11年ぶりのメジャーバージョンアップとなったSampleTank3
現在でもSampleTankを使うファンは多いと思いますが、この11年の間に、2.0から2.5へとにアップデートしたとはいえ、やや時代遅れのソフトとなっていたのも事実です。その最大のポイントはSampleTank2が32bitのアプリーケーションであり、64bit対応していなかったことです。そのため、SampleTank3登場への期待が高まっていたわけですが、これでようやく64bit対応が実現したわけです。
SampleTank3はSampleTank2と同様、Windows、Macのハイブリッドとなっていますが、双方ともに32bit版はバッサリ捨てて64bit環境専用になったのも面白いところ。だからWindowsXPなどの32bitOS上では動きませんし、DAWのプラグインとして使う場合もDAW自体が64bit版でないと動作しないのは注意点ですね。またそのプラグイン環境としてはVST、AudioUnits、AAXのそれぞれの64bit版で動作するほか、DAWなしのスタンドアロンのアプリケーションとしても動作するようになっています。
今回、そのダウンロード版のWindows版を使ってみたので、まずはプログラム本体をダウンロードして、インストール。ここまでは、あっけないほど簡単に、短時間でできたのですが、これでは肝心のサンプリングデータがないために音が出ません。SampleTank2のデータを読み込んで再生させることができましたので、とりあえず過去資産が活用できることは確認できたのですが、データはどこかと思って探したら、プログラム本体とは別途ダウンロードするんですね。
さて、改めて起動してみると、左側には読み込んだサンプリングデータの一覧が表示されます。Acoustic Drums、Synth Bass、Piano、Organ、Strings、Brass……、と21カテゴリがあり、その中を覗くとさらに階層が分かれ、計4,000種類以上の音色がはいっているそうです。
とりあえず、GrandPiano1というのを読み込んでみると、SSDのドライブだからか3、4秒で読み込んでくれるのですが、これだけで1.17GBもあるんですね!このスピードにも驚きましたが弾いてみると、かなりリアルな音が出ますね。ピアノだけでも、この値段の価値は十分あるのではないでしょうか…。
続いて2chにバイオリンを読み込んでみます。Stringsの中を見ると、ソロ、アンサンブル、ミックスオーケストラなどカテゴリが分かれるのですが、ソロにもアンサンブルにもバイオリン音色があり、アンサンブルも4バイオリン、11バイオリン、23バイオリンと3つの編成に分かれています。ここで11バイオリンを見てみると、さらに21種類ものバイオリン音色が入っているのですから、かなり選択肢がありますよね。
ここでは11 Violins Multiという音色を選んでみました。弾いてみると、かなりリアルなサウンドが出てきます。が、ここで、ちょっと気になったのが低音部分。黒と赤の鍵盤になっていて、おや?と思い、ここをクリックすると、ダイアログが表示されます。
そう、これアーティキュレーションになっており、C0を押すとサスティン、G0ならピッチカート、B0ならスタッカートといった具合に、異なる奏法での音を表現できるようになっているんですね。バイオリンやトランペットなど、奏法を変えると、違う音色になる楽器もあるので、その場合、いちいち音色自体を切り替えるのではなく、低い鍵盤をスイッチとして切り替えることで、奏法を切り替えることが可能になっているわけです。こうしたアーティキュレーション情報が入った音色は全体の中の一部ではありますが、表現力を広げる上で、非常に有効な手段ですよね。
※追記
「49鍵などの鍵盤を使っている際、C0やG0などの低いキーを押せないので、アーティキュレーション用のスイッチをトランスポーズする方法はないか?」という質問が来ていました。トランスポーズはないようですが、SampleTank3では、PCのキーボードを鍵盤として使えるので、そちらを低音設定にしておくと、これをスイッチにすることが可能です。
4,000種類もの音色が入っているので、これを選んで弾いているだけで楽しく、すぐに何時間も経ってしまいます。INFOというボタンを押すと、音色がイラスト表示され、シンセサイザの場合だと、何からサンプリングしたのかなど想像できるイラストが表示されるのも面白いところでした。
パターンとしてのMIDIデータも2,000種類以上収録されている
このようにSampleTank3はプレイバック型のサンプラーですから、基本的には4,000種類ある音色から好みの音色を選び出して、使う音源です。また最高16のマルチティンバーとなっているので、複数のMIDIチャンネルで同時に鳴らすことができるし、それぞれの出力をバラバラのオーディオトラックに戻すといったことも可能なのはSampleTank2と同様です。
とはいえ、SampleTank3もシンセサイザであり、もっと積極的な音色エディット、音色づくりも可能です。EDIT画面に切り替えると、フィルタ、LFO、エンベロープ……とさまざまなパラメータが並んでいるので、ここでかなり音を変えていくことも可能です。
またPARTのところでは、この音色が受けるMIDIチャンネルが設定できるほか、ゾーニングを設定することが可能です。先ほど、16マルチティンバーの音源であるといいましたが、PART1とPART2を同じMIDIチャンネルに設定すれば、レイヤーとして2つの音色を重ねることができるし、ゾーニングで分けていけば、スプリットも可能というわけなんですね。
さらに、その16あるパートのミキサーも備わっていて、ここでレイヤーのバランスをとったり、もちろん、各パートごとのバランスをとることもできるわけですが、ここには1パートごとに5つのインサーションエフェクトを設定することが可能です。これはVSTやAUのエフェクトというわけではなく、SampleTank3が独自に持っているエフェクトなんですが、これがまた優秀なんです。
ご存じのとおり、IK MultimediaはギターアンプシミュレータのAmiliTubeやアナログモデリングのマスタリングソフトT-RackSのメーカーでもあり、エフェクトは得意中の得意。そのIK Multimediaのエフェクトが55種類も搭載されており、自由に使うことができるのです。