先日、東京大学のキャンパス内のホールで自作の電子楽器を持ち寄って発表するという、ちょっと変わったイベントが行われました。どれも完全オリジナルの楽器を個人(またはグループ)で開発し、ここでお披露目したり、それを使った演奏を行ったり……というユニークなイベントだったのです。

ソフトウェアならまだしも、ハードウェアとなれば、大手楽器メーカーが作るものと思っていたら大間違い!「量産すれば、そのまま世界中でヒット製品になるかも?」、「ちょっと高めな値段だって、買う人は多いはず!」というような機材も数多くあり、誰もがみんな驚くと思います。個人だからこそできる、逆にいえば大手楽器メーカーにはなかなか作れない電子楽器とはどんなものなのか、実演ビデオなども交えながら、その一部を紹介してみたいと思います。


会社の同僚4人が趣味で開発したという、トンでもない、MIDIコントローラー、CC-1
 
2月11日に「オトアソビ vol.2」というタイトルで開催された、このイベント。その名前からも分かるとおり、昨年8月に行われたものに続く2回目。「Maker Faire」など個人が自作する機材の展示発表が盛り上がる時代ですが、この「オトアソビ」は音系の機材のみにフォーカスを絞ったイベントです。事前に発表希望者を募ったうえで、それぞれが持ち時間15分で発表したり、デモ演奏するというスタイルとなっており、今回のプログラムでは10のプレゼンテーションがありました


2月11日、東京大学のホールで行われた「オトアソビ vol.2」 


私も、すべての作品を見ることができたわけではないのですが、この中からいくつかをピックアップしてみましょう。
 
まずは「発売すれば、ヨーロッパをはじめとする、世界中での大ヒット間違いなし!」と思われる、トンでもない機材から。WOSKという4人のメンバーで担当を分担した上で開発した「Custom Layout MIDI Controller CC-1」について、まずは以下のビデオをご覧ください。

 

お分かりいただけたでしょうか?これ、電子ブロックのように横12×縦6=72のマトリックス上にフェーダーやノブを、ボタンなどをユーザーが自由に並べると、それがオリジナルのMIDIのコントローラとして使えるという不思議な機材なのです。ビデオの中でもデモしてもらいましたが、ブロック型の部品は使用中であっても抜き差し可能で、別のものと入れ替えてもOKなのです。


抜き差し可能なノブやボタン 

このデモではNative InstrumentsTraktorにUSB接続して使用していますが、MIDIのコントロールチェンジが利用できるソフトなら何でも接続できるとのこと。この72のマトリックス上の端子にコントロールチェンジの0~71が割り当てられており、そこに当てはめたブロックが、その番号のコントロールチェンジのパラメータを動かすものとなっているのです。ソフトウェア的にパラメータのアサインをし直すこともできるので、自分だけのMIDIコントローラが簡単に作れてしまう、というわけなのです。


CC-1の開発を行ったメンバーのみんさん。左から渡邊さん、古賀さん、白木さん 

開発したチームのWOSKは、某メーカーの会社の同僚4人によるもので、名称はW=渡邊正和さん、O=岡村洋司さん、S=白木顕介さん、K=古賀弘隆さんの頭文字をとったもの。当日、岡村さんは参加できず3人によるプレゼンテーションとなっていましたが、回路設計、デザイン、ソフト、USB/MIDI周りと分担した上で、約3か月で開発してしまったそうです。自分たちではんだ付けして作ったものなので、ここにある数台しかなく、現在量産の予定はないそうですが、「欲しい!」と思う人はいっぱいいますよね。


基板上に8bit CPUを設置して作ったシンセサイザ&シーケンサ、「8bit CPU Step Synth」 

2つ目、akira matsuiさんによる「8bit CPU Step Synth」はアキバで1個300~400円で買える8bitのCPUひとつで、シーケンサ機能付きのアナログシンセ風音源を実現できるか?…ということにチャレンジした作品です。まずは、以下のビデオをご覧ください。



ボタンを押すとモードが切り替わり、4つのノブがシーケンサの音程の調整用になったり、フィルターのパラメータになったり、エンベロープジェネレータのパラメータになったりするのですが、かなり楽しそうですよね。


