モニター環境をレベルアップさせるAKGのハイエンドなモニターヘッドホン。上位モデルを4機種試してみた!

プロ御用達のマイクメーカーであり、ヘッドホンメーカーでもあるAKG(ドイツ語読み:アーカーゲー、英語読み:エーケージー)。世界中の音楽制作現場で長年定番となっている数多くマイクやヘッドホンの設計や製造を行ってきた老舗メーカーとして広く知られているわけですが、ヘッドホンだけを見ても低価格なエントリー製品から、高級機までいろいろ出しています。

前回は最高な音楽を作るための第一歩!AKGのエントリーモデルのモニターヘッドホンでミックスしよう」という記事でプロフェッショナル・ヘッドホンの開放型エントリーモデル3機種を紹介しましたが、2回目の今回は、開放型ハイエンドモデルの4機種をピックアップします。K701-Y3、K702-Y3、K712 PRO-Y3、K812-Y3はいずれもAKGを代表するヘッドホンとして人気のあるモデルのため、導入を考えているDTMユーザーも少なくないと思います。そこで、それぞれどんなヘッドホンで、何がどう違うのか、またどんな特徴があるのか、実際に聴いて試してみたので、見ていきましょう。

AKG開放型ハイエンドモデルのモニターヘッドホン、左からK812-Y3、K712 PRO-Y3、K702-Y3、K701-Y3


ミュージシャンや作曲家など、プロの人たちが愛用するAKGプロフェッショナル・ヘッドホンは、音楽制作において必要な要素をすべて搭載しています。低音域から高音域までのバランスのよさ、色付けの少ない音色など、リスニングヘッドホンのように気持ちよく音を聴くためのチューニングではなく、音源をそのまま再現することを重視。そのため、高音質で高解像度な音源を確認することができ、突き詰めた音作りを可能にします。

音楽制作に必須なモニターヘッドホン

また音楽制作時は、長時間の作業になることが多いので、装着感がいいのもポイント。モデルごとにイヤーパッドの素材や硬さ、側頭部への圧やヘッドバンドの調整具合……など、着け心地に違いがあるので、快適に作業するためにもチェックしましょう。

イヤーパッドもそれぞれ違うので、装着感もチェックしよう

モニターヘッドホンは使い続けていると、ケーブルが断線したり、イヤーパッドがへたったりしてしまうので、交換できるかどうかなど、メンテナンス面も重要です。価格の高いモデルは、ヘッドホンケーブルが複数付属していることが多いので問題になりにくいですが、ヘッドホンごとにそれぞれケーブル端子の規格があるので、交換の際はこういったところもチェックしておきます。

ケーブル端子の種類や付属本数など、メンテナンス面も確認する

現在ヒビノ株式会社取り扱いのAKGプロフェッショナル・ヘッドホンは、既存モデルにヒビノ独自の1年保証を加えた3年保証モデルとして販売されており、サポートも万全。サポートがしっかりしていると、購入したモニターヘッドホンを長く愛用することができるので、こういった面も確認しておきたいですね。

さて、今回ピックアップするモデルは以下のそれぞれ。

K701-Y3                  22,000円前後(税抜)
K702-Y3                  22,000円前後(税抜)
K712 PRO-Y3         34,000円前後(税抜)
K812-Y3                120,000円前後(税抜)

今回ピックアップしたモデルは、AKGの伝統的な円形のハウジングを持つ、上位機種の開放型(オープンエアー型)モニターヘッドホン。開放型モニターヘッドホンは、室内用ハイエンドモデルとして販売されることも多く、解像度や高音域のキレイさは抜群。ハウジング部分が密閉されていないため、構造上遮音性が低く音漏れしやすいという特徴がありますが、音漏れを気にしない環境では、高いポテンシャルを発揮します。音場が広く、圧迫感が少ないため、長時間の使用でも疲れにくく、音楽制作を快適に行うことができます。

K701-Y3

K701-Y3は、2009年に放映されたアニメ『けいおん!』で、登場キャラクターの秋山澪がK701を装着していたことから、大きな話題になったこともある開放型のモニターヘッドホン。これをきっかけにAKGを知ったという方も多いはず。デザインはかなり特徴的で、白のハウジングに高級感溢れるヘッドバンド、そしてベロア素材で肌触りのイヤーパッド、と武骨なデザインが多いモニターヘッドホンの中で、ひときわ目立つ存在となっています。

