純国産のDAW、ABILITYが3年ぶりのメジャーバージョンアップで、ABILITY 3.0に。70以上の機能を強化し発売開始

ヨーロッパ製、アメリカ製のDAWが台頭する中、唯一純国産のDAWとして進化を続けているインターネット社のABILITYが久しぶりにメジャーバージョンアップし、ABILITY 3.0となって7月18日より発売されます。ABILITY 2.0から数えて3年、ABILITY 2.5から数えても2年となる今回の新バージョンはUIも洗練され、数多くの機能が追加、強化されています。

上位版のABILITY 3.0 Proとエントリー版のABILITY 3.0 Elementsという2ラインナップはこれまで通り。最近の海外DAWの潮流に合わせる形で、ワンウィンドウモードをサポート(従来通りの使い方も可能!)。またミキサーコンソールも、5種類のエフェクトを搭載したチャンネルストリップが融合されたり、従来の編集ヒストリーだけでなくミキサーヒストリーを搭載したり、VCAフェーダーが利用できるようになるなど、大きく進化しています。そのほか、すべてのVSTエフェクトでMS処理が可能になったり、IK MultimediaSampleTank 4 SEAmpliTube METALがバンドルされるなど、70以上の機能強化、機能改善が図られています。実際に使ってみたので、紹介してみましょう。

3年ぶりのメジャーバージョンアップとなるABILITY 3.0

海外モノのDAW、ここ最近のUIの流行りはワンウィンドウとなっています。やはりディスプレイが大画面化してきた今、いくつものウィンドウを重ねて表示させるよりも、全体が見渡せるワンウィンドウが好まれるのだと思いますが、新バージョンのABILITY 3.0もその流れに乗り、ワンウィンドウモードをサポートしました。

ワンウィンドウモードをサポートし、1画面ですべてを見渡せるようになった

画面下のタブを使うことで、ミキサーやスコアエディタ、ウェーブエディタ、メディアブラウザなどを切り替えることが可能になっています。まあ画面右側には日本の伝統芸、MC-4やMC-8、カモン・レコンポーザから続く数値入力画面。これによって「すごく洗練された画面で便利になった」と思う方がいる一方、「やっぱり従来の画面のほうが使いやすい」という方も少なくないはず。

タブを使うことで、画面を切り替えていくことができる

これに対し、ABILITY 3.0では、ウィンドウメニューにおいて「ワンウィンドウモード」という項目が用意されており、これにチェックを入れてONにするか、外してOFFにするかで、UIも大きく変わり、これまで通りの使い方ができるのも嬉しい点です。やはりノートPCなど画面サイズが小さいマシンの場合、ワンウィンドウだと、うまく収まりきらず、かえって見づらくなることがあるので、選択できるというのはありがたいところです。

ワンウィンドウモードをオフにすれば、従来通りの画面にすることも可能

今回ミックスコンソールも大きく進化しています。最大のポイントは、各チャンネルにチャンネルストリップが搭載されたという点です。具体的にはGateCompEQSatulationLimiterの5種類のうちいずれかを組み込めるようになっています。もちろん、従来通りINSERTSに各種VSTエフェクトなども使わるわけですが、ミックスコンソール自体でだいたいの音作りができ、しかも軽く動作してくれるというのは嬉しいポイントですね。

ミっクスコンソールにチャンネルストリップを統合できるようになった

またPre/Post/Recのそれぞれに最大16個まで拡張されたインサートエフェクト(ElementsはPreに最大16個)を利用できるなど、柔軟性も非常に高くなっています。

ミキサーを動かした履歴を確認し、さかのぼることができるミキサーヒストリーを搭載

またこれまでなかった便利な点としては、ミックスコンソールにおけるヒストリー機能も重要なポイントです。これは編集作業におけるヒストリー機能とは異なり、ミックスコンソールの操作、つまりフェーダーを動かしたり、パンを動かしたり、また前述のチャンネルストリップを操作したり…という情報を履歴として管理できるので、「さっきのパラメータでの音のほうがよかった」といった場合に、すぐに元に戻ることが可能になっているのです。

一方、最近のDAWの流行りともいえるVCAフェーダーがABILITY 3.0 Proに搭載されています。これまでもフェーダーのグルーピングはできたのですが、それとはまた少し違った動きになるのです。ちょっと簡単に説明してみましょう。

まずはグループトラックについてです。たとえばAUDIO 1、AUDIO 2、AUDIO 3というトラックがあり、その出力をGROUP 1というトラックに送るのが、グループトラックの使い方です。この場合、グループトラックのフェーダーを動かしたり、パンを動かすことで、3つをまとめたもの全体を動かすことができます。

従来からと同様、グループトラックに集約させるという方法も使える

それに対し、VCAフェーダーの場合、出力はグループトラックなどにまとめることなく、そのままです。その一方で、VCAフェーダーというものを作成するとともに、AUDIO 1、AUDIO 2、AUDIO 3それぞれをVCAフェーダーと連動させます。すると、VCAフェーダーを動かすと、それに加算される形で各トラックのフェーダーが上下するのです。たとえば3dB上げれば、それぞれ3dB上がり、5dB下げれば、それぞれ5dB下がる。似てはいるけれど、ちょっと違う動きになるんですね。

