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Steinberg URの正統進化がヤマハ”URX”として再始動。高性能オーディオインターフェイス、URX22/44/44V徹底検証

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これまでDTM用オーディオインターフェイスの代名詞的な存在として、長年トップシェアを誇ってきたSteinbergのURシリーズ。その系譜は、Steinbergからヤマハへとブランド移行を経て「ヤマハのURシリーズ」として再出発しました。すでに記事でも紹介してきた通り、URX22CURX44Cという、Steinberg製品をそのまま踏襲するモデルが登場していましたが、2026年1月15日、その上位モデルとなるURX22/URX44/URX44Vが新たに発表されました。これらは、DSPデジタルミキサー機能を搭載し、マルチチャンネル、マルチストリームオーディオに対応したオーディオインターフェイス機能を備えています。物理チャンネル数を上回るチャンネル数(16または18ch)に対応し、さらにマルチチャンネルとは別にA/B/Cの3系統のオーディオストリームに対応。Dual USB機能により、MAIN/SUBで同時に2デバイス接続が可能です。これらは従来のURX-Cシリーズとは次元の異なる”上位思想”を持った製品群。内部に強力なDSPを搭載し、各チャンネルごとにゲート、コンプ、EQ、各種FXを装備するとともに、リバーブなども利用可能。それらを本体搭載のタッチディスプレイで操作できるというシステムになっているのです。

2つのコンボジャック(1 Mic/Line/3.5mm headset mic, 1 Mic/Line/Hi-Z)と3.5mmのAUX入力を備えるとともに、2つのマイクプリを搭載したURX22(税込み実売想定価格63,800円)。4つのコンボジャック(1 Mic/Line/3.5mm headset mic, 1 Mic/Line, 2 Mic/Line/Hi-Z)で4つのマイクプリを搭載したURX44(同79,200円)。URX44にHDMI入力とスルー端子も加えたURX44V(同127,600円)の3つのラインナップがあり、URX44およびURX44VにはmicroSDカードスロットが搭載されており、オーディオインターフェイスとしてのみならず、本体だけでmicroSDに最大16トラックのマルチトラックレコーディングが可能です。このタイミングでヤマハはデジタルミキサーの新製品MGXシリーズ、さらにはUSBコントローラーのCC1も発表しています。これらについては今回は概要紹介に留めますが、URX22およびURX44Vを発表に先駆けて入手して試すことができたので、レビューしていきましょう。

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Steinberg URからヤマハURXへ──ブランドは変わったが、思想はどう変わったのか

まず、URがどのような経緯を経てURXへと進化したのか、整理しておきましょう。

DTMユーザーなら誰もが知る通り、SteinbergのURシリーズは2011年のUR28M/UR824登場以来、DTM用オーディオインターフェイスの定番として君臨してきました。音質、安定性、使い勝手のバランスがよく、初心者からプロまで幅広い層に支持されてきたシリーズです。しかし2024年、ヤマハがSteinbergのハードウェア事業を統合する形でブランド移行が行われ、URシリーズはヤマハブランドとして再スタートすることになりました。URシリーズに新たな上位機種としてURXシリーズが追加された結果、URシリーズは、UR-MK3、URX-C、URXの3シリーズになりました。

この経緯については、以前DTMステーションでも「UR22C、UR24Cが在庫限りで終了。後継機はヤマハURX22C、URX44C。Steinbergハードが全面的にヤマハブランド化」という記事で詳しく取り上げました。そこで紹介したのがURX22CとURX44Cです。これらは従来のUR-Cシリーズ(UR22C、UR44C)の機能をそのまま受け継ぎながら、ブランド名とバンドルソフトウェアを変更したモデルでした。ブランド変更に伴う外観の変更以外はUR-Cシリーズと同一で、いわば「看板の掛け替え」である製品でした。

そして今回発表されたのが、URX22、URX44、URX44Vです。名前こそ似ていますが、これらはURX-Cシリーズの単なる上位互換モデルではありません。URX-Cシリーズの上位に位置づけられる製品ではあるものの、設計思想や開発の狙いには違いがあり、入出力数や機能を単純に追加しただけのモデルとは異なる存在です。

左がURX22C、右がURX22。名前はそっくりだが、まったくの別モノといっていいほどの違いがある

URX-Cシリーズが、従来のUR-Cシリーズと同一の設計をベースに、ブランド名をSteinbergからヤマハへと変更したモデルであるのに対し、今回のURXシリーズは、制作や配信を取り巻く新たなニーズも視野に入れて開発されたモデルと位置づけられます。では、具体的に何が違うのでしょうか。