ひときわ目立つ存在のK701-Y3。見た目だけでなく、サウンドのクオリティも高い
このヘッドホンのスゴイところは、デザインだけでなく、音も優れているということ。リバーブ感や音の立体感を感じることができ、全体的に聴きごたえがあるサウンドに仕上がっています。解像度が高いのでミックス作業や作曲時などに活用できるのはもちろんのこと、リファレンスヘッドホンとして楽しむことも可能。再生周波数帯域は10Hz~39.8kHz。ケーブルを除いた重量は290g。K701-Y3については、以前「『けいおん!』で話題になったK701が復活!? AKGらしさを前面に出した開放型モニターヘッドホン、AKG K701-Y3とK240 STUDIO-Y3が発売」という記事でも、紹介しているのでぜひそちらもご覧ください。

K702-Y3

K702-Y3は、上位機種の中でもっともスタンダードなモニターヘッドホン。再生周波数帯域は10Hz~39.8kHz。ケーブルを除いた重量は290g。前回紹介したK612 PRO-Y3の上位モデルにあたり、K701-Y3とは双子のような存在。音は、バランスよく低音域から高音域まできれい出ており、K701-Y3と比べるとK702-Y3のほうがスッキリとした印象。音楽的にフラットで解像度が高く、開放型モニターヘッドホンの定番にふさわしいモデルに仕上がっている。K701-Y3よりもK702-Y3の方が、モニターヘッドホンらしい出音をしているが、どちらを選ぶかは好みの問題。ぜひ実際に試聴して、聴き比べしてみてくださいね。

伝統的な円形ハウジングを持つ、スタンダードなモニターヘッドホンK702-Y3

多くのAKGプロフェッショナル・ヘッドホンに採用されている、セルフアジャスト機構を採用しており、スムーズな付け外しが可能。イヤーパッドはベロア素材で感触がよく、装着時の側圧は、ほかのモデルと同じくらいでちょうどよく感じます。しっかりと装着できるので、エレキギターや電子ピアノを演奏する際にズレたりすることはなさそうです。

セルフアジャスト機構や感触のよいベロア素材のイヤーパッドを採用している

ヘッドホンケーブルは、3mストレートが付属。着脱式となっているため、簡単にリケーブルすることができます。ヘッドホン側の端子は、Mini-XLR端子を採用。プレイヤー側の端子は3.5mmステレオミニジャックとなっており、付属の6.3mm標準プラグへの変換を使って、オーディオインターフェイスなどと接続できます。

ヘッドホン側の端子は、Mini-XLR端子を採用している

K701-Y3との違いとして、音の傾向のほかに、ケーブルが着脱式かどうかが挙げられます。ケーブルが着脱式だと、簡単に好きなケーブルへ変更できるし、断線時にも即座に対応できます。ですが、端子が音質に悪い影響を与える可能性も否定できません。着脱式のモデルとそうでないモデルのメリットやデメリットはそれぞれ存在するので、どちらがいいかは難しいところ。とはいえ、故障したとしても、ヒビノ扱いのAKGプロフェッショナル・ヘッドホンは3年保証が付いているので、安心して使用することができますね。

K712 PRO-Y3 

K712 PRO-Y3は、オレンジ色のフレームとケーブルが特徴的なハイエンド開放型モニターヘッドホン。再生周波数帯域は10Hz~39.8kHz。ケーブルを除いた重量は298g。K701-Y3、K702-Y3の上位モデルにあたる存在で、このヘッドホンから出力されるサウンドはまさに秀逸。K712 PRO-Y3の音は、K701-Y3の低音域が豊かで心地よいサウンドと、K702-Y3の高音域のモニタリングが容易に行えるモニターヘッドホン的なサウンドが、バランスよく混ぜ合わさっています。K701-Y3とK702-Y3の強みがハイブリッドされたような音は、AKGらしい音場の広さを感じることができることはもちろんのこと、演奏者の存在も感じられるような出音で、全帯域を絶妙に出力し、音楽制作に楽しさと精密さをもたらします。

