TB3対応のWinPCも続々登場。RazerのゲーミングノートPCとUAのArrowで強力な新世代DTM環境を構築してみた

先日「DTMの世界を激変させるシステム、ArrowをUniversal Audioが発売開始」という記事でも紹介した、新世代オーディオインターフェイスのArrow。高音質なオーディオインターフェイスであると同時に、プロ御用達のDSP環境、UAD-2が利用可能であり、Unisonテクノロジーというものによってオーディオ入力部分もさまざまな特性に変化させられるスーパー機材です。

コンパクトで軽量だし、バスパワーで動作するから、ACアダプタ不要で持ち歩きやすいというもメリット。ただし、PCとの接続はUSBではなく、Thunderbolt3となっているため、手元のコンピュータ環境がマッチしないという人も少なくないのは事実です。とはいえMacの現行機種のほとんどはThunderbolt3を搭載しているし、Windows PCも続々とThunderbolt3端子を搭載してきており、Arrowが動作する環境は標準的なものとなってきています。先日入手したノートパソコン、Razer Bladeというのが、標準でFL Studioを搭載しているなど、DTMにとってなかなか強力なマシンで快適だったので、紹介してみたいと思います。

RazerのゲーミングノートPCとArrowで新世代DTM環境を構築


ご存知ない方のために改めてArrowについて軽く紹介すると、これは2IN/4OUTのオーディオインターフェイスであると同時に、内部にUAD-2というDSP機能を搭載した強力な機材です。UAD-2の詳細は以前「ビンテージエフェクトを忠実に再現する、プロ御用達のUAD-2ってどんなもの!?」といった記事でも紹介しているので、そちらもご覧いただきたいのですが、簡単にいうとPCのCPUパワーを使わずにVSTやAU、AAXなどのプラグインエフェクトを使えるシステムです。

コンパクトながら非常に強力な機材、Universal Audio Arrow

しかも、単なるプラグインエフェクトではなく、まさにプロ御用達のプラグインエフェクトであり、レコーディングスタジオに置いてあるアウトボードのビンテージ機材を現代に蘇らせたもの。しかも、勝手にモデリングしたのではなく、各ビンテージ機材のメーカーと協力してまったく同じ音が出るように作った、お墨付きのプラグインなんですよね。

さまざまなビンテージアウトボードを再現できるUAD-2プラグインを利用できる
さらにUnisonテクノロジーというものによって、2つある入力チャンネルの特性を変えることができるシステムです。これも簡単にいえば「マイクプリアンプをいろいろなものに変更可能なシステム」といってもいいかもしれません。詳細は以前書いた「アナログ特性自体を制御するapolloのUNISONテクノロジー」などにあるので、そちらをご覧いただければとも思います。

Unisonテクノロジーでギターアンプなども利用可能

そんなArrowがバスパワーで動くので、ノートPCと一緒に持ち歩くのにすごく便利なんです。個人的にはこれまでapollo twinを使っていて、もちろんapollo twinのほうが、よりDSPもパワフルだし、入出力数も多いのですが、ちょっと外に持ち出してボーカルやギターをレコーディングしたい……なんてときArrowだと軽くていいんですよね。

ACアダプタやTB3-TB2変換アダプタが必要なapollo twinと比較するとArrowは圧倒的に持ち運びやすい

ただし、気を付けなくてはならないのが、前述のとおりThunderbolt3対応であるということです。そう、Thunderbolt2ではなく、Thunderbolt3。端子はUSB Type-Cであって、使用するケーブルはUSB Type-C型のThunderbolt3対応というもの。とってもややこしいですが、Arrowに限らず、いまPCの標準仕様がこうしたものに変わってきているんですよ!


