初音ミクV3の発売から1か月。Macに対応したこともあり、これまでVOCALOIDを使ったことのなかった方でも試しに買ってみた……なんていう方も多いのではないでしょうか?5種類もの歌声ライブラリがある上に、DAWであるStudio One、そしてその上で動くVOCALOIDのエディタ機能であるPiapro Studioがセットで16,800円ですからね……。
今回は、そのStudio Oneの機能を大きく拡張し、VOCALOIDによる歌声を普通とはちょっと違った手法で調教するという方法について紹介してみたいと思います。ここで取り上げるのはドイツのCelemony Softwareというメーカーのソフト、Melodyne(メロダイン)。すでに12年もの歴史を持つソフトなので、ご存じの方も多いと思いますが、Studio Oneとの関係、さらにはSONAR X3との関係も含めてちょっと紹介してみたいと思います。
ボーカルをピアノロール表示し、エディット可能にするMelodyne。ケロ声作りも簡単にできる
MelodyneはWindows/Mac両対応のソフトで、オーディオからピッチを検出し、ピアノロール上に表示させて、MIDIのようなエディットを可能にするものです。具体的な利用シーンでいえば、ボーカルトラックをMedolyneに読み込ませると、ボーカルの音程や音長、ピッチの揺れ=ビブラートなどを検出し、エディットできるという、まさに夢のようなツールです。
本来、ボーカルがピッチを外したり、音の長さを間違えてしまったら、録り直しをするしかないのですが、録った音をあとから自在に修正できてしまうのですからね。もっとも、いまのレコーディングにおいては、そうした修正が当たり前になってしまっているのですが……。
日本ではRolandが同時期の2000年ごろからVariPharase、V-VOCALという技術、ソフトを開発してきており、お互いが正面からぶつかり合ってきました。ルーツは違うけれど、ユーザー視点でいえば、これと同じジャンルのソフトといっていいですよね。また業界標準ピッチ補正プラグインのAuto-Tuneも、近いジャンルのソフトですね。もともとAuto-Tuneはリアルタイム処理のピッチ補正ソフトでしたが、これのグラフィカルモードというのは、Melodyneに近いものになっていますからね。
これらのソフトに共通するのは、単にピッチ補正だけでなく、フォルマント=声質をいじることができるという点。Auto-TuneはPerfumeの独特な歌声作りに用いられているということで、有名になりましたが、Melodyneでも同様のことが可能です。
Melodyneはピッチ補正ソフトとしても幅広く使われている
生身のボーカルにかけることも可能ですが、初音ミクなどのVOCALOIDの歌声にかけることでも、なかなか面白い効果が出せますよ。いわゆるケロ声なんかが簡単にできてしまうのです。
VOCALOIDのGENパラメータをいじることでも、声質は変えられますが、Meldyneのフォルマントパラメータをいじることで、GENそれとは明らかに違う人工的なロボットボイス風にすることができるのです。反対に、もっと自然な歌声にしていくということもできますし、いじり甲斐はありますよ。
Melodyneをスタンドアロンで起動させ、DAWと行ったり来たりしながら、やりとりをすることも可能ですが、それだとなかなか作業効率が上がらないのも事実。VST、AU、RTAS、AAXの32bit/64bit双方のプラグイン環境に対応しているので、DAWと組み合わせる場合は、こうしたプラグインの形で使うのが効率的ですね。
Studio One起動時に「Melodyne統合をスタートしています」といったメッセージが…
しかし、Studio Oneを使う場合は、さらに有機的な連携ができるようになっているのです。そう、Studio Oneの一機能として完全に融合してしまうんですよ。
Studio One Artist Piapro EditionにMelodyneが完全に統合されてしまっている
「でも、初音ミクV3にバンドルされているStudio One Artist Piapro Editionの場合、使えるプラグインはPiaro Studioだけでしょ」と思われる方も多いと思います。でも、違うんですよ!確かに、利用できるVSTプラグインはクリプトン製のものだけですが、それとはまったく別なプラグインとしてARA(Audio Random Access)プラグインというものがあり、Studio Oneはこれをサポートしているため、Melodyneを1つの機能として組み込んでしまえるのです。
オーディオクリップを選択してメニュー表示させると「Meldyneで編集」という項目がある
Studio OneとMelodyneの双方がインストールされている環境で、オーディオクリップを選択し、コンテキストメニューを開くと「Melodyneで編集」というものが現れるので、これを選ぶと画面下側にMelodyeが登場し、ここで自由に編集できるようになるのです。
予めVOCALOIDによる声をオーディオトラックにバウンスしておく
VOCALOIDの歌声を編集する場合は、予め「ソング」メニューの「ミックスダウンをエクスポート」を選び、画面下のほうの「トラックにインポート」にチェックを入れておけば、VOCALOIDトラックをオーディオファイル化してから操作します。
VOCALOID上ではなく、あえてMelodyne上で音程を変えてみるのも面白い
実際試してみるとわかりますが、Piapro StudioやVOCALOID Editorでエディットするのと、一度オーディオ化したものをMelodyne上でエディットするのでは、やはり仕上がりのニュアンスは大きくことなってきます。ケロ声化するだけでなく、Melodyne側で音符の長さ/タイミングを変更したり、音量をいじってみるのも面白いですよ。
またあえてMelodyneでコーラスパートを作ってみるというのも、VOCALOIDで行うのとはちょっと違ったニュアンスになるので、試してみる価値もあると思います。
SONAR X3にもARAプラグインがサポートされ、Melodyneが有機的に統合されている
このARAプラグインをサポートしているDAWはまだ少ないのですが、なんとSONARの新バージョン、SONAR X3の上位バージョンであるSONAR X3 PRODUCERおよびSONAR X3 STUDIOにも搭載された模様です。これらにはMelodyneのエントリー版であるMelodyne Essentialが標準でバンドルされているようです。RolandによるとSONAR X3の日本語版は開発中のようですが、これがいつ、どのような形でアナウンスされるのか、まだ明らかにされていませんね。
ところで、Melodyneには
Melodyne Essential
Melodyne Assistant
Melodyne Editor 2
Melodyne Studio Bundle
という4つのラインナップがあり、機能にはいろいろ差があるようです。最大のポイントはMelodyne Editor 2およびMelodyne Studio BundleはDNA=Direct Note Accessという最新技術が搭載されており、ソロのサウンドだけでなく、さまざまな音が鳴っているサウンドを解析し、エディットできるという点。
DNA搭載のMelodyne Editor 2なら重なり合った音も解析することができる
以前、DNAについては「Melodyne Editor 2でThe Beatlesを遊び倒す!」という記事で面白いデモを紹介しているので、そちらも参照していただきたいのですが、いずれのバージョンも、ARAプラグインに対応しているので、Studio Oneの各バージョン、SONAR X3に組み込んで使うことができますので、試してみてはいかがでしょうか?
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