URX22C/URX44Cの単なる”上位版”ではない? 今回のURXシリーズの立ち位置

ここで明確にしておきたいのは、今回のURX22/44/44Vは、URX22C/44Cの単なる上位版ではないということです。同じ「URX」という名前がついているため混同しやすいのですが、両者はまったく別のコンセプトで作られています。

URX-Cシリーズ(URX22C/URX44C)

  • URシリーズの直系後継
  • 内蔵のDSP搭載
  • シンプルなハードウェア構成
  • PC上のDAWソフトウェアでの制作を前提
  • 価格帯:2万円台〜3万円台
  • ターゲット:従来のURユーザー、DTM初〜中級者

URXシリーズ(URX22/URX44/URX44V)

  • 内蔵DSP搭載の次世代モデル
  • 4.3インチタッチLCD+物理コントロール装備
  • 本体単体で完結する操作性
  • 価格帯:6万円台〜12万円台
  • ターゲット:制作と配信を両方行うマルチプロデューサー、音質重視のプロデューサー、配信メインのストリーマー、ポッドキャスタ

最大の違いは、URXシリーズは本体側の操作機能と組み合わせて内蔵DSP上で動くミキサー、エフェクトの操作が行える点です。URX-Cシリーズでも内蔵DSPによるミキシングやエフェクト処理は可能でしたが、基本的にはPCと接続し、ソフトウェア上での操作を前提とした設計でした。

URXシリーズは本体に4.3インチのタッチディスプレイを搭載し、各チャンネルごとにゲート、コンプレッサー、EQ、リバーブなどのエフェクトを本体だけで設定・調整できます。さらにScene Recall機能により、用途に応じた設定を瞬時に切り替えることも可能。つまり、「PCのDAWソフトを立ち上げなくても、本体だけでプロフェッショナルなミキシングと音作りができる」という、まったく新しい設計思想なのです。

価格帯も大きく異なります。URX22Cが実売価格で2万円台後半、URX44Cが3万円台前半であるのに対し、URX22の税込みの実売価格は63,800円、URX44は79,200円、URX44Vは127,600円です。これは単なる価格差ではなく、ターゲットユーザーと用途が根本的に異なることを意味しています。

URX-CシリーズがDAW制作を中心とするDTMユーザーを想定しているのに対し、URXシリーズは、DTMユーザーはもちろん、プロ、セミプロユーザーを含む、さらに本格的なレコーディング、音楽制作をするユーザーをメインターゲットとしているようです。さらにライブ配信、ポッドキャスト、ハイブリッドライブ、映像制作など、リアルタイム性が求められる用途も強く意識した設計になっており、「PCなしでも完結する」「現場で素早く操作できる」という点が、URXシリーズの最大の強みとなっているのです。

URX22、URX44、URX44Vの基本ポジション

今回、私が実際に試すことができたのはURX22とURX44Vの2モデルです。まず、それぞれの基本スペックと想定される用途を整理しておきましょう。

URX22(税込み実売想定価格63,800円)

URX22は、URXシリーズで最も入出力数が少ない低価格モデルです。といっても、決して機能が劣るわけではありません。

入力は、コンボジャック×2(CH1: Mic/Line/3.5mm headset mic、CH2: Mic/Line/Hi-Z)、3.5mm AUX入力×1。出力は、TRS×2(メインアウト)、ヘッドフォン端子×2(TRS×1、3.5mm headset×1)。USB端子はUSB-C×2(MAIN/SUB)で、USB MAINは32-bit/192kHz対応、16トラックの録音・再生が可能です。USB SUBは16-bit/48kHzで2トラック録音・再生に対応し、スマートフォンやゲーム機との接続を想定しています。

ソロで配信や宅録を行うクリエイター、ポッドキャスター、シンガーソングライターなどに最適なモデルです。マイク2本とギター/ベースを同時に接続でき、AUX入力でスマートフォンやオーディオプレーヤーの音源を取り込むこともできます。

URX44V(税込み実売想定価格127,600円)

