このHALion 6をさっそく試してみたところ、もうサンプラーという枠には収まらないすごい音源となっていました。アナログシンセ・エミュレータにもなるし、グラニュラーシンセにもなるし、ウェーブテーブルシンセにもなる上、リズムマシンになったり、波形を3次元表示しちゃう、トンでもない音源にも変身しちゃうんですね。実際、これがどんなものなのか、同時発売されたHALion Sonic 3(実売28,000円)やCubase付属のHALon Sonic SEとどう違うのかも含めて紹介してみたいと思います。
サンプラーっていう存在は、DTMをしている方ならたいていご存じだと思います。そう、実際の音をサンプリング=録音したデータを使って音を出すシンセサイザーのことであり、だからこそ、ホンモノとそっくりなリアルな音が出せるという音源です。
ただし、ちょっぴり混乱しやすいのが、サンプラーとプレイバックサンプラーの違いです。実際、同義で使っているケースも多いのですが、正確にいえばサンプラーというのは、音をサンプリングするところから、それを加工して音源として使うところまでのすべてができるツールであり、プレイバックサンプラーとはサンプラーで加工してできたデータを利用して音源として使うツールのことを意味しています。
そしてHALionはサンプラーであり、HALion Sonicはプレイバックサンプラーという位置づけで、そのHALion Sonicの機能限定版がCubase付属のHALion Sonic SE。基本的にHALion 6で作ったデータの利用はできるけれど、新たに作ることはできないというわけですね。詳細の違いはSteinbergサイトの「HALionシリーズ機能比較」のページにあるので、ご覧ください。
インストーラを起動すると、HALion 6とともにHALion Sonic 3、そして多くの音色ライブラリもインストールされる
スタンドアロンで起動すると、まずはMediabayでの音色選択画面が登場する
さて、このHALion 6を、まずはスタンドアロンで起動してみました。まずはMadiaBayというCubaseでお馴染みの音色選択画面が出てくるので、ここから楽器カテゴリーや音色の雰囲気などを指定しながら、目的の音色を探し出して読み込みます。ピアノ、ギター、ベース、ドラムといった音色から、バイオリン、トランペットなどのオーケストラ音色、シンセ系のさまざまな音色など、3,400音色以上(表示上は4905音色ありました)が入っており一通りなんでも揃っているようです。もちろん、SonicWireなどのサイトではサードパーティーによるHALion専用パッチも多数販売されているので、それらを入手して音源を増やしていくことは可能ですよ。
また、この音色の選び方で面白いのは、音源のタイプ?から選択する方法です。アイコンで、さまざまな種類の音源が表示されて、選べるようになっているのですが、たとえば、B-Boxというものを選ぶと215音色に絞られ、ここから適当に一つを選んでみると、なんとドラムマシンが現れるんですね。
ステップ入力可能なリズムマシンが登場してきて、ちょっとビックリ
プリセットでいくつかのパターンが入っているし、このステップシーケンサでリズムを打ち込むこともできます。もちろんパラメータを使って音色をいじることも可能ですよ。
またAnimaという音源タイプのものを選ぶと、ウェーブテーブルデータを3D表示させた画面が登場し、ここで音色をいじっていくことができるようになっています。
さらにVOLTAGEというものは、完全にアナログシンセ風になっていて、自在に音作りができるようになっているし、この中には、アルペジエータというかステップシーケンサ的なものがはいっていて、およそサンプラーという世界とは違う音色になっているんですよね。ほかにもオルガンシミュレータ音源やMelotron風音源など、いろいろあって、面白いですよ。
まあ、このように音色を選んで鳴らすだけなら、プレイバックサンプラーとしての使い方であり、基本的にHALion Sonic 3でも同様のことができるのですが、前述のとおり、サンプラーであるHALionではもっと抜本的なところからの音色づくりができるのが大きな特徴です。
たとえばHALion 6の新機能としてサンプリング機能を装備していますから、これで録音していくこともできるし、もちろん、すでにサンプリングされたデータを読み込んで加工していくこともできます。その上でトリミングをしたり、ループポイントを設定したりすることが可能になっています。
また、どのサンプリングデータを、どこのキーに置くのかといったマッピングもできるし、エンベロープを設定したり、LFOを設定し、フィルターを使って音色を作り上げていくなど、まさにシンセサイザーとしての音作りをゼロから行っていくことができるわけです。
の5つのエンジンが選択できるようになっており、これを選ぶことで、まったく違う音源に変身してくれるんですよね。ここで一つずつ解説しているとキリがないので、やめておきますが、HALion 6は、まさに何でもできるシンセサイザーに進化していたんですね。
GUIなどを自ら設計・デザイン・プログラムしていくこともできる
そのため、サンプラートラックのためにバージョンアップした方や、ほかのDAWからCubase 9に乗り換えたという方もかなりいるようですが、サンプラートラックも機能的な限界はあります。やはりサンプラートラックでは、基本的に1つのサンプリングデータをキーに割り当てていくものであり、レイヤーを組んでいくとか、より細かなエディットをして音色を作り上げていくというところまでの機能はありません。
でも、そんなとき、Cubase 9のサンプラートラックでの続きの作業をHALion 6に任せるということが可能になっているんです。Cubase側でボタンを押して、転送先をHALionを選べば、もうサンプラートラックの内容がそのままHALionに転送されて、使えるようになっているんですね。そして、エディットした結果を保存しておけば、その後HALionで利用することもできるし、HALion Sonicで利用することも可能なので、応用範囲はいろいろと広がりそうですよね。
このようにHALion 6は非常に強力なプラグイン型のサンプラーであり、さまざまなシンセサイザーエンジンを備えた音源で、VST、AudioUnits、AAXで利用可能なため、どんなDAWとも組み合わせが可能となっています。Cubase 9と組み合わせればCubase 9をさらに進化させられるという意味でも非常に魅力的な音源だと思います。
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