トルコのソフトシンセ、SynthMaster2がスゴイぞ!

トルコのソフトシンセのメーカー、KV331 AUDIOが開発した「SynthMaster2」というのをご存じですか?最近、よくGoogle Adsenseの広告で見かけるので、ちょっと気になっていたのですが、先日、フランス在住のミュージシャン、生福の生方ノリタカ@ubieman)さんからSynthMaster2についてメールをいただいたのです。そう、「怪物ソフトシンセ、SynthMaster2というのがあるけど、使ってみませんか?」と。

生方さん、現在SynthMaster2の音作りなどを行っているそうで、評価版を入手できるからライセンスを送っていただけるとのこと。それはもう2つ返事でお願いしたわけです。さっそくWindows8上のSONAR X2にインストールして使ってみたところ、これがメチャメチャにマニアックな音源だったのです。その後、生方さんにも何度かメールのやりとりをしながら、インタビューしてみたので、その内容も合わせて紹介してみましょう。
SONAR X2上で起動させたKV331 AUDIOのSynthMaster2


まずSynthMaster2、どんどんと進化しているようで、先月入手したときには、Ver2.5だったのが現在は2.6になっています。今回はSONAR X2で使いましたが、もちろんWindows、Macどちらでも利用可能で、64bit版もネイティブサーポート。VST、RTAS、AudioUnitsのそれぞれのプラグイン環境で動かすことができますから、Cubaseでも、ProToolsでもStudioOneでもなんでもOKですね。

どんどんアップデートされていて、3月22日現在、Ver2.6になっている 

起動してみるとシックでシンプルなデザイン。この画面はSkinで自由に変更できるみたいですね。よく見てみるとLayer1、Layer2という2重構造になっていて、1つのレイヤーのアルゴリズムが画面左上に表示されています。
ルゴリズムにあるモジュールをクリックしてみると、いろいろと選択できる模様…
デフォルトの状態では、オシレータ1の音のみが出ているようですが、並んでいるモジュールをクリックすると、何だかいろいろ選択できるようで、かなりマニアックな匂いがしてきます。生方さんからは「私の作ったサウンドバンクのデモを聴いていただければ、分かると思います。またオーディオデモもあるので、聴いてみてください」とのこと。

それが、以下のサウンドです。(※追記)いずれのデモ音源ともマスタリングのリミッター以外外部エフェクト一切使っていないとのことですよ。



確かにスゴそうな音源ですね!生方さんの作ったほかのデモや、ほかのミュージシャンが作ったものもあるようなので、興味のある方は、SoundCloud上のデモサイトを見に行ってみてください。聴くと欲しくなってしまうので、要注意ですけどね(笑)。

オシレータをAdditiveにすると、8つのオシレータをミックスする形になる

こちらは、オシレータをVectorという設定にしたときの画面

続いて、画面左下のオシレータを見てみると、デフォルトで「Basic」というタイプになっていてノコギリ波が設定されています。しかし、「Additive」を選ぶと、8つのオシレータをミックスする形になり、「Vector」を選ぶと4つのオシレータをベクトル演算?で掛け合わせるようになるなど、いろいろな設定を選べます。

オシレータの波形として往年の名機の音が膨大に入っている

しかも、それぞれのオシレータにはサイン波、三角波、パルス波などが選べるのは当たり前として、Single Cycle Waveformsというのを選べます。そう、このメニューを見てみてくださいよ。Moog、Prophet、Korg、Fairlight、Oddysey、Oberheim、Roland、Yamaha……とメーカー名が並んでいて、さらに選択すれば、MinimoogやJUNO-60、Polysix、CS30……と往年の名機がズラズラと並んでいるんです。

「わぁ、何だこれ!!」と驚いてしまいました。そう名機の音源を片っ端からサンプリングして取り込んでいるんですよね。また、使えるのは、組み込まれている音源にとどまりません。SFZファイル(SoundFontの発展形といえばいいんですかね?)に対応しているから、いくらでも自由に追加して使うことができるんです。

フィルターも9種類から選択できるほか、アナログ、デジタルの選択も可能

さらに右上のフィルターセクションでは、ローパス、ハイパス、バンドパス、ローシェルブ……と9種類が選択でき、グラフィカルな画面で自在に設定でき、その下のエンベロープでも、さまざまな設定が可能です。
画面右下にあるエンベロープの画面

さらにMatrixでは、どの出力をどのモジュールに掛け合わせるかなど、自由自在というか、何でもありの構造になっている、まさにモンスターシンセ。シンセ好きにとってはたまらない音源ですね。
説明しているとキリがなくなりそうなので、生方さんにメールインタビューした内容を以下に載せておきますね。

--生方さんがKV331 AUDIOと出会ったキッカケはどんなことだったのですか?

生方:FacebookでKV331 AUDIOのCEOから突然、友達リクエストをもらい、音作りを依頼されました。私がArturiaのために作った音色を聴いて、私に自社製品のプリセット制作を依頼しようと考えたそうです。当時はまだArturiaに参加する前で、フリーだったので、即行で引き受けましたよ。

生方ノリタカさん(生方さんのTwitterのプロフィール写真より) 

--SynthMaster2における生方さんの役割は?
生方:サウンドデザイナー+開発アドバイザー+デモオーディオ制作です。時々宣伝の手助けもしていますね。

--生方さんご自身でもSynthMaster2を使っているんですよね?実際どんな利用法なのですか?

生方:私は目下、これ以外のソフトシンセ使う必要がないくらい重宝してます。そういうとちょっと大げさかもしれないし、FM8なんかは使っていますが、実際のところ、音楽制作の7割以上をSynthMaster2で行うようになりました。

膨大なプリセットが用意されている。中に「Noritaka Ubukata」の名前も 

--膨大なプリセットがあって、これを鳴らしているだけでも楽しいのですが、おすすめのプリセット音色があれば、いくつかピックアップして、コメントいただけませんか?
生方:万人におすすめできるプリセット音色は存在しないというのが持論です。すみません。

--Factory($99.00)、Standard($129.00)、Everything($279.00)と3つのグレードがありますが、おすすめはどれですか?
生方:かなり音色の作り込みができて、自分の作るジャンルが絞り込まれているなら、Standard。オペレーションはほとんどしない、あらゆるジャンルに対応したい人にはEverythingですね。Factoryは相当使える人じゃないと、プリセットが限られますよ。

--そのほか、SynthMaster2について何かコメントがあれば、お願いします。
生方:OSCはモデリング発振ではなく、一波長ループですが、高音域でエイリアシングノイズがほとんど出ないのが素晴らしいです。SynthMaster2はGUIがそっけないほど無愛想ですが、これ、少しでも動作を軽くし、オーディオエンジンにパワーを与えるためのようです。オーディオクオリティを4段階選べますが、エイリアシング回避、特にサンプルベース(SFZ)の音色を使うときは最低でもgoodにして下さいね。

--ありがとうございました!ぜひ、もっといろいろと使ってみます。
【関連サイト】
KV331 AUDIOのWebサイト
SynthMasterのデモサウンド(Sound Cloud)

【ダウンロード&購入】
◎SONICWIRE ⇒ SYNTHMASTER (FACTORY)
◎SONICWIRE ⇒ SYNTHMASTER (Everything Bundle)