これによってギターを演奏したサウンドをMobile PODを通した上で、そのままGarageBandやMultitrack DAW、Auria、Cubasis……といったDAWや録音ソフトにレコーディングすることが可能になったのです。最近、Audiobus対応のアプリも急速に増えてきていますので、改めてAudiobus対応でどんなことが可能になったのかを考えてみたいと思います。
ご存知のとおり、iOSは基本的にはシングルタスクのOSですから、WindowsやMacのように、複数のアプリをウィンドウ表示させて、同時に使うということはできません。でもiOSもiOS4以降、バックグラウンドで動作させることが可能になっており、そうすることでマルチタスク動作が可能になるのです。
そのマルチタスクを利用した上で、アプリケーション間でオーディオの接続をしてしまおうというのがAudiobusなのです。Appleが規格したものではなく、Audiobus Pty Ltdという会社が作った機能ではありますが、3月にはGarageBandまでが対応したので、事実上Apple公認のシステムといえると思います。数えてみたところ7月12日現在対応しているアプリはなんと174種類。ソフトシンセ、エフェクター、DAW、シーケンサ、レコーディングソフト……とDTM系アプリの数多くが対応しており、デファクトスタンダードになったといっていいと思います。
Audiobusでは入力、エフェクト、出力の3つのモジュールを接続して活用するのですが、Mobile PODはどれに入るのでしょうか?直感的にはエフェクトに入るように思いますが、実は入力用のアプリとなっているんですね。というのもMobile PODは先日紹介したSonic PortやMobile Inなどのオーディオインターフェイスとセットで利用し、ギターからの入力にアンプシミュレータやエフェクトで加工して出力するというものであるため、Audiobusにおいては入力に相当するわけです。
この音にさらにエフェクトをかけるという必要はあまりなさそうなので、出力にGarageBandを接続してみたところ、バッチリ録音することができました。ここでは予めGarageBand側でリズムトラックを作成しておき、2トラック目にMobile PODの音をレコーディングしていきました。
普通のGarageBandでの操作との違いは、新規トラックの作成をGarageBandで行うのではない、という点。これはMobile PODの右側に小さく表示されるAudiobusのレコーディングボタンをタップすると、Mobile PODの画面を見ながらレコーディングができるようになっているのです。
Mobile PODの右に現れるAudiobusのRECボタンを押してレコーディング
レコーディング終了後、GarageBandの画面を見ると、しっかりMobile PODのアイコンのトラックができて、そこにレコーディングされています。
試しに、私が愛用しているMultiTrack DAWで試してみたところ、こちらも同様の操作でレコーディングしていくことができました。
このように、Audiobusを利用することで、音をデジタルのままDAWへレコーディングしていくことができるため、音質劣化のない非常に高品位なサウンドでのレコーディングができるわけです。これは非常に大きなポイントですよね。
ところで今回のMobile PODにはもうひとつ大きな強化ポイントがあります。それはバックグランドでの動作が可能になたっということ。iOSの設定メニューでMobile PODの項目にアクセスすると、ここに「バックグラウンドオーディオ」という項目があるので、これをオンにすることにより、Mobile PODから別のアプリに切り替えても、そのままバックグランドでMobile PODを使い続けることが可能になるのです。
ただし、Audio Bufferサイズを小さくするとマシンの負荷が大きくなってきまうという相関関係があります。したがって、AudioBusを使って多くのアプリケーションを接続するような場合、Audio Bufferサイズはやや大き目にしておいたほうがよさそうですね。もちろん、iPadやiPhoneの世代によってCPUパワーが異なってくるので、音が途切れるなどの問題が生じたときは少し大きめな値を設定してみてください。
なお、記事中で紹介したオーディオインターフェイス、Sonic Portの国内での発売は7月末が予定されています。価格はオープンで実売予想価格は11,970円前後となっています。