3,000万円のピアノを忠実に再現するRavenscroft 275
内藤:Ravenscroft Model 275は、Ravenscroftというアメリカメーカーのグランドピアノです。このモデルは完全受注生産で世界最高のピアノに数えられています。綿密な設計と厳格な基準にしたがってアリゾナ州で生産されていて、部品素材はすべて厳選された最高品質なもののみ使用されているので、その価格は最低3000万円からです。275という数字はピアノのサイズで、一般的なコンサートグランドピアノの大きさと同じですね。でも、このピアノから出る音は、今どきの定番ピアノのうまみを全部持っているとされていて、他と音が全然違うんです。言うならばFazioliの低音、Steinwayの中域、C7の明るさ……といった感じの響きを持っているため、結果的にどのピアノとも似ていない独特なサウンドをしています。
FOMIS Soundwares LABの内藤朗さんにお話しを伺った
内藤:はい。Ravenscroft Model 275をマルチマイクでサンプリングした音源となっています。鍵盤を押す強さを何段階にも分けレコーディングを行い、ベロシティゼロの鍵盤をスッと落とした音=ノイズまでも録音しています。さすがにベロシティゼロは再現しても分かりずらいところではありますが、そこまでこだわった精巧な音源なんです。また最高品質のピアノをサンプリングしたということだけではなく、ソフトウェア音源としても高いクオリティを誇っています。たとえば、4つのマイクポジションから自由にマイクを選択してミックスすることができたり、ダンパーペダルを踏んだときの弾いた鍵盤の音が他の弦に共鳴した音を調整するシンパセティックレゾナンス機能が装備されています。ほかにもチューニングといった調律やピアノのタッチ感を好みにカスタマイズできるのも大きな特徴です。これらの機能に無駄なパラメータはなく、プリセットも用意されているので簡単にいいサウンドを楽曲に活かすことができるんです。もちろん、自分の楽曲上で最適な状態のピアノを鳴らすために作り込むことだって可能です。
--そうなると、サンプリングデータの容量もかなり大きくなるのではないですか?
内藤:そうですね。実際の容量はサンプリングデータ35GBにもなります。ただし、これをロスレス圧縮で約1/7の5GBに抑えています。容量は大きめではありますが、それだけ音のいい音源なんです。最近は劇伴作家さんなどに好まれて密かなブームになっているようです。存在感が他のピアノよりもあるので、アメリカのジャズミュージシャンもよく使ってるみたいですよ。といっても、こればかりは実際に音を聴いてもらう他ないので、ぜひ音を聴いてもらいたいですね。
内藤:いい音質の音源が手元にいくつかあると取捨選択することができ、表現の幅も広がると思います。Ravenscroft 275は他の音源と特徴が違うので、一つの選択肢として持っておく価値は十分にあると思います。ちなみに、このRavenscroft 275のiOS版がUVIからリリースされています。これも同じサンプリングデータ、同じUVIエンジンを使ったものですが、マイク1つのサンプリングデータであること、またやや間引いているところもあるようで、PC版とは少し違いがありますが、Ravenscroft 275がどんなピアノ音源なのか十分に確認することはできると思います。
FOMISのアドバイザーとして、先日インタビューしたUVIの富田家維さんが参加している
内藤:StrategyはAcousticSamples社のエレキギター音源で、このメーカー自体その名の通りアコースティック楽器に特化したフランスのメーカーです。洗練されたスクリプトを駆使して、アコースティック楽器をリアルに演奏できることに特化しています。Strategyはコード認識、パターン演奏、ポジショニングなど色んなスクリプトが組まれていて、演奏方法も実際のギターと同じ左手で音程、右手で発音という作りになっています。また、ソングビルダーという機能があり、ルートキーとパターンを事前に組んでおくことで、鍵盤演奏でギターをかき鳴らしながら色々なコード進行を探りながら曲をつくることができます。
--鍵盤演奏でギターをかき鳴らすというのは、どういう感じなんでしょう?
内藤:たとえばギターも鍵盤もあまり得意ではないボーカリストが、左手の指1本で音を選び、右手の指1本で弦をつま弾くような感覚でコードを弾いて、鼻歌でメロディーを作っていく……。誰でも簡単にそんな弾き方を可能にしてくれるユニークなギター音源なんです。なお、AcousticSamplesも8月31日までセールを行っているので、ぜひチェックしてみてください。
DTMの何でも屋としてのサポート業務もこなすFOMIS
本題の音源の話とは少しズレますが、FOMISの主要事業の一つ「音楽教育事業」の一環としてユーザー個別に対応するサポート業務も行っています。DTMにおいて何か困ったことがあるときに、どのメーカーの製品であっても、親身に相談に乗ってくれるとのことなので、いざというときに頼ってみるのもよさそうです。
内藤:作業中に何らかのトラブルが発生した場合、一般的な会社の業務時間外である時がほとんどです。また作曲を趣味にされている方でも、トラブルが発生するのは夜であったり、休日のことが多いかと思います。それらを考慮して、弊社取扱製品に関してはサポート業務時間を特に設けず、対応できる人間がフレキシブルに対応できる体制をとっています。また、現在はDAW、音源、コントローラー、オーディオインターフェイスと無数の製品が流通し、その組み合わせは千差万別で、個々の組み合わせや環境に対応しようとすると膨大なコストと労力がかかってしまうのも事実です。ですが、FOMISでは他の事業として展開している楽曲の制作事業や専門学校、音楽教室などの総合コンサルティング事業の経験を活かして、販売専業ではなく、サポート重視の業務形態をとっています。環境構築や機材セットアップも事業として行っていますので、何か困ったことがあれば一度お気軽にご相談ください。有料サポートは弊社音楽教室(FOMIS Mu-Tech LAB)の1レッスンと同額の8000円/50分より承っております。また、別途お見積りが必要となりますが、スタジオなどを借りての出張サポートも可能です。
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