USB Type-C型のThunberbolt3対応ケーブルで接続する必要がある

私の使っているMacBook Proは、このUSB Type-C端子のThunderbolt3ですから、UADソフトウェア(ドライバやミキシングコンソールソフト、また各プラグインなどがセットとなったもの)をインストールした後に接続すれば即使えます。


もちろんMacBook Proと接続して使うこともできる

また、以前「apollo twin MKIIを使うためにThunderbolt3(USB Type-C)搭載のCore-i7超ミニPCを10万円で組み立ててみた」の記事で書いたミニPC(いわゆるNUCってヤツですね)でも、一発で使うことができました。apollo twinを接続する場合はThunderbolt3-Thunderbolt2変換アダプタが必要でしたが、Arrowの場合はThunderbolt3だからそのまま細いケーブル接続するだけなので、よりスッキリしますね。


昨年組み立てた超小型デスクトップPC=NUCも接続OK

Thunderboltというと、何となくMac系のインターフェイスという印象を持っている人もいるとは思いますが、インテルが今年リリースのCPUにThunderbolt3機能を標準搭載すること、Windows 10が昨年のCreators UpdateでThunderbolt3に標準対応したこと、さらにはThunderbolt3を非独占的かつロイヤリティーフリーで利用できるようにすることなどを発表しているため、各PCメーカーのThunderbolt3対応が一気に加速してきているんです。

最新のWindows 10ならArrowを接続するとThunderboltドライバが動き出し認識する

そうした中、今回ちょっと取り上げたいのが、先日入手したRazer BladeというノートPCです。ご存知の方もいるかもしれませんが、これは最先端のゲーミングノートPCと呼ばれるもので、ゲーム系の方には人気のマシン。そのRazer Bladeの新モデルにThunderbolt3対応のUSB Type-C端子が搭載されたのです。調べてみると現行のRazerの多くのマシンがThunderbolt3を搭載しているんですね。しかし、機種によってはThunderbolt3のUSB Type-C端子が電源用を兼ねていて、Arrowを接続してしまうと、バッテリー駆動しかできなくなるため、別途AC入力を持つRazer Bladeを選んだのです。

今回使ったゲーミングノートPC、Razer Blade

216,800円とちょっと高価なノートPCではありますが、ゲーミングPCというだけになかなかの高スペックで、CPUはCore i7-7700HQ クアッドコア プロセッサー(定格2.8 GHz/TB時 3.8 GHz)、またGPUにNVIDIA GeForce GTX 1060 (6GB GDDR5 VRAM)を搭載、メモリは16GBデュアルチャンネル オンボードメモリー (DDR4、 2400MHz)という内容。ストレージはSSD、256GBが標準で、512GBや1TBへの変更も可能となっています。このスペックがあればDAWを動かす環境としてもバッチリですね。

第7世代Core i7-7700HQ クアッドコア を搭載した高速マシン
OSはWindows 10は最新版が入っているので、Arrowを接続すれば、Thunderbolt3デバイスであることを即認識。もちろん、ちゃんと使うためにはUADソフトウェアをインストールすればOK。何のトラブルもなく、気持ちよくArrowを使うことができます。やっぱり、ケーブル1本で動いてくれるのは嬉しいですね。

ケーブル1本で接続できるのは大きな魅力

このRazer Blade、4Kの14インチのディスプレイを搭載したモデルなのですが、大きさ、重さ的にはMacBook Proの15インチとほぼピッタリ一緒ですね。

Razer BladeはMacBook Pro 15インチとほぼ同じサイズ、同じ重さ

価格的にはMacBook Proより安く、CPUは第7世代Core i7のクワッドコアですから、だいぶ上。さらにもう一つMacにはない大きなポイントが、このディスプレイがタッチパネル対応である、ということです。Arrowのシステム全体をコントロールする標準アプリ、Console 2.0もタッチパネル対応となっているので、このフェーダーをタッチ操作で動かすことができるのはなかなかよかったです。

タッチパネルなので、直接フェーダーを動かすことも可能

このフェーダーに限らず、UAD-2プラグインのつまみもタッチ操作である意味、フィジカルコントローラー的にディスプレイを使うことができるのです。またDAWの中にはSONARやBITWIG Studio、FL Studioなどタッチパネル操作が可能なものも登場してきているので、それらとの相性もよさそうです。

