ステップシーケンサ兼パッドコントローラのオールマイティーマシン、Trigger Finger Proの破壊力

M-Audioが6月に発売したTrigger Finger Proという製品をご存知ですか?私も、気になりつつも、今ひとつどんな機材なのか把握できていなかったのですが、実際に触ってみたらメチャメチャ面白い機材だったんですよ!MacやWindowsと接続すれば、ドラムマシン、シーケンサとして使うこともできるし、DAWと連携してコントローラ、パッドとしても使え、PCなしのスタンドアロンで動かしポケット・ミクなど外部MIDI機器のステップシーケンサにもなる……というなんでもありのスーパーマシン。

しかも、Arsenal(アーセナル)というTrigger Finger Proと連携させるためのソフトがバンドルされており、DAWなしに、これを介してVSTインストゥルメントAudioUnitsのソフトシンセを動かして鳴らすことができてしまうのです。一言では説明しきれない多彩な機能を持った4万円弱のこの機材について紹介してみたいと思います。


シーケンサであり、パッドであり、コントローラとしても使えるTriger Finger Pro



まず、このTrigger Finger Proを見てパッと目に入ってくるのは4×4のパッド。「AKAIのMPCみたいなものなの?」と感じる人もいると思いますが、それも半分正解。サンプリングデータを用いながら指でパッドを叩いてリズムを作っていくこともできるのですが、もっと幅広く、いろいろな使い方ができるのです。

一番シンプルな使い方は、これをPCとUSB接続し、ドラム音源やシンセを鳴らすというもの。通常、こうしたコントローラで音源を鳴らす場合には、DAWを起動してシンセを組み込んで……という方法をとりますが、Trigger Finger Proの場合、付属のArsenalというソフトを起動すれば、すぐに音を鳴らせるのです。


Triger Finger Pro専用のソフトArsenalはスタンドアロンで動作するプラグインホストでもある

といってもArsenal自身が音源ではなく、これがDAWのようなプラグインのホストの役割をしているのです。そして、予めサンプリングドラム音源であるAIR Drums、そしてアナログモデリングシンセとウェーブテーブルシンセを融合したHybrid 3という高性能なシンセサイザがバンドルされており、すぐに音が出せるようになっているのです。

付属のドラム音源、AIR Drums

DAWにシンセを組み込んで使うとなると、とくに初心者の場合、操作が分からなくて苦労するケースも多いと思いますが、Arsenalの場合、AIR DrumsとHybrid 3も同時にインストールされてセッティングされているし、基本的に起動後、音色を選べばすぐにTrigger Finger Proを叩いて演奏することができるので、簡単ですよ。


アナログとデジタルのハイブリッド音源であるHybrid 3 

そのAIR DrumsとHybrid 3には豊富な音色が入っているのですが、その一部を以下のSoundCloudデータで確認することができるので、興味のある方は聴いてみてください。

指ドラムという感じで叩いてみても、気持ちよく反応してくれ、ベロシティーの感知もいいですね。FIXEDボタンを押すと、わざとベロシティーを固定させて単調にさせることができるし、ROLLボタンを押すと、ルールプレイができるなど、叩いているだけで時間を忘れて楽しめてしまいますよ。


なかなか使いやすく、繊細なタッチ検出も可能なドラムパッド部分 

このAIR Drumsの追加音色ライブラリや2.5GB以上の最新のエレクトロニック・ミュージック・サウンドや、Prime Loopsによる5GB以上のパーカッション・サウンドなどもバンドルされているので、音のバリエーションも豊富です。


ArsenalにSynth1の64bit版を組み込んでみた

しかも、前述のとおりArsenalがプラグインのホストであるのも大きなポイント。そう、手持ちのソフトシンセがあれば、それを組み込んで使うことができるのです。たとえば、先日64bit版がリリースされて話題になっているフリー音源、Synth1を組み込んでみたところ、DAWなしに即、Trigger Finger Proで鳴らすことができました。もちろん、市販ソフト、オンラインソフトに限らず、なんでもいけそうですよ。

パッドを叩く場合、4バンクの切り替えになっていますが、これは要するにオクターブ切り替え(正確には16個ずつ、音程が上下する格好)になっており、これによってドラム以外の楽器でも演奏が可能になっています。またスケールという機能が用意されているので、C MajorとかE Minorなどを選ぶことで、楽器が弾けない人でも、適当にパッドを叩くだけで、それっぽい演奏にすることも可能ですよ。

このようにリアルタイムプレイが可能なわけですが、もちろんシーケンサでパターンを組んでいくことも可能です。ここでユニークなのはPCがシーケンサになるのではなく、Trigger Finger Pro自身がシーケンサであるという点です。シーケンスデータの組み方は大きく2種類。まずは、MPCのように16個のパッドを叩いてリアルタイムにレコーディングしていくという方法。単純にRECボタンを押せば、記録していけるので、簡単に気持ちよくフレーズを作っていくことができます。


