そのポケット・ミク、単体でも十分に楽しむことができますが、PCと接続すると、可能性は大きく広がります。そして、続々と登場している「Webアプリ」というものを利用することで、想像もしなかった面白いことがいろいろできるのですが、その存在を知らない人も少なくないでしょう。DTMの経験がまったくない人でも簡単に使える、Webアプリについて紹介してみたいと思います。
しかしMIDIシステムエクスクルーシブを使うのは、多くの人にとっては難しく、分かる人でも、これで1曲歌わせるのは苦労すると思います。でも、学研の大人の科学のサイトにある「ポケミクアプリ01[Preset]」を利用することで、歌詞を簡単に送ることができます。
でも、ここでふと浮かぶ疑問が「ポケミクアプリ01ということは02とか03があるの?」ということ。また「Chromeでのおまじないはどんな意味を持っているの?」というのも気になるところ。その疑問を大人の科学編集部にぶつけてみたところ「ポケミクアプリの開発はヤマハさんに依頼しているので、直接ヤマハさんに聞いてもらったほうが詳しく教えてもらえるはず」とのこと。さっそく開発担当者に連絡をとって、お会いしたところ、面白い情報をいろいろ伺うことができました。
「これまでWebアプリから直接ポケット・ミクなどの外部MIDI機器へ直接アクセスすることができなかったのですが、2月21日にリリースされたChrome バージョン33からWeb MIDI APIが実装されたため、これを利用しています。ただし、Chromeの初期状態ではWeb MIDI APIが無効となっているため、有効にする設定が必要になるのです。現在、このポケミクアプリが利用できるのはChromeだけですが、近い将来Firefoxなどでも利用可能になるのでは……と思っています」と河合さん。
そう、先ほどの「おまじない」とはWeb MIDI API機能をオンにするためのもの「chrome://flags/#enable-web-midi」をアドレスバーに入力後、「Web MIDI APIを有効にする」の欄にある「有効にする」をクリックし、Chromeを再起動すること。一度設定してしまえば、PCの電源を落としても、有効の状態は保持されます。
そして気になる02以降ですが、すでに「ポケミクアプリ02[Realtime]」の開発は終えており間もなく公開予定とのこと。これは画面に表示される文字盤にマウスオーバーするだけで、その文字がポケット・ミクに送られ、発音できるというもの。まさにリアルタイムに歌わせることができるツールなのです。
右手でマウス操作、左手でポケット・ミクのカーボンキーボードの操作をする、といった形になり、思い通りに演奏するのには、結構練習が必要な気がしますが、これはなかなか楽しそうです。より、扱いやすくするために文字盤の位置を自由に配置できる「じゆうちょう」というものも用意されているのも便利そうです。
なぜポケミクアプリ03でなく00なのかを確認したところ、「設定はどう遊ぶかを創造する原点」ということで00としたそうです。
簡単に紹介するとtext-inputは、ポケミクアプリ01に近いもので、歌詞をNSX-1に送るというもの。歌詞を送った後、画面上のキーボードをマウスでクリックすると歌わせることが可能なほか、USB-MIDIキーボードを接続して、そちらから演奏することも可能になっています。
single-track-dawは、1トラックのピアノロール型シーケンサ。ちょうどVOCALOID Editorのような感じでデータ入力をして歌わせることが可能になります。
さらにkodamaはPCのマイクに向かってしゃべると、その言葉を認識して画面に表示され、その言葉をNSX-1がしゃべってくれるというもの。これはGoogleの音声認識技術を使っているとのことですが、なかなかの認識性能で、ちょっと面白いですよ。
「この3つのWebアプリは、ソフトウェア開発プロジェクトのための共有ウェブサービス、GitHub上で公開しています。というのは、これらのアプリで多くの人に楽しんでもらえるようにする一方、プログラムがわかる人のためにこの3つをオープンソースとして公開しているのです。single-track-dawのソースコードを改良してマルチトラック化してくれる人が現れてくれたらいいな…なんて思っているところです」と多田さんは説明してくれました。
まずVoice LayerはUSB-MIDIキーボードを弾くと、複数のMIDIチャンネルで同時に音が鳴らせるというもの。ちょうどシンセサイザのパフォーマンスモードのような感覚でポケット・ミクの歌声とユニゾンでピアノ、ストリングス、ブラスを同時に鳴らすといったことが可能。もちろん、最大16ch同時が可能で、もちろん各チャンネルのオン/オフ設定、音色設定も自在にできます。
またStandard MIDI File Playerは文字通り、スタンダードMIDIファイルのプレイヤー。画面には、各チャンネルに流れるMIDI信号がリアルタイムに表示されるので、これもなかなか面白いですよ。
今後、こうしたWebアプリはどんどん登場してきそうですが、これらを利用することで、ポケット・ミクの機能を120%どころか300%でも500%でも引き出すことができると思います。どれも簡単に使えるものばかりですからで、ぜひ活用してみてはいかがでしょうか?