URX44Vは、URXシリーズの最上位モデルです。「V」はVideoの意味で、HDMI入力とスルー端子を搭載している点が最大の特徴です。

入力は、コンボジャック×4(CH1: Mic/Line/3.5mm headset mic、CH2: Mic/Line、CH3/4: Mic/Line/Hi-Z)、3.5mm AUX入力×1、HDMI入力×1。出力は、TRS×4(メインアウト)、HDMI THRU×1、ヘッドフォン端子×2(TRS×1、3.5mm headset×1)。USB端子はUSB-C×2(MAIN/SUB)で、USB MAINは32-bit/192kHz対応、18トラックの録音・再生が可能です。

さらに、URX44VにはmicroSDカードスロットが搭載されており、本体単体で最大16トラックのマルチトラックレコーディングが可能です。これにより、PC不要でライブ録音やバックアップ録音を行うことができるのです。

HDMI入力により、カメラやゲーム機の映像・音声を取り込み、USB経由でPCに送ることができます。HDMI THRUにより、映像をモニターに出力しながら同時にPCでキャプチャすることも可能。つまり、URX44Vは「オーディオインターフェイス」「ビデオキャプチャー」「DSPミキサー」「マルチトラックレコーダー」の4つの機能を1台に統合したデバイスなのです。

ライブ配信者、映像クリエイター、ハイブリッドライブを行うミュージシャン、複数人でのポッドキャスト収録など、より複雑な制作環境を必要とするユーザーに最適です。

なお、今回はしっかり試したわけではありませんが、URXシリーズとしてもう1機種あるのが

URX44(税込み実売想定価格79,200円)

です。こちらはザックリ言えば、URX44Vからビデオ機能=HDMI機能を削ったもの、となっています。つまりアナログ入出力はURX44Vと同様でHDMI端子がない形です。microSDスロットは搭載されており、ここにレコーディングしたり、それを再生する機能があるというのがURX22との大きな違いでもあります。

「HDMIはいらないけれど、アナログのマイク入力が4つ欲しい」、「ビデオは使わないけれど、レコーディング機能が欲しい」といった場合、URX44が選択肢、ということになりそうです。

競合他社を意識!?──高音質とDSP処理でプロフェッショナルな音楽制作にも対応

今回のURXシリーズの機能や性能、価格設定を見て感じるのは、RMEやUniversal Audio、MOTU、Apogee、Audient……といった競合他社をかなり意識しているのでは、という点。確かに、URX-Cシリーズ、つまり従来のSteinbergのUR22Cなどは、エントリーユーザー向けというイメージが強く、他社のハイエンドのオーディオインターフェイスとはレベルの違いがあったというのは否めない点でした。しかし、今回のURXシリーズは、そうした強豪他社製品と真っ向勝負という感じでありつつ、HDMI入力/スルー端子を持ったり、microSDへのレコーディング機能を持つなど、ヤマハの独自色も発揮した強力な製品になっています。ではそのスペック面をもう少し掘り下げていきましょう。

マイクプリの性能

URXシリーズのマイクプリアンプは、ヤマハの「True Sound」思想に基づいて設計されています。ゲイン幅は78dB、EIN(等価入力雑音)は-128dBu、ダイナミックレンジは入力115dB、メイン出力で125dBを実現。価格帯も上位に位置する製品でダイナミックレンジだけをみても格上の存在であることがわかります。今回登場のURX22、URX44、URX44Vは、明らかに従来の製品とは一線を画す、ハイグレードなオーディオインターフェイスということのようです。

参考までに、ダイナミックレンジを比較すると以下の通りです。

・URX:入力115dB | 出力125dB
・URX-C:入力102/106dB(106dBは5/6 IN)| 出力105dB
・UR-MK3:入力106dB | 出力107dB

実際にコンデンサーマイクを接続して歌を録音してみましたが、非常にクリアで透明感のある音質です。低域から高域まで素直に伸びており、過度な色付けがありません。ヤマハがこれまで培ってきた音響技術のノウハウが、しっかりとURXシリーズに受け継がれていることを実感しました。

ダイナミックマイクを接続してナレーション録音も試してみましたが、こちらも申し分ありません。78dBのゲイン幅があるため、ゲインを上げてもノイズが乗りにくく、クリアな音声を録音できます。

AD/DAコンバーターの品質

URXシリーズはどのモデルも32-bit/192 kHzのAD/DAコンバーターが搭載されています。実際に192kHzで録音してみると、高域の伸びやかさ、音場の広がり、微細なニュアンスの再現性が際立ちます。もちろん、通常の制作では48kHzや96kHzで十分ですが、ハイレゾ録音にも対応できる拡張性があるのは心強いです。

