Alesis(アレシス)というと、みなさんはどんな製品イメージを持ちますか?人によってデジタルレコーダーのADATを思い浮かべる方や、Quadrasynthなどのシンセを思い浮かべる方、またiPadやiPhone用のオーディオインターフェイスや、USB接続のMIDIキーボードをが頭に浮かぶ方もいると思います。でも、いまAlesisは電子ドラムの世界で、飛躍的に伸びており、数多くの製品を展開しているってご存知でしたか?

RolandのV-DrumsやYAMAHAのDTX、そしてATVのaDrumsなどの国産の電子ドラムメーカーがいる中、Alesisは低価格帯のNITRO KIT(ナイトロ・キット)やBURST KIT(バースト・キット)、手ごろな価格ながらすべてメッシュ・ドラムヘッドを採用したCRIMSON MESH KIT(クリムゾン・メッシュ・キット)、さらには超高性能で多機能なSTRIKE KIT(ストライク・キット)など豊富なラインナップでシェアを伸ばしてきているのです。先日、そのAlesisの電子ドラムの企画・開発を行うとともに、グローバルセールスも担当するティム・ルート(Tim Root)さんが来日したので、Alesisが何を狙っているのか、日本メーカーとどう戦おうとしているのかなど、いろいろと話を伺ってみました。


先日来日した、Alesisのドラム&パーカッションのディレクター兼セールスマネジャーのティム・ルートさん

今回来日したティムさん、実は以前は頻繁に来日し、浜松に通っていたのだとか……。そう、2年前まではRolandに15年間も在籍し、V-Drumsに携わっていたそうです。インタビュー中も、クセで「われわれ、Rolandの製品は……」と言っちゃうので、大笑いしてしまいましたが、ドラマーでもあるティムさんご自身、電子ドラムに携わって40年になるとのこと。Rolandの前には、あのSimmonsにいたそうですから、もう電子ドラムの生き字引みたいな方ですね。


電子ドラムの世界に40年も携わっているというティム・ルートさん

ご存じの方も多いと思いますが、現在AlesisはAKAIやM-Audio、Numark、DENON Professional、marantz professionalなどのブランドを抱える米inMusicのブランドの一つ。そのためAlesisという会社が存在するわけではなく、会社的にはinMusicの一部門という位置づけ。そのinMusicに2015年に転職したティムさんに、話を聞いていきます。

--Alesis製品、ADATやコントローラも含め、私の手元にもいくつか古い製品がありますが、いつごろからドラム製品を展開しているのですか?
ティム:Alesis自体は1984年にスタートしており、その当初からドラムマシンやパーカッション系の機材を出してきています。ただ、現在展開しているような電子ドラムは2010年にスタートしており、私が入社する前から、数多くの製品ラインナップがありました。オーナーからは、その電子ドラムを世界一のブランドにしたいという熱意と、そのためのドラム開発・販売のチームを作ってほしい要望をもらい、2年前に参加しました。そして現在、全員が本物のドラマーから構成される、最強のドラムチームができています。Alesisのビジョンは「ドラマーとして、ドラマーのための、本物のドラムを作ること」なんです。そのためのドラムチームをワールドワイドで展開しています。

--とはいえ、RolandのV-DrumsやYAMAHAのDTX、さらにはATVもaDrumsを出すなど、強力な競合がたくさんある中、どう戦っていくのですか?
ティム:私は、すべての競合をリスペクトしています。もちろん、それぞれにいい点があり、いい製品を出していると思います。でも我々としては、それに負けない特徴ある製品展開を考えています。現在は、エントリーモデルのNITRO KITが爆発的に売れています。日本での価格は税込みで4万円弱という値段ながらも、キックペダルまで必要なものすべてがそろっているのが特徴。クラシックなサウンドから現代のリズムサウンドまで網羅する、385のドラム&パーカッションサウンド、40のドラムキットを搭載し、電源を入れればすぐにプレイできる手軽さが世界中で受け入れられています。数の上では、マーケットですでにNo.1となっており、これからさらにシェアを伸ばしていくと考えています。


世界的に爆発的なヒット商品となっている4万円弱のNITRO KIT

--確かに4万円でこれだけのものが買えてしまうのは、すごいですね。
ティム:もちろんNITRO KITはAlesisが展開する電子ドラムの一面にすぎません。ミッドレンジモデルとして1月初旬に発売予定のCRIMSON II KITは、メッシュパッドを採用した強力なドラムキットです。現在特許出願中のこのメッシュパッドとして、8"キックパッド、12"デュアルゾーン・スネアパッド、2つの8"デュアルゾーン・タムパッド、10"デュアルゾーン・フロアタムパッドを採用していて、自然な打感と優れた静音性を誇るキットとなっています。それにも関わらず、日本での販売価格も税込みで10万円に抑えているので、競合製品と比較しても圧倒的なコストパフォーマンスが得られると確信しています。