オレンジ色のフレームが特徴のK712 PRO-Y3

イヤーパッドは、表面がベロア素材なのは共通ですが、内部のクッションが低反発素材になっています。そのため、しっかり密着するので、安定感と快適さを感じることができます。ヘッドバンドは、おなじみのセルフアジャスト機構。自動的に長さを調整してくれるので、装着が楽です。

セルフアジャスト機構を採用しているため、装着するだけでヘッドバンドの長さが調整できる

ヘッドホンケーブルは、オレンジ色の3mストレートと黒色の5mカールコードが付属。ヘッドホン側の端子はMini-XLR端子で、プレイヤー側の端子は3.5mmステレオミニジャック。付属の6.3mm標準プラグへの変換を使えば、オーディオインターフェイスなどと接続も可能。またケーブルを簡単に着脱できるので、リケーブルも簡単です。

オレンジ色の3mストレートと黒色の5mカールコードを付属している

K812-Y3

K812-Y3は、AKG開放型モニターヘッドホンのフラグシップモデル。1つ下のK712 PRO-Y3との価格差は3倍以上で、10万円超えの高級ヘッドホンの分類に入るK812-Y3は、ほかのモデルと比べても別格な存在。再生周波数帯域は5Hz~54kHzで、ケーブルを除いた重量は398g。サウンドは、まず解像度が圧倒的に高く、なおかつ情報量が多くて、AKGらしい開放型の自然な音場の広さも感じることができます。奥行きや距離感を正確に判断することができ、定位感もよく、クリアなサウンドで、楽器の1つ1つの細かなニュアンスをモニタリング可能。このK812-Y3は、開放型モニターヘッドホンの最高到達点の1つともいえるクオリティに仕上がっていると思います。

AKG開放型モニターヘッドホンのフラグシップモデル K812-Y3

ヘッドバンドは、蒸れにくいメッシュ素材を採用。バンドの長さは、セルフアジャスト機構ではなく、11段階の段階式で調節できます。イヤーパッドは、耳を覆うアラウンドイヤータイプで、耳の周囲と接する面の形状を保持する3Dスローリテンション技術を採用しているとのこと。素材は、本革のような質感のレザーで高級感があります。重さがそこそこあるはずなのに、着け心地がいいので、長時間装着しても疲れません。

ヘッドバンドは11段階で細かく調節できる

ヘッドホンケーブルは、3mストレートを付属。着脱式の端子部分は、LEMOコネクターを採用しており、プレイヤー側の端子は3.5mmステレオミニジャック。6.3mm標準プラグへの変換も付属しています。

着脱式の端子部分は、信頼性の高いLEMOコネクターを採用

また、木製ヘッドホンスタンドが付属しており、使用しないときは飾って置いておくこともできます。結構しっかりしたスタンドでカッコいいですし、イヤーパッドの形状やヘッドバンドに変なクセを付けないよう置いておけるのは嬉しいところです。

K812-Y3には木製ヘッドホンスタンドが付属している

AKGプロフェッショナル・モニターヘッドホンの最新ラインナップを網羅的に紹介していく短期連載、最終回の次回は密閉型ヘッドホンであるK271 MKⅡ-Y3、K361-BT-Y3、K371-BT-Y3、K553 MKII-Y3、K872-Y3の5機種を取り上げる予定です。

【関連記事】
AKGプロフェッショナル・ヘッドホン全ラインナップ紹介記事
第1回 開放型エントリーモデル (K240 STUDIO-Y3 , K240 MKⅡ-Y3 , K612 PRO-Y3)
第2回 開放型ハイエンドモデル (K701-Y3 , K702-Y3 , K712 PRO-Y3 , K812-Y3) … 今回の記事
第3回 密閉型全モデル (K271 MKⅡ-Y3 , K361-BT-Y3 , K371-BT-Y3 , K553 MKII-Y3 , K872-Y3) … 7月上旬公開予定

【関連情報】
K701-Y3製品情報
K702-Y3製品情報
K712 PRO-Y3製品情報
K812-Y3製品情報
【関連動画】
AKGプロフェッショナル・ヘッドホン3年保証(-Y3)モデルの聴き比べ
~オープンエアー型編~
https://youtu.be/hvt0BMMOQyU
【取扱店】
K701-Y3店頭展示
K702-Y3店頭展示
K712 PRO-Y3店頭展示
K812-Y3店頭展示

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