非常に強力なDSPエフェクト機能

URXシリーズには、各チャンネルごとにゲート、コンプレッサー、EQ(4バンドパラメトリック)、そしてリバーブ、ディレイ、アンプシミュレーター、ピッチ補正などのエフェクトが搭載されています。これらはすべて内蔵DSPで処理されるため、PC側のCPU負荷はゼロです。

実際に使ってみて驚いたのは、このDSPエフェクトのクオリティの高さです。たとえば、コンプレッサー。アタックやリリース、レシオなどのパラメーターを細かく調整でき、ボーカルやギターに自然なダイナミクスコントロールをかけることができます。過度にかけすぎなければ、プラグイン並みの自然な仕上がりです。

EQは4バンドのパラメトリックEQで。非常に使いやすく、必要な帯域を的確にコントロールできます。ボーカルの不要な低域をカットしたり、高域を持ち上げて明瞭度を上げたりといった調整が、本体だけで完結します。

ゲート、コンプ、EQがチャンネルストリップとして各チャンネルごとに標準搭載されているのに対し、INS FXとしてギター用のアンプシミュレーターが4種類、Pitch Fixというピッチ補正ツール、さらにCompander(コンプ+エクスパンダー)が2種類搭載されています。

アンプシミュレーターはClean、Crunch、Lead、Driveの4種類で、基本的にはURX-Cシリーズに搭載されている機能を踏襲したもののようです。

一方、Pitch FixはいわゆるAuto-Tune的な機能で、スケールやキーを設定して、その音程に強制することができるエフェクト。

どの音程にするかをMIDIでコントロールすることも可能だし、上下1オクターブの範囲内でのピッチシフトも可能です。またフォルマント調整も可能になっているので、ボイスチャンジャー的な利用も可能になっています

そしてCompanderはスレッショルド、レシオ、ワイズなどの設定によってCompander-HとCompander-Sの2種類が用意されています。INS-FXはいずれか1つを選ぶ形になっているほか、Pitch-FXは44.1kHzか48kHzでの動作時にしか使えないなど若干の制限はあるようでした。

また2つあるFXチャンネルにはFX1/FX2それぞれにREV-XとREV-R3というリバーブが搭載されており、これはヤマハオリジナルの高品質なアルゴリズムのリバーブで、ボーカルやギターに自然な残響を加えることができます。REV-XはURX-Cにも搭載されていますが、REV-R3はヤマハのデジタルミキサーDM3などに搭載されているものになります。

REV-X/REV-R3ともにHall、Room、Plateの3種類で、それぞれ部屋の広さや残響の長さを調整でき、ライブ感のある音作りが可能となっています。

ほかにもMono Delay、Pinp Pongのそれぞれを選ぶことも可能になっており、いずれも各チャンネルからFXチャンネルへセンド/リターンの形で送ることで利用できるようになっています。

URXシリーズ最大の特徴は”PC前提ではない”こと

さて、実機を触ってみて最も強く感じたのは、URXシリーズが「PCありきのオーディオインターフェイス」ではないということです。これは、URX-Cシリーズとの最も大きな違いであり、URXシリーズの設計思想の核心と言えます。

従来のオーディオインターフェイスは、基本的にPCと接続して使用することを前提とした機器でした。マイクやギターを接続し、録音や編集、ミキシングといった作業はPC上のDAWソフトを中心に行い、エフェクト処理もPC側の操作を通じて行う。これが一般的な使い方でした。

しかし、URXシリーズは違います。本体前面に4.3インチのタッチLCDディスプレイを搭載し、そこですべての操作が完結します。入力ゲイン、EQ、コンプレッサー、ゲート、リバーブ、ディレイなど、必要なエフェクト処理をすべて本体だけで設定できるのです。

興味深いのは、URXシリーズの内部構造です。物理的な入力端子は、AUXを入れるとURX22が4ch、URX44が6chですが、内部的にはURX22は12チャンネル、URX44/44Vは14チャンネルのデジタルミキサーとして機能しています。USB経由で接続されたPCからの複数のオーディオトラック、AUX入力など、多彩な音源を同時にミキシングできる柔軟性を持っているのです。

たとえば、メインのDAWで楽曲制作をしながら、別のPCやタブレットからリファレンス音源を再生し、さらにマイクからトークを入れる、といった複雑なセットアップも、URX本体だけでミキシング可能です。これは、従来の「2in/2out」や「4in/4out」という単純な発想を超えた、次世代のオーディオハブとしての設計です。

