オンラインサロンはコロナ禍のミュージシャンを救う手立てになるのか?会員制の配信サービスを始める宮田’レフティ’リョウさんに聞いてみた

このコロナ禍において、ミュージシャンはどう生き延びていくべきなのか、みんなさまざまな模索をしている最中です。そうした中、オンラインサロンという新しい手法を提案し、そんなサービスをスタートさせた方がいます。あいみょんMISIACHEMISTRYE-girls……さまざまなアーティストの作品に作詞・作曲・編曲という形で参加する一方、Official髭男dismのサポートメンバーとして各地のライブに飛び回ったり、マニピュレーター、キーボーディスト、ギタリスト、そしてベーシストとしても活動するマルチプレイヤーで音楽プロデューサーの宮田’レフティ’リョウ@LeftyMonsterP)さんです。近年は頻繁にスウェーデンに行ってco-writingというスタイルでの音楽制作を行うなど、ユニークな活動を行うミュージシャンとしても知られています。

以前はレフティーモンスターPという名前でVOCALOID楽曲の制作をしていた時代もあるので、ボカロPとしてご存知の方も少なくないでしょう。その宮田’レフティ’リョウさんが、有料会員制のオンラインサロンを始めるという話を聞き、先日、取材に行ってきました。聞いてみると、とてもアイディアに富んだ発想であり、これまでありそうで、なかった新しい音楽ビジネスなのでは……と思える内容だったのです。多くのミュージシャン、クリエイターにとってもヒントになりそうなことがいっぱいで、これが成功すれば、今後、オンラインサロンをスタートさせるミュージシャンも増えていきそうです。そのオンラインサロンとはどんなものなのか紹介してみましょう。

会員制のオンラインサロンをスタートさせる宮田’レフティ’リョウさん

 

--今ライブ活動が難しい状況ですが、やはりレフティさんにも影響はありますか?
レフティ:僕の場合、曲を作る仕事も多いので、ライブ活動が中心の方と比較すると、そこまで酷くはないかもしれません。とはいえ、僕自身、アーティストサポートやライブ仕事も結構あるので、このコロナ禍においてライブが中止・延期になり、音楽をアウトプットする場所がなくなっています。担当しているアーティストが配信ライブを始めたりして、少しづつ仕事も戻ってきてはいますが、どうしても配信ライブはリアルのライブに及ばないと思ってしまうんです。もちろん、ライブ配信にはライブ配信のよさがあり、続ける意味はあります。ですが、安易にライブ配信するだけでなく、音楽エンターテインメントの新しい形をみんなで考えなければならない時期に来てると思うんです。

アウトプットする機会がないのが辛いと話すレフティさん

-音楽エンターテインメントの新しい形ですか……。
レフティ:僕は、スウェーデン人や日本人と一緒に曲を作る、co-writeということをよく行っています。この共同での曲作りは、すごくクリエティブで、すごく即興性があって楽しいのですが、実は、曲を作っていること自体にすごくエンターテインメント性があるのでは、と感じていたんです。これって本当はもっと外に出していくべきことなのでは?と以前から思い続けいました。そうした中、オンラインサロンって、ちょうどこれを実現するのにいい手法なのではないか、と思いついたのです。

ーーオンラインサロンって、何かヒントになるものがあったのですか?
レフティ:キングコングの西野亮廣さんが運営している会員制コミュニケーションサロンの「エンタメ研究所」だったり、SCRAMBLESの松隈ケンタさんがやっている「スクランブルミュージックサロン!!」などです。僕は顔出しをしていないので、オンラインサロン特有のクローズド感がちょうどいいなと思ったんです。実際に西野さんや松隈さんのオンラインサロンの会員になって体験している中で、そのインタラクティブ性にもひかれ、この中だったらかなり突っ込んだことができそうと感じたのです。

レフティさんはオンラインサロンに大きな可能性を感じたという

--レフティさんが感じた「曲を作っていること自体にすごくエンターテインメント性がある」という話をもう少し詳しく教えてもらえますか?
レフティ:僕が創作活動において1番好きな時間は、曲を完成させて、でき立ての楽曲を再生する時です。その瞬間、間違いなく僕は世界で最初のリスナーとなれるからです。共作者がいるとその感動はなおさらですし、楽曲の捉え方が全然違うんです。その過程において仲間とのドラマがあって、曲が完成するまでのストーリーを共有していることで思い出はより色鮮やかになります。でも、これはあくまでクリエイターにしか感じ得ないことだというのを残念だなと思ったり、もったいないなと思っていたのです。そこでオンラインサロンのようなクローズドな空間だったら、この感動をサロンメンバーとともに味わえるのではないか、と考えたのです。

--たとえば、YouTubeなどでオープンに広く配信していくという手もあると思いますが、なぜオンラインサロンにしたんですか?
レフティ:YouTubeはオープン過ぎて、秘密を共有している感がないんですよ。みんなのものになってしまったら、つまらないものになってしまう。秘密を共有しているクローズドの空間に意義があるな、と思ったからです。

曲を作り上げていく過程のすべてを見せて、会員と共有したいと話すレフティさん

--確かに同じ放送をするにしても、完全にオープンにするのと、会員制に絞ってその人たちとだけ秘密を共有できるのとでは見え方も大きく違いそうですね。
レフティ:そんなことを漠然と考えていたところ、コロナでライブができない状況になってしまったのです。みんないろいろな模索はしているけれど、自分にできることは何だろう……と考えたんです。オンラインライブをする人たちも多く出てきていますが、自分で演奏して歌って…というのはあまり現実的な感じはしませんでした。確かに仮歌を歌ったりはしますが、それを聴かせてお金をいただくクオリティではない……。自分1人でできることは限られていた中で、これならみんな楽しんでもらえるだろう、とタイミング的に点と点が繋がって立ち上げに至りました。さらに自分の作品作りもここにつなげて、0から完成までの感動をみんなで共有していきたいと思っています。

