DTMステーションでもこれまで何度か取り上げてきた、ドイツ・ベルリンのDAW、Bitwig Studioに弟分ともいえるバージョン、Bitwig Studio 16-Trackが誕生しました。名前からも想像できる通り、最大16トラックまで扱える形で上限が設けられたバージョンですが、ほかのDAWとはちょっと制作スタイルが違う、機動性の高さは上位版と同様です。
気になる値段は、15,700円程度(税抜)と手ごろで、このBitwig Studio 16-Trackに3GB、1,000以上のサウンドが含まれているので、単純にライブラリとして買ってもお釣りがくるほどの内容です。このBitwig Studio 16-TrackとはどんなDAWなのか、紹介してみましょう。
今回、発表されたBitwig Studio 16-Trackは、世界中で一斉にパッケージ販売されるDAW。価格は安いけれど、初心者向けのDAWというよりは、気軽にサクっと音楽制作をするための新感覚のDAWという感じのもの。だから、いまCubaseを使っているとか、Studio OneやLogic Pro、Digital Performer、Ability Pro……といったDAWを使っている人も、「DAWを乗り換える」というのではなく、「制作用の新しいツールをちょっと追加してみる」といった感じで使えるDAWなんです。
Bitwig Studioの低価格版、Bitwig Studio 16-Trackがリリース
つまり、現在慣れ親しんでいるDAWはそのまま使いつつ、制作アイディアを膨らませたり、曲作りの最初のキッカケをつかむためなどに、Bitwig Studio 16-Trackを利用するとともに、ある程度ができたところからは普段のDAWにプロジェクトを移行させて、続きを作っていく、という考え方です。
トラック数が16と制限されているが、基本的な機能はほぼそのまま踏襲
以前、BITWIGのCEO、Placidus Schelberd(プラシダス・シェルバート)さんにお会いした際、「これまで、さまざまなDAWがありましたが、どれも昔ながらのMIDIシーケンサや、マルチトラックレコーダーの域を超えず、古い考え方に凝り固まっていたように思います。そうした殻を破り、ミュージシャンがもっと楽しく、気軽に音楽制作できるツールを作りたい、とBitwig Studioを開発したんです。だから私たちはBitwig StudioをDAWではなく、ミュージック・クリエーション・ソフトウェアと呼んでいるんですよ」と話していたのが印象的でした。
以前、NAMMでお話させていただいたときのBITWIG CEOのPlacidus Schelbertさん
一般的なDAWでは、実際に音が出るようになるまで、それなりの準備が必要となりますが、Bitwig Studioは起動すれば、すぐに演奏でき、曲作りに入れるというのも大きな特徴。もちろん、この点は今回登場した、Bitwig Studio 16-Trackも同様です。
オーディオループの1つの音の音程を変更するといったことも簡単
たとえば、オーディオとMIDIが非常に近い関係にあるのも、ほかのDAWとちょっと違うところだなと感じます。オーディオトラックにループ素材を張り付けると、クリップという単位で扱われるのですが、そのクリップは自動的にスライスされると同時に、1つの音の音程を変えるとか、その長さを8分音符から16分音符にする……なんてことが、まるでMIDIのように簡単にできてしまうんです。
MIDIトラックの一部をオーディオ化するといったこともできる
反対にMIDIトラック(インストゥルメントトラック)において、ある部分を同じトラック内でオーディオ化してしまう、なんてことも可能です。確かにMIDIデータであれば、音程を変えるとか、タイミングを変えるのには便利ですが、オーディオ化すればエフェクトをかけるとか、フェード処理を変えるとか、MIDIでは不可能なことがいろいろできるため、従来のMIDIの概念を大きく超えることができるのです。
この辺については、以前「ウニョウニョ動く新世代DAW、Bitwig Studio 2が発売開始」という記事でも紹介したことがあるので、参照してみてください。
BitWig Studio独特なModulartion Systemも利用可能
また、その記事にもあったBitwig Studioが2になった際の目玉機能がModulation Systemというものでした。これは、まさにBitwig Studio独特の機能で、たとえばLFOとかエンベロープ、またピッチモジュレーションとかXYパッド…といったパラメータを元に、エフェクトやソフト音源の各パラメータをコントロールするというもの。そう、オートメーションでコントロールするのとは違い、独立したLFOなどがさまざまなパラメータをコントロールできるので、かなり面白いことができるのです。こうした機能も、Bitwig Studio 16-Trackに搭載されているのです。
ただし、Bitwig Studio 3で搭載されたシンセサイザを構築していく、The Gridという機能についてはBitwig Studio 16-Trackには搭載されていません。また、標準搭載されているエフェクトや音源の数はBitwig Studioと比較すると少し減っているようです。その違いをまとめたものが以下の表です。
Bitwig Studio 16-Track | Bitwig Studio | |
オーディオ/MIDIトラック | 16 | 無制限 |
エフェクトトラック | 2 | 無制限 |
グループトラック | 2 | 無制限 |
VSTプラグイン | 無制限 | 無制限(マルチ出力、サイドチェインにも対応) |
オーディオ書き出し | 16bit | 16,24,32bit |
同時オーディオ入出力 | 4in/8out | 無制限 |
タイムストレッチ・アルゴリズム | Stretch, Stretch HD, Slice, Repitch |
Stretch, Stretch HD, Slice, Repitch, Cyclic, Elastique, Elastique Solo, Elastique Eco, Elastique Pro |
標準搭載音源、エフェクト等 | 67 | 90 |
標準搭載モジュラー | 15 | 33 |
フラグシップ音源・エフェクト | Polysynth, Sampler | Polysynth, Sampler, Phase-4, Amp, Vocoder |
The Grid | 非対応 | 対応 |
サウンドコンテンツ | Bitwig Essential Collection |
Bitwig Essential, Extended, Partner & Artist Collections |
その他 | - | マルチディスプレイ対応、マルチプロジェクト、マルチサンプルエディター、マルチサンプルエディター、スライシング、レイヤード編集、リモートコントロール・エディター、フルプロジェクトテンプレート |
冒頭で紹介した通り、曲制作におけるキッカケを作り出すツールとしては、Bitwig Studio 16-Trackで十分かもしれません。まずはこれを使って、これまでにない曲作りを試してみて、もし気に入って物足りなくなるようなことがあれば、あとからBitwig Studioへアップグレードするというのも手ですから。
シンセ機能については、一般的なDAWと比較してかなり自由度高く活用できる
Bitwig StudioとBitwig Studio 16-Trackの差額程度でアップグレードすることができますから、まずは、ここからスタートしてみるのは手だと思います。
ちなみに、Bitwig StudioもBitwig Studio 16-Trackも、ほかのDAWとちょっと違ったユニークなライセンス方式をとっています。それは購入してから12か月の間にバージョンアップがあった場合、そのバージョンアップの恩恵を受けることが可能であるということ。いわゆるサブスクリプションではないので、購入すれば、ずっと使い続けることができるのはもちろんなので心配は不要ですよ。12か月経過後、さらにバージョンアップが必要であれば、たとえ数か月とか数年の間が空いたとしても、また12か月分のライセンスを購入すると12か月間は常に最新のバージョンを入手でき、その後それを使い続けられるという方式になっています。
Bitwig Studio 16-Trackはパッケージでの販売となる
そんなBitwig Studioの世界をより手軽な価格で利用できるBitwig Studio 16-Trackがリリースされたので、この機会に試してみてはいかがでしょうか?
【関連情報】
Bitwig Studio 16-Track製品情報
Bitwig Studio 16-Trackプレスリリース
Bitwig Studio 16-Track発売記念キャンペーン情報
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