ミキサーとノブ

ディスプレイの操作性も非常によく考えられています。タッチ操作に加えて、画面下部には4つの物理ノブ(SCREEN knobs)と、中央に大きな「TOUCH AND TURN」ノブが配置されています。このTOUCH AND TURNノブが秀逸で、画面上のパラメーターをタッチしてからノブを回すことで、直感的かつ精密な調整が可能です。タッチ操作だけでは微調整が難しい場面でも、物理ノブとの組み合わせにより快適な操作感を実現しています。

PC用ミキサーソフトが存在しない!?

URXシリーズは、本体に搭載されたディスプレイを用いて、ミキサーの設定を行うわけですが、気になるのは、WindowsやMac側で、これらの操作を行うことができるのか、という点です。

結論からいうと、現時点、そうしたことはできないようです。つまりURX-CシリーズにはdspMixFx UR-C/URX-CというPC用のミキサーソフトが付属し、PCの大画面で詳細な設定を行うことができました。しかし、URXシリーズにはそれがないのです。これは「本体だけで完結する」という設計思想の表れなのだと思いますが、あえて「PCの画面を開かずに、手元で即座に音を調整できる」ことが重要視した結果、こうなっているようです。

一方で、ドライバなどとともに、WindowsやMacにインストールされるDevice Centerを通じてElgato Stream Deckを用いてURXシリーズをコントロールする機能が搭載されています。とくに配信などの世界ではSteam Deckを使っているユーザーが急速に増えていますが、このStream Deck対応を歓迎するユーザーも多そうですね。

もっとも個人的には、PC側でコントロールするソフトがあってもいいのでは…とも思った次第。この辺は今後登場してくれることを期待するところです。

Simple ModeとStandard Modeという2つのオペレーションモード

ここまで見てきても分かる通り、URXシリーズは、DSPを利用したかなり強力な内部ミキサーを装備しているので、ミキサーコンソールの操作に慣れている人であれば、すぐに使い方が見えてくると思います。一方で、ミキサーコンソールに馴染みの薄い人だと、その操作がなかなか分かりにくいかもしれません。

そこで、用意されたのがオペレーションモードという考え方で、操作体系をSimple ModeとStandard Modeという2種類に切り替えることが可能になっているのです。

CubaseなどDAWのミキシングコンソールを含め、ミキサーコンソール操作に慣れている人であれば、Standard Modeを選択するのがいいと思います。基本的にはマニュアル操作で各チャンネルごとにゲイン、EQ、コンプなどを調整していく形で、これまで見てきたのがそのStandard Modeとなります。

一方で、Simple Modeを選ぶと、その名のとおり、もっとシンプルな画面で難しいことなく操作できるようになっているのですが、ここが非常に便利にできているのです。

まずは「プリセット」、「セットアップアシスタント」、「シーン」という3つの選択肢が出てきます。ここでプリセットを選ぶと、さらに「ライブ音楽、イベント」、「配信」、「DAWレコーディング」という3つの選択肢が出てくるので、この中から使いたいプリセットを選びます。

たとえば「DAWレコーディング」を選ぶと、もうそれだけでDAW利用のためのセッティングになるのです。

ここでは日本語の画面で、基本的な操作方法を教えてくれるので、これを見ていけば、一通りのことは分かるはず。

あとは、そのシンプルな画面で、各チャンネルのオン/オフ操作をしたり、4つ並んだノブを回すだけでボリューム調整などもできるので、すぐに使えるはずです。

一方、「セットアップアシスタント」を選んでも、やはり「ライブ音楽、イベント」、「配信」、「DAWレコーディング」という3つの選択肢が出てくるのですが、こちらではさらに踏み込んで、ゲイン調整なども自動で行ってくれるようになっています。

画面で、どこに何を接続するのかなどを丁寧に教えてくれるので、それに従っていきます。また入力にどんなマイクを接続するのか、どのような使い方をするのかなども聞いてきてくれるので、それに従っていき、マイクやギターなどを通じてテスト入力すれば、自動的に最適な形に調整してくれるので、まったく初めての人でも、自分の環境にマッチする形で最適な環境を構築することが可能です。

もう一つのシーンについては、この次に紹介しますが、このSimple Modeにおいて重要なのは使い方がシンプルである、というだけで、機能・性能面においてはStandard Modeと同様である、という点です。