さらにRazerのノートPCがいいのは、ここにそのFL Studioが標準で用意されていること。これはRazer Bladeに限らず、RazerのほぼすべてのPCに共通な点なのですが、「FL Studioといっても機能限定版なんでしょ……」と思っていたら違いました。用意されているのはFL STUDIO Producer Editionというもので、国内ではbeatcloudサイトで24,000円で販売されているもの。

※初出時FL STUDIO Signature Bundleと書きましたが、Producer Editionの誤りでした。お詫びして訂正いたします。


FL Studio Singature Bundleを入手できる

もちろん通常販売されているものと同様、ライフタイムフリーアップグレードに対応しているため、将来すべてのバージョンアップに対して無料でアップグレードできるようになっているんです。制限事項を確認したところ、このRazerのPCを人に譲渡してもFLのライセンスは譲渡できないけれど、自分の持っているRazer以外のPCにインストールしてもOKとのことですよ。

ただ、実は最初ちょっと手間取りました。というのもRazer Bladeに最初からFLがインストールされてるわけではなく、まずFLのライセンスを入手する手続きをして、Image-Lineのサイトからダウンロードしないといけないんですよね。そのライセンスの入手方法もRazerのマニュアルなどに書いていないため、どうすればいいんだ……と困ったのですが、分かったので、紹介しておきましょう。

まずはRazer Synapseを使ってアカウントを作成し、機材を登録
FL Studioを入手するには、まず、Razer Bladeに標準でインストールされている管理アプリRazer Synapseを起動し、新規にRazer IDのアカウントを作成します。その後、下記のURLにアクセスし、取得したRazer IDとパスワードを入力するのです。
https://music.razerzone.com/get-fl-studio-12

このページにRazer IDとパスワードを入力する

すると、FL Studioのシリアルナンバーが発行されます。その一方でFL Studioの開発元であるImage-Lineでも別途アカウントを取得しておきます。


これでFL Studioのシリアルナンバーが発行される

このImage-Lineのサイトにログインし、指定されたページに飛んで、そのシリアルナンバーを入力すれば、これで晴れてFL Studioのオーナーとなることができ、あとはここからダウンロードし、インストールすればいいのです。


取得したシリアルナンバーをImage-Lineのサイトに登録すれば完了!

とくにEDM系の音楽制作ツールとしては絶大な人気を誇るFL Studio。もちろんVSTプラグインにも対応していますから、ここでUAD-2プラグインを使いながら、Arrowを思う存分活用することが可能です。

FL Studio上で、各種UADプラグインを動かすことができた

もちろんFL Studioに限らず、CubaseやStudio One、Pro Tools、Ability、Ableton Live……と各種DAWをインストールして、Arrowとともに使うことが可能なので、新世代DTM環境として活用してみてはいかがでしょうか?


これでFL Studioのシリアルナンバーが発行される

【価格チェック&購入】
◎Rock oN ⇒ Arrow
◎Amazon ⇒ Arrow

◎サウンドハウス ⇒Arrow

◎Rock oN ⇒ FL Studio Singature Bundle
◎Amazon ⇒ FL STUDIO Signature Bundle
◎サウンドハウス ⇒ FL STUDIO Signature Bundle
◎beatcloud ⇒ FL STUDIO Producer Edition

【関連情報】
Arrow製品情報(フックアップ)
Arrow製品情報(Universal Audio)
Razer Blade製品情報

Commentsこの記事についたコメント

9件のコメント
  • がふ

     すみません、勘違いならよいのですが、RAZERのWebを見ると、FL Studio 12 Producer Edition
    と書いてありました。本体には違いはなく、付属シンセとアプリの違いだけでしたが、気になりましたので。
     私自身はトラックパッドの呪いにかかっているので対象外ですが、スペック的に惹かれます。

