いところです。一つはKORG Gadgetとの連携です。このタイミングでGadgetのメジャーバージョンアップがあったことも背景にあるのですが、iM1と新バージョンのGadgetの2つのアプリがインストールされてある場合、Gadget側の音源としてiM1が追加される形になっているのです。これによって、Gadgetの表現の幅も大きく広がりますよね。

Gadget_Darwin
KORG Gadgetの音源として、普通にiM1が利用できるようになる

そしてInter-App AudioAudiobusに対応しているのも重要なポイントです。これらを使うことで、GarageBandにレコーディングしていったり、CubasisのMIDIシーケンス機能でiM1を演奏させることも可能になるわけです。
 

Inter-App Audioを用いてCubaseの音源としてiM1を使うことが可能になる
 

と、ここまで読んできて、「ん~、これってWindows/Mac用に出ていたKORG Legacy CollectionのM1と同じなんじゃないの?」と思った方は、正解。まさにPCベースのものをiPadに移植したものであり、音質的なクオリティーも同じなんです。でも、ポータブルに持ち歩くことができ、Bluetooth-MIDIで演奏することができるなど、音色エディット操作も指で簡単にできるなど、扱いやすさの面ではiM1のほうが優れているように思いました。


KLCからインポート、KLCへエクスポートを使うことで、KORG Legacy Collectionとのやり取りも可能


もちろん、DAWと組み合わせて音楽制作に使っていくのであればVSTやRTAS、AUのプラグインとして機能するPC版が必要となってくるわけですが、ここは使い分けですよね。とはいえ、「すでにPC版で作った音色をiM1で使いたい」とか「iM1で作った音色をPCで使えないのか?」という要望も出てくるかもしれません。そこも大丈夫。KORG Legacy Collectionとのデータのやり取りができるように、インポート機能、エクスポート機能が用意されているんですね。この際、iTunesを介してデータをやりとりする必要はありますが、とっても簡単に読み書きできるので、とっても便利ですよ。

さらに言ってしまうと、実機であるM1とも音色データの互換性を持っているんです。20年近く前の機材だけにUSBポートがないため、音色データをやり取りするためにはMIDI接続した上で、システムエクスクルーシブを用いる必要はあるのですが、実機とデータの互換性を持たせてあるというのは、さすがですよね。

以上、KORG iM1 for iPadについて紹介してみましたが、いかがだったでしょうか?実際に音を出してみれば「欲しい!」と思うこと間違いなし。この値段ですから、買わないほうが損だと思いますよ。もし、iPadを持ってないのなら、このiM1のために楽器としてiPadを買ってみるのも悪くない選択肢だと思いますよ。

なお、冒頭で、iM1が6月30日までキャンペーン価格になっていると書きましたが、iM1発売記念として、すべてのKORGのiOSアプリが6月30日までの期間限定で特別セールとなっているので、買うなら今がチャンスですよ!

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