実はSimple Modeで「セットアップアシスタント」を用いて環境構築をしたあとで、そのままStandard Modeへ切り替えることも可能となっているのです。まさにSimple ModeとStandard Modeはシームレスな関係にあり、いつでも切り替えて使うことが可能になっているのです。

つまり細かな点まで調整したければStandard Modeを、用途が確定していて単純な操作だけでオペレーションしたい場合はSimple Modeを、といった使い分けができるので、シチュエーションに応じて使い分けることができるのです。

Scene Recallを利用して、瞬時にシーンの設定を切り替える

もう一つ、Simple Modeに用意されていた「シーン」=Scene Recall(シーンリコール)機能。これはSimple Modeでの利用に限ったものではなく、URXシリーズが持つ、もう一つの重要な機能で、プロ用デジタルミキサーではお馴染みの機能でもあります。この価格帯のオーディオインターフェイスに搭載されているのは画期的といっていいと思います。

Scene Recallを使えば、「ボーカルレコーディング用」「ギター多重録音用」「バンドリハーサル用」「生配信用」など、用途ごとに最適化した設定をプリセットとして保存し、ワンタッチで切り替えることができます。たとえば、普段はギター録音用の設定にしておき、急にボーカル録音が必要になったらボーカル用のシーンを呼び出す、といったことが瞬時にできるわけです。

デフォルトではSimple Mode用として「LiveMusic 0」、「Streaming 0」、「DAW Rec 0」、「DAW Rec 1」という4種類、Standard Mode用としては、すべてを初期化する「Intial Data」というものが1種類用意されていますが、自分で設定を行ったら、それをシーンとして登録して、本体に保存することができるようになっているのです。

そのため、外にいるときでも、URX本体だけで簡単に、セッティングしておいたシーンを呼び出して使うことが可能なのです。もちろん、ライブのリハなどを行って、各バンドごとにシーン保存しておく、といったことも可能ですね。

現場の高効率化を実現し初心者にも優しいAuto Gain / Clip SafeとDucker機能

先ほど、Simple Modeにおける「セットアップアシスタント」という機能を紹介しましたが、これを紐解くと、実はAuto GainとClip Safeという便利で強力な機能につながります。

Auto Gainは、マイク入力のゲインを自動で最適化してくれる機能です。マイクを接続してAuto Gainをオンにすると、URX側で自動的に適切なゲインレベルを設定してくれます。ゲイン調整に自信がない初心者でも、すぐに適切な音量で録音を始められます。

Clip Safeは、突発的な大音量によるクリッピング(音割れ)を防ぐ機能です。急に大きな音が入力されても、自動的にゲインを下げてクリッピングを回避してくれます。ボーカルの力強いシャウトや、ギターの突発的なアタック音など、予測不可能な音量変化が起こりやすい録音で非常に有効です。

これら二つの機能を合わせることで、たとえばモバイル録音の現場など、忙しい現場での設定の手間を省くことができるのも大きなポイントですし、初心者でも簡単にセッティングできるという面でも大きなメリットになります。

もう一つ、音楽制作において、さらには配信現場で便利なのがDucker(ダッカー)機能です。これは、特定の音声(たとえばボーカルマイク)が入力されたときに、他の音源(伴奏トラックやクリック音など)の音量を自動的に下げる機能です。

たとえば、弾き語りの録音で、ギターの伴奏とボーカルを同時に録る場合、歌い始めたときにギターの音量が自動的に少し下がり、歌い終わるとまた元の音量に戻る、といった動作が自動で行われます。また、配信トーク中にBGMを流している場合、マイクで話し始めると自動的にBGMの音量が下がり、話し終わると元に戻るといった使い方もできます。これにより、ボーカルやトークが常に前に出た、聴きやすいバランスを保つことができます。

これらの機能はすべて、「現場で止まらない」「リアルタイムで調整できる」というURXシリーズの設計思想を体現しています。PCのDAWソフトを立ち上げる必要はありません。本体だけで、プロフェッショナルな音作りが完結するのです。

URX44Vで見えた、ヤマハの「音×映像」戦略

URX44Vの最大の特徴は、HDMI入出力を搭載していることです。これにより、URX44Vは単なるオーディオインターフェイスではなく、「オーディオとビデオを統合したマルチメディアハブ」としての役割を果たします。