VCAフェーダーを使うことで3つのチャンネルのフェーダーをまとめて操作できる

さらに、VCAフェーダーとは別に、ABILITY 3.0 PROにはチャンネルリンクという機能も搭載されました。AUDIO 1、AUDIO 2、AUDIO 3をリンクさせた場合、1つのチャンネルのフェーダーを操作すると、すべてのチャンネルが同じように動くのです。これはボリュームに限らず、パン、アウトプットトリム、センドレベルなどをまとめて動かすことができるというものです。どう使い分けるかはアイディア次第ですが、それだけ自由度が高いDAWへと進化しているのです。

3つのチャンネルをすべて同じようにリンクさせるチャンネルリンク機能も搭載

ABILITY 3.0 Pro、Elements共通で大きく強化されたもう一つの機能として、すべてのVSTエフェクトでMS(Mid/Side)処理が可能になった、ということも重要なポイントです。

ここでMS処理とは何かの説明をするのは割愛しますが、以前「マスタリングで大きな効果が得られるMS処理を実現するVSTプラグイン、MS EQ COMPをインターネット社がWin/Mac対応で無償公開」という記事の中で詳しく紹介しているので、ぜひそちらの記事も参照してみてください。

プラグインのウィンドウの上に「M/S」というボタンがある

プラグインのウィンドウを見てみると分かる通り、上部に「M/S」というボタンがあり、これをオンにすることで、エフェクトの前後でMSエンコードとMSデコードが行えるようになります。これはABILITY標準で搭載されているエフェクトに限らず、すべてのエフェクトで使えるというのが面白いところですね。

他社のプラグインに対してもM/S処理、PINコネクトが可能。画面はDotec-AudioのDeeCrystal

またL/Rチャンネル両方あるいはLチャンネルやRチャンネルの片チャンネルのみにエフェクト処理が行えるPINコネクト機能も用意されています。このPINコネクトとMS処理を組み合わせて使用すると、MS非対応のエフェクトでもステレオ信号をMID(CENTER)とSIDEに分解し、それぞれを個別に調整できるMS対応のエフェクトとして使用できるのはほかのDAWでは見ないユニークな機能だと思います。

マルチティンバー音源として使えるSampleTank 4 SEがバンドル

ほかにも数多くの新機能、改良機能があるのですが、ABILITY 3.0 Proにおける目玉機能といえるのが、IK MultimediaのSampleTank 4 SEおよびAmpliTube METALが搭載された、という点です。ご存知の通り、SampleTank 4 SEは多目的に使えるプレイバックサンプラーであり、約2,000種類ものインストゥルメント、30GB以上ものライブラリーを持つマルチ音源です。ダウンロードには結構な時間がかかりそうですが、これがあれば、かなりパワフルに使えそうですよね。

一方、AmpliTube METALはアンプ&エフェクト・モデリングソフトであるAmiliTube 4のメタル系サウンドをまとめたもの。 Mesa/BoogieのTriple Rectifier、Peaveyの5150、MarshallのJMP100……といったサウンドを忠実に再現するモデリングアンプなので、ギタリストであれば、すぐに実践に使えると思うし、ギターが弾けない人でも、ソフトウェア音源でギターを鳴らした上で、AmpliTubeに掛ければ、メタルサウンドを得ることができるので、音作りの幅も大きく広がりそうです。

AmpliTube METALもバンドル

このSampleTank 4 SEをbeatcloud.jpで購入すると17,810円(税込)、AmiliTube 4 METALは11,870円ですから、この2つだけで3万円超の製品が入手できるというわけですから、すぐに元がとれそうですよ。

ちなみに、ABILITY 2.5 ProにバンドルされていたGuitar Rig 5 Player、KOMPLETE ELEMENTESは今回バンドルされていません。もっとも従来のABILITY 2.5 Proからアップグレードした方なら、そのまま使い続けることができ、ここにIK Multimediaのこれら2つのソフトが追加されるので、かなりお得感のあるバージョンアップといえそうです。

ここまで紹介した機能を中心に、ABILITY 3.0の新機能をまとめた動画もUPされているので、こちらのビデオも参考になると思います。

なお、7月16日、ネット放送番組のDTMステーションPlus!第133回において、このABILITY 3.0を特集します。実際どんな機能が搭載され、どんなことができるようになったのか、ギタリストの小川悦司さん、インターネットの社長、村上昇さんをゲストにお招きして放送するので、ぜひご覧ください。

【関連情報】
ABILITY 3.0製品情報

【第133回 DTMステーションPlus!】
2019年7月16日(火) 20:30~22:30

【価格チェック&購入】
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※クロスアップグレードの条件について 
乗り換え元のDAW等の権利を捨てる必要はなく、使い続けることが可能です。

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1件のコメント
  • 魚の目

    >DTMステーションPlus!第133回において、このABILITY 3.0を特集します。

    個人的には新装備のCHORD PADが気になります。
    コレを使ってバシバシコード進行を組み立てられるといいなぁ。

    2019年7月13日 1:43 PM

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