    2018年3月20日 9:00 PM
  • Yuki

    RAZERのラップトップは以前から気になっていますが、故障した場合のサポートが貧弱と言われているので購入に踏み切れずにいます。
    まだ日本でのレビューが少なく、USのamazonでも散々な言われようですし、信頼して使える機材なのか気になっています。
    耐久性はどれほどか、もし故障したら、そのときはサポートは充実しているか、その点も含めて経過報告のような記事も執筆していただけると嬉しいです。

    2018年3月22日 6:26 AM
  • 藤本健

    がふさん
    ありがとうございます。ご指摘のとおりでした。修正しました。

    2018年3月23日 6:39 PM
  • しろ

    今回の記事とは関係なくなってしまうんですが
    以前のapollo usb の記事を見て
    今回購入しましたが、
    ネットではビープ音が出るとありました。
    公式でも対応策は出てましたが
    治らない人もいるとのこです
    藤本さんの方では
    特に問題ありませんでしたか?
    記事とは直接関係なくて申し訳ありません。

    2018年3月25日 8:01 PM
  • 藤本健

    しろさん
    こんにちは。ビープ音の話、まったく知りませんでした。
    いま検索したら、なるほどapollo twin USBで起きている問題みたいですね。
    とりあえず、私の持っているTB接続のapollo twin MKIIおよびArrowでは問題なく動いてます。

    2018年3月26日 12:39 AM
  • Razerといえばゲームのイメージというかゲーミングマウス等で自分も使っているが、そのラップトップPCでのDTMはfredV&grafixがよく用いていたので気になっていた。ここの記事で見られるとは:D

    2018年3月26日 1:44 AM
  • おとさん

    初めまして、以前からこちらのサイトでいろいろな勉強をさせて頂いております。

    4~5年前にRazer Bladeを購入し今でも現役で使用しているのですが、今更のように記事を読ませて頂きながらFL Studioのダウンロードを試みようとしたところ、記事内のリンク先が変わっているようでした。
    (「このページにRazer IDとパスワードを入力する」と画像付きで書いてくださっている所です)

    もうダウンロードは出来なくなっているのでしょうか?すみませんが終えて頂けると助かります、よろしくお願いいたします。

    2023年11月24日 10:48 PM
    • 藤本 健

      おとさん

      こんにちは。確かにページがクローズになってしまってますね。当時のRazerの担当者も辞めてしまい、よくわからないのですが、検索してみるとこんなページがありました。
      https://www.razer.com/jp-jp/campaigns/fl-studio-20
      ここからの設定でうまくいかないでしょうか?

      2023年11月25日 9:52 AM
  • おとさん

    とてもご親切に、また迅速にご返答くださりありがとうございます。
    半ば諦めておりましたが、教えて頂いたリンクから手順を進めてまいりました。しかしImage-Lineの新規アカウントを作成し、使用ライセンスを獲得する段で少し問題が出てしまいました。

    https://support.image-line.com/action/license
    ↓以下はリンク先の文面です
    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    シリアルの入力 
    ようこそ、このページは20文字のシリアルナンバーのボックスバージョン、OEMやその他の製品の登録ができます。以下の商品を含みます:

    ・FL Studio
    ・ソフトウェアシンセサイザー, エフェクト, サンプルパックなど

    シリアルナンバーは5つに分けられた20桁の英数字(例 XX0XX-000XX-X000X-000X0) で構成されています。これらは、ボックス製品の中の用紙にプリントされています。

    1回につき、1つのハイフンを含んだシリアルナンバーを入力してください。
    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    上記のリンク先からコードを引き換えるようにとの事なのですが、プロモコードは「GETFLSTUDIO」で入力してもやはりはねられてしまいます。

    大変申し訳ないのですが、お知恵をお借り出来ないでしょうか。よろしくお願いいたします。

    2023年11月27日 1:16 PM

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