HDMI IN/THRU + USBキャプチャという構成

URX44Vには、HDMI IN(入力)とHDMI THRU(スルー出力)の2つの端子が搭載されています。たとえば、一眼カメラやビデオカメラのHDMI出力をURX44VのHDMI INに接続すると、その映像と音声がUSB経由でPCに送られます。同時に、HDMI THRUから外部モニターに映像を出力することも可能です。

つまり、カメラの映像を見ながらレコーディングを行い、同時にその映像をPCでキャプチャする、という環境が1台で構築できるのです。演奏動画の制作や、レコーディングの記録映像を残したい場合に非常に便利です。

対応解像度は4K/60fps、1080p/240fpsです。高画質な映像制作にも対応できるスペックです。

ちなみに、ヤマハはこれまでZGシリーズというゲーミング向けオーディオインターフェイスを展開していましたが、ZGシリーズはHDMIの音声のみを取り込む仕様でした。URX44VはHDMIビデオキャプチャー機能を内蔵しており、映像も音声も同時に取り込んでPCに送ることができます。これにより、別途ビデオキャプチャーデバイスを用意する必要がなくなりました。

DAW制作での活用シーン

URX44Vは、音楽制作における映像活用の幅を広げます。たとえば:

  • レコーディングセッションの記録: バンドのレコーディング風景を高画質で記録し、後からメイキング映像として編集できます。
  • 演奏動画の制作: 一眼カメラで撮影しながら、高音質な音声をURX44V経由で録音。映像と音声の同期も完璧です。
  • リモートコラボレーション: カメラを通して演奏を撮影し、音声とともに相手に送信することで、よりリアルなリモートセッションが可能になります。

オーディオインターフェイスとキャプチャーの統合がもたらす利点

オーディオインターフェイスとビデオキャプチャを統合することのメリットは、単に「機材が減る」ということだけではありません。最大のメリットは、音声と映像の同期が完璧に保たれることです。

別々のデバイスを使うと、わずかな遅延(レイテンシー)のズレが生じることがあります。しかし、URX44Vなら音声も映像も同じデバイスで処理されるため、リップシンク(口の動きと音声のズレ)の問題が起こりにくいのです。実際、URX44VにはDelay機能も搭載されており、万が一のズレも手動で補正できます。

URX44およびURX44Vに搭載されたマルチトラックレコーディング機能

先ほども少し触れましたが、URX44およびURX44Vに搭載されている強力な機能がmicroSDカードへの最大16chでのマルチトラックレコーディング機能です。これを利用することで、WindowsやMacなどのPCを使うことなく、本体だけでレコーディングすることが可能になり、これ1台だけを持ち出してレコーディング機器として使うこともできるし、オーディオインターフェイスとしてPCと接続してDAWへのレコーディングをしながら、DAWのクラッシュなどに備える形で、そのバックアップとして利用することも可能になります。

ご存じの方も多いと思いますが、RMEのFireface UCXIIなどにはDURec機能というものがあり、同様なことが可能でした。プロの現場などでは、バックアップ録音ができて安心ということからRME製品を選んでいるケースもあったと思います。DURec機能はUSBメモリを使う形ですが、URX44およびURX44Vであれば、microSDのスロットがあるので、よりスマートにレコーディングしていくことが可能です。

使い方はとってもシンプル。メイン画面右上に表示されるmicroSDのアイコンをタップするとRecorderとToolsというメニューが表示されます。Toolsを選ぶとフォーマットしたり、microSDの読み書きテストなどができるようになっています。

一方、Recorderを選ぶと各トラックに、どのチャンネルの信号をレコーディングするのかを選択する画面が現れます。ここで、各トラックをタップすると、ミキサーで設定してあるチャンネル、そのミックス結果などを自由に選択できるようになっているのです。

またTrack Countを選ぶことで、何トラックのレコーディングをするかの設定が可能になっています。動作サンプリング周波数が44.1kHz/48kHzの場合は16トラックまでフルでレコーディング可能ですが、96kHzでは8トラック、192kHzでは4トラックまでとなっています。

実際に使ってみたところ、16chを同時に録音した場合でもWAVファイルは1つ生成されるという形となっています。つまり、16chのWAVファイルであるため、1/2ch、3/4ch…とステレオでの書き出しが必要な場合は、あとでDAWや波形編集ソフトを使って書き出す必要があります。

URX44Vは、「音と映像を扱うミュージシャン」にとって、非常に頼れる相棒になるでしょう。

同時発表されたMGXとCC1とは何者か?