 

そんなインタビューに答えてくれたレフティさん。7月18日に、オンラインサロン「CO-MUSICATION ROOM」のスタートを公式に発表するとともに、クラウドファンディングサイトのCAMPFIRE(キャンプファイヤー)でサロンメンバーの募集を開始しています。CO-MUSICATION ROOMとはCO- + MUSIC + COMMUNICATION=「共に音楽で通じ合う」という意味を込めた造語とのこと。その概要は以下のようになっています。

 

【オンラインサロン会費】
月額1,800円(税込)

【参加特典】
・非公開のSNSグループにご招待
・最低月2回以上の作曲生配信(会員限定のLIVE動画配信、アーカイブ閲覧可能)
・月1回のDTM、作詞作曲などをテーマとしたウェビナーを開催。
(そのほか、以下のような企画も検討中)
・デモ音源、パラデータなどの配布
・宮田’レフティ’リョウとのオンライン交流会、アルバム編成会議
・アルバムの先行配信、ダウンロード権
・オフライン交流イベント(不定期)…(イベント参加費が別途発生することがあります)
・ゲストメンバーを加えたco-writingセッション(不定期)

【オンラインサロンメンバー募集ページ(CAMPFIRE)】
https://camp-fire.jp/projects/view/299166

 

月額2,000円の会費でどれだけのメンバーが集まるのか、実際にビジネスとして成り立つのか、まさに実験的な試みだけに、その成否が気になるところですが、もう一つ気になったのは、なぜサロンメンバーの募集をクラウドファンディングサイトで行っているのかという点。これについて、レフティさんは「持続型クラウドファンディングと呼ぶようですが、いわゆるクラウドファンディングとは違うものですね。僕がCampfireを利用したのは、月額性のサービスに対しての決済手段として活用できることと、広報・宣伝としての機能も期待できるからです。その辺も含め、実際に運営しながら見極めていこうと思っています」と説明してくれました。

Campfireでオンラインサロン「CO-MUSICATION ROOM」のメンバーを募集

レフティさんのサイトを見ると、莫大な数の作品を、数多くのアーティストに提供しているのが分かりますが、実は自身の宮田’レフティ’リョウ名義のアルバムを出したことがないのだとか…。

「以前織田哲郎さんが、『人へ提供する曲は納期が決まってるから、いくらでも書けるけど、自分の作品は3年経っても、4年経ってもできない』と話していたのを聞いて、まさにそれ、と思いました。今回、オンラインサロンをスタートするにあたり、自分名義のアルバムを作ることを宣言しました。そしてオンラインサロン上でアルバム制作の様子を公開していく予定なんです。これによって、サロンメンバーのみなさんの監視下に自らを置くことで、完成させることができるはずだと思っています(笑)」とレフティさん。

Cubaseの横にはオンライン配信機材であるBlackmagicのATEM mini proが置かれている

ちょうど、1か月前に新たなスタジオに引っ越したばかりのレフティさん。この新しいスタジオからオンラインサロンの配信を行うとのこと。スタジオを見るとさまざまな楽器、レコーディング機材に加え、ATEM mini proやGO PROなど配信のための機材も着々と揃えていました。

スタジオ内にはリモコンで角度を変えられるGO Proなどが設置されている

また、このオンラインサロンの発表と同じタイミングでREVEL MUSICという音楽クリエイターチームの旗揚げも発表しています。

「オンラインサロンは、視聴者参加型でさまざまなトライをしていきたいと思っていますが、このREVEL MUSICのメンバーにもこのスタジオに来てもらって、アルバム制作に参加してもらうとともに、実際の制作過程を公開していく予定です」とレフティさん。いろいろと面白い展開が期待できそうです。

この日はドラムも叩いてくれたレフティさんだが、オンラインサロンにはさまざまなミュージシャンが参加する予定

実は、この新しいスタジオに引っ越す少し前の今年2月、レフティさんの前のスタジオにお伺いして、インタビューをさせてもらったことがありました。海外でのco-writeなどの話を伺っていたのですが、すごく面白く、あまりにも情報がいっぱいすぎて、どうまとめようか……と思っていた中、このオンラインサロンの話を聞いたのです。そこで、変わったパターンではありますが、本日、co-writeに関するインタビュー記事「グラミー賞を目指して、スウェーデンに!? 世界トップクラスのミュージシャンが集まるストックホルムでco-writeをする意義」も同時に公開したので、ぜひ、そちらも合わせてご覧ください。

※2020.07.29追記
2020.07.28に放送した「DTMステーションPlus!」から、第156回「待望のメジャーアップデート!Studio One 5」のプレトーク部分です。「オンラインサロンはコロナ禍のミュージシャンを救う手立てになるのか?会員制の配信サービスを始める宮田’レフティ’リョウさんに聞いてみた」から再生されます。ぜひご覧ください!

【関連情報】
宮田’レフティ’リョウ presents CO-MUSICATION ROOM(オンラインサロン情報)
宮田’レフティ’リョウ OFFICIAL SITE
REVEL MUSIC – レベルミュージック

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グラミー賞を目指して、スウェーデンに!? 世界トップクラスのミュージシャンが集まるストックホルムでco-writeをする意義