TR-808などのように16ステップのステップシーケンサとして使いやすい構造になっている 

でも「リアルタイムプレイは苦手」という人も少なくないはず。そんな場合は手前に並ぶ16個のボタンを操作していくことで、ステップを組んでいくことができます。そう808や909といった昔ながらのドラムマシンでの組み方とまったく一緒。SEQモードにして、パッドで音色を選び、このボタンでパターンを組んでいくわけです。オンにするとLEDが点灯するのでわかりやすいですよ。リアルタイムレコーディングした結果を、ここで修正することもできるし、反対にステップで打ち込んだのち、リアルタイムで追加していくといった方法もできますね。


CubaseのプラグインとしてArsenalを動かし、そのプラグインとしてAIR Drumsが動いている

ここまでがTrigger Finger Proの基本的な使い方なのですが、できることの範囲はもっともっと広いのです。まずは先ほどから紹介しているArsenalはスタンドアロンのソフトであると同時に、VSTインストゥルメント、AudioUnitsで動作するプラグインとしても機能するのです。そのため、CubaseLogicSONARProToolsLiveDigitalPerfomerといったDAWで利用することができるし、それらで最適化されるようなプリセットメニューも用意されているんです。たとえば、Cubaseで使う場合は、「Stbg&Arsenal」というプリセットを読み込むだけでOKです。

プリセットの「Stbg&Arsenal」を選択すれば、Cubase上ですぐに使える
ちなみに、先ほど「Arsenalはプラグインのホストである」と解説しましたが、これはDAW上で使う場合も同様。やや妙な関係となりますが、DAWからArsenalに組み込んだプラグインは孫プラグインという形で見えるのです。もっとも、AIR DrumsもHybrid 3も普通のVSTインストゥルメントでありAudioUnitsのプラグインだから、別にArsenalを介すことなく直接DAWからアクセスすることは可能です。これらのプラグインの威力を考えると、ハード抜きにプラグインだけで十分、元が取れる価格だと思いますよ!

フェーダーがDAWで利用できるほか、DAWを操作するためのカーソルキーなども用意されている

なお、Trigger Finger Pro上のフェーダーやノブ、ボタン類はDAWのコントロールサーフェイスとしても利用することが可能です。しかもTrigger Finger ProはMackie ControlやHUIプロトコルに対応しているので、どのDAWでも即、フル活用できてしまいます。


DAW側の設定としてはMackie Controlを選択すれば、いろいろな使い方が可能になる 

さて、冒頭でも紹介したとおり、Trigger Finger Proはスタンドアロンのシーケンサとしても使えるというのもユニークなポイントです。PCと接続した場合はUSBからの電源供給となりますが、スタンドアロンで動かす場合は別売のACアダプタを使って動かすことができます。


リアパネルにはUSB端子のほかに、MIDI OUTも用意されている 

リアパネルを見ると、ここにはMIDI OUTがあるので、これを用いて外部のMIDI音源モジュールを鳴らせるわけです。最近はKORGのvolcaやArturiaのMICRO BRUTE、RolandのAIRAなど、いろいろなシンセサイザが登場し、どれもMIDIでコントロール可能になっていますから、これらを鳴らすためのシーケンサとしてTrigger Finger Proを使うことができるわけです。

使い方自体は、実はArsenalでの操作とまったく同じ。別の見方をすれば、Arsenal自体がMIDI音源の一つとして利用できた、ということなんですね。


MIDIインターフェイスiRig MIDI2を介してiPad上のiMPC Proと接続

また音源としてiPadやiPhoneを使ってしまうというのも一つの手。たとえば、先日紹介したAKAIのiMPC Proを接続してみたところ、とっても相性よく動かすことができました。ただし、この場合はiRig MIDI2のようなMIDIインターフェイスが必要になりますよ。

さて、ここで試したくなったのが、MIDI音源モジュールとしてポケット・ミクを利用できるか、という点。そうポケット・ミクの場合、MIDI入力端子がないので、Trigger Finger Proと直接接続することはできません。また、USBデバイスとしては、Triger Finger Proもポケット・ミクもともにクライアントの立場なので、双方をそのまま接続することはできないんですよね。

そこで思いついたのは、以前記事で紹介したiConnectMIDI4+を介在させるという方法です。iConnectMIDI4+にUSBハブを取り付けて、Trigger Finger Proとポケット・ミクの双方に接続してみたら、あっさり動いてくれましたよ。そう、これでポケット・ミクを歌わせることができたのです。電源自体もiConnectMIDI4+経由で供給することができるので、別売ACアダプタ不要で動作させることができますね。


iConnect MIDI4+を介することで、ポケット・ミクと連携させることもできた 

以上、Trigger Finger Proについて、本当に触りだけを紹介してみましたが、いかがでしたか?初めてトラックメイキングにチャレンジしたいという人でも、簡単に扱えるし、DAWを使いこなしている人にとっても、かなり多機能で便利に使えるデバイスだと思います。しかもAIR DrumsとHybrid 3という強力な音源もバンドルされて4万円以下で入手できるのですから、なかなか魅力的だと思います。

【製品情報】
Trigger Finger Pro製品情報

【価格チェック】
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