今回、ヤマハはURXシリーズと同時に、デジタルミキサーのMGXシリーズと、USBコントローラーのCC1も発表しました。これらは単体の製品でもありますが、URXシリーズと組み合わせることで真価を発揮するエコシステムの一部として設計されています。簡単に紹介しておきましょう。

MGXシリーズ:URXと思想を共有する次世代ミキサー

MGXシリーズは、デジタルミキサーです。MGX12、MGX12V、MGX16、MGX16Vの4モデルがあり、12チャンネルまたは16チャンネルのミキサーとして機能します。V付きモデルはHDMI入力とスルー端子を搭載しており、URX44Vと同様に音声と映像を統合できます。

MGXシリーズもURXシリーズと同様に、4.3インチタッチLCDと物理フェーダーを搭載し、本体だけで完結する操作性を実現しています。内蔵DSPによるエフェクト処理、Scene Recall、Auto Gain、Ducker、Multi-Band Compressorなど、URXシリーズと共通の機能を多数搭載しています。

実は、MGXシリーズとURXシリーズの内部ミキサーはほぼ同じつくりで、内部的にほぼ同じファームウェアで動作しており、画面構成も非常に似ています。いわば兄弟モデルとも言える関係です。

ただし、ターゲット層は異なります。URXシリーズが「ソロアーティストや個人制作者」向けであるのに対し、MGXシリーズは「バンド演奏、複数人での録音、ライブイベント、設備音響」また「多チャンネルが必要な個人スタジオ」など、より多くの入力チャンネルを必要とする用途に対応します。

価格帯は、MGX12(ビデオなし)が約13万円、MGX16V(ビデオあり)が約20万円となっています。

CC1:Stream Deck思想を内包した公式USBコントローラー

CC1は、URXシリーズやMGXシリーズと連携するUSBコントローラーです。12個のLCDキーを搭載し、それぞれに任意の機能を割り当てることができます。さらに、タッチセンシティブなモーター付きフェーダー、AIノブ、マルチファンクションノブなども搭載されています。

注目すべきは、CC1がElgatoのStream Deckソフトウェアに対応している点です。実は、ヤマハとElgatoは現在協業関係にあり、URXシリーズやMGXシリーズもStream Deckからコントロールできるようになる予定です。CC1は、Stream Deckユーザーならすでに使い慣れた環境で活用できるのです。

さらに、CC1はDAWコントローラーとしても機能し、CubaseやNuendo、さらにはPro Toolsにも対応しています(リリース時点)。かつてSteinbergから発売されていたCC121というCubase専用コントローラーの後継モデルとも言えますが、CC1はより汎用性を重視した設計になっています。

価格は58,000円(税抜、税込約63,800円)。Elgato Stream Deckが2〜3万円程度であることを考えると、「Stream Deck + DAWコントローラー」として考えれば妥当な価格設定と言えるでしょう。

URX/MGX/CC1が一つのエコシステムであること

ヤマハがこのタイミングでURX、MGX、CC1の3つを同時発表したのは偶然ではありません。これらは互いに連携し、一つのエコシステムを形成するように設計されています。

たとえば、URX44Vで音声と映像をキャプチャし、CC1でDAWやソフトウェアをコントロールし、必要に応じてMGXシリーズで大規模なミキシングを行う、といった環境が構築できます。さらに、これらすべてがElgatoのStream Deckとも連携するため、音楽制作から映像制作、さらにはライブパフォーマンスまで、幅広いクリエイティブワークに対応できる強力なツールセットとなります。


以上、ヤマハが発表したURXシリーズに焦点を当てて紹介してきましたが、いかがだったでしょうか?名称的には従来のURX22CやURX44Cと似てはいるものの、これまでのエントリー機材というものとは一線を画す、かなりハイエンドな製品であることがお分かりいただけたのではないでしょうか?

競合他社のハイエンドモデルに勝負を挑む形で登場した機材でありつつ、本体でDSPの設定などすべてを本体だけで行える点や、Simple ModeとStandard Modeを持って用途におうじた使い分けができる点、URX44Vにおいてビデオとの連携を実現させた点やmicroSDへのレコーディング機能…など、他社製品にないユニークな機能を満載しているのも面白いところです。

音楽制作はもちろん、配信やライブでの利用など、さまざまな利用シーンが考えられそうですが、今後どのように広がっていくのかが気になるところです。

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