実売109,800円でオールメッシュパッドのCRIMSON II KIT


CRIMSON II KITで採用されている現在特許出願中のメッシュパッド

--なるほど、すべてメッシュパッドで10万円以下というのは驚きですね。さらにその上のモデルがあるんですよね?
ティム:今回、ぜひDTMステーションの読者のみなさんに見ていただきたいのが、このSTRIKE KITです。現在Alesisの最高峰モデルに位置づけられるこのSTRIKE KITは、プロフェッショナル用途のモデルとして開発してきたものです。6ピースメッシュヘッドと5つのシンバルを採用したハイエンド製品ですが、現在世界中からすごい数の注文をいただいており、生産が追い付いていない状況なんです。モデルとしてはフラグシップのSTRIKE PRO KITと標準モデルのSTRIKE KITがあり、それぞれ日本国内価格が税込みで298,000円、228,000円となっています。ここにあるのがSTRIKE PRO KITなのですが、まずはこの雰囲気をご覧ください。



--いかにも生ドラムという感じの、迫力のあるなかなかいい音ですね。
ティム:もちろん、この生ドラムの音はSTRIKEが持つ音の1つにすぎません。AlesisはinMusicとしてAKAIとも一緒になったことで、MPCで培ってきたエレクトリックドラムのサウンドも持てるようになりました。さらにドラマーが優れた生ドラムの音だけではなくメロディックなサウンドもプレイできるようにするというのもSPIKEの狙いの一つでもあるんです。ちょっと演奏してみるので、ご覧ください。

 

--同じハイハットを叩きながらも、いろいろな音程が鳴って演奏できるのが、なかなか不思議にも思います。これはベロシティーによって音程が変わるようになっているのですか?そうだとすると、叩く強さで音程を操ることになり、簡単にはいかないようにも思いますが……。
ティム:いろいろな方法がありますが、ここではスケールに合う形において、ランダムにさまざまなサンプルが出るように仕組んであります。ドラマーがもっとクリエイティブな演奏をできるようにと、さまざまな工夫を凝らしているのです。この音源モジュールの中にはデフォルトで140,000音色ものサンプリング音が収録されています。これを各パッドごとにベロシティー127段階x 256ポジションもの割り当てが可能になっているのです。


STRIKE KITの音源モジュール


リアパネルにはステレオ出力はもちろん各信号がパラで出力できる

--音源モジュールのリアパネルを見ると、たくさんの出力がありますが、これはパッドごとにパラ出しができるということですか?
ティム:その通りです。他社製品でもパラ出しが可能なモジュールはありますが、それらは価格的にもずっと高くなってしまいますが、STRIKEはこの価格帯で実現しているのです。パラ出しができれば、それぞれに別のエフェクトを掛けたり、個別に録音して、後でDAW側でミックスできるなど、応用範囲が大きく広がりますからね。しかも、STRIKEはサンプラーとしての機能も装備しているんですよ。


STRIKEの音源モジュールで直接サンプリングが可能

--サンプラーですか?
ティム:そう、STRIKEの音源モジュールの外部入力端子にオーディオ素材を入力することで、それをサンプリングすることが可能であり、そのサンプリングした音を、各パッドに割り当てることができるようになっています。しかも、サンプリングした音は音源ユニットの液晶ディスプレイに表示され、それをエディットしたり、ピークを見て自動でスライスするといったことも簡単にできるようになっているんです。


サンプリングした結果を液晶画面で波形エディットもできる

--USB端子を経由してMacと繋いでいますが、これは何をしているのですか?
ティム:これはWindowsやMacと接続して、さまざまなエディットをするためのSTRIKE EDITORというものです。非常にインテリジェントな機能を持っていて、PC内にあるWAVファイルをドサッといっぺんにドラッグ&ドロップで持ってくると、それぞれのWAV素材を自動的にアサインする機能なども持っています。1つずつ音を聴いて自分で割り振っていくのには途方もない時間がかかりますが、この機能を使えば非常に楽になります。このようにUSBで転送することもできるし、SDカードを使ってWAVデータをやりとりすることも可能です。まさにドラマーが自由に音作りをすることができる電子ドラムなのです。


USB接続でPCとの連携も可能

--DAWとの連携も可能ですか?
ティム:もちろんです。このUSB接続ではMIDI信号のやり取りも可能になっていますから、ドラムを叩いたものをDAWのMIDIトラックにリアルタムレコーディングしていくこともできるし、逆にMIDIトラックを再生して、STRIKEの音源モジュールを鳴らすことも可能です。これだけの自由度と高性能さを備えた製品は他にないと自負しています。ぜひ、多くの日本のユーザーのみなさんにも使っていただきたいと思っています。


ぜひ、多くの日本のユーザーにもAlesis製品を使ってもらいたいというティムさん

--ありがとうございました。

なお、ティムさんには、ほかにもいくつかの音色でデモ演奏してもらったので、以下にビデオを掲載しておきます。先ほどの2つのビデオも含め、これはPAを通してアンプから出てきた音をiPhoneで撮影したものです(マイクにはSHUREのMV88を使用)。そのため、パッドをスティックで叩く生音も入っていますが、その点も含めてどんな音なのか、どんな演奏感なのかが分かるのではないでしょうか?





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