「8bit CPU Step Synth」 を開発したakira matsuiさん

シンセの仕様としてはVCO、VCF、VCA、LFO、EG(ADSR)装備で、10bit/48kHzでの音が出ているそうです。そのCPUにはC8051F330というものが使われているそうですが、オマケで搭載したオシロスコープのほうが、遥かに高価なんだとか……。ハードの設計からはんだ付け、プログラムまで、すべておひとりで作ったとのことでした。

次は、ぼやさんによる、vocalonという不思議な形状の楽器の演奏です。



ここでは事前に入力された歌詞を元に演奏しているのですが、実はこのキーボードをよく見ると黒鍵部分(黒のnanokEY2なのでグレーですが)に母音、白鍵部分(こっちが黒)に子音が割り当てられています。そう、リアルタイム発音のモードに切り替えると鍵盤で歌詞を指定しながら、歌わせることも可能にした、ボーカロイドマシンなのです。
※初出時、上記ビデオで歌詞のリアルタイム指定をしているような記述になっておりましたが、ビデオのものは普通に演奏しているものです。


プレゼンテーションでvocalonを演奏する、ぼやさん 

マシン制御にはRaspberryPiを用い、音源にはポケットミクから取り出した基板を利用。外でも演奏できるようにモバイルバッテリーを搭載した機材になっているそうです。以前、ヤマハでもVOCALOIDキーボードとして、リアルタイムに歌詞を指定して歌うキーボードをイベントで参考出品したことはありましたが、より使いやすいものを個人が開発して、実演してしまう時代なんですね……。これを上手に演奏するためには、それなりのテクニックを身に着ける必要はありそうですが、このvocalonが欲しい人もいっぱいいそうですよね。


トゥロシュの社長、奥山雄司さんとコケロミン・ネコ♪ 

一方、個人開発といっても、すでに量産して販売しているものもあります。有限会社トゥロッシュの社長、奥山雄司さんが開発した、カエルのパペットがケロケロと歌う電子楽器、ケロミンは私も何度か記事にしたことがあり、先日も週アスPlusの記事でROLLYさんと一緒に合奏したこともありましたが、そのケロミンの新型が発表されました。

 

その名も「コケロミン・ネコ♪」です。そうネコ型パペットで「ニャン、ニャン、ニャン」と歌う楽器です。「カエルではないのに、コケロミンなの?」と思ってしまいましたが、奥山さんによれば「今後、犬とか牛とか、別の動物に展開したときにネーミングが難しくなりそうなので、こうした」とのことですが、基本的な構造はコケロミンそのものであり、口の開き具合で音程を決め、後ろのスイッチを押して発音させる方式です。


口の開き具合によって音程が変わる仕組みは、ケロミンと同じ 

カエルはちょっと……という人でもネコなら欲しいという人も多そうですよね。すでに2月22日から発売を開始しており、品薄のようですが、税込み9,980円で入手できますよ。

そして最後に紹介するのは、以前にも「謎の黒い楽器、ウダーについて宇田道信さんに聞いてみた!」という記事で取り上げたことがあった、宇田道信さんによるウダーの演奏です。

 


宇田さんは、ポケットミクの回路・機構の設計者としても知られる人ですが、この不思議な楽器ウダーはぜひとも製品化してほしいですね。ウダーに関する詳細は以前の記事にあるので、ここでは割愛しますが、この演奏ビデオを見ても、やはり魅力的ですよね。


和服姿でウダーの演奏を披露してくれた、宇田道信さん 

以前あった学研の大人の科学で発売するという企画は、廃止になっていないけれど、現時点は停止中とのこと。ぜひ、なんらかの形で正式発売して欲しいですよね。

以上、「オトアソビ vol.2」でプレゼンテーションされた作品を5つほどピックアップしてみましたが、いかがだったでしょうか?どれも、素晴らしいものばかりでしたが、個人でこうしたものを開発するのは、やはり、多大な苦労があるのだと思います。いわゆるDTMとはちょっと違うものではありますが、DTMステーションとしては今後もこうした活動を応援していきたいと思っています。

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【関連サイト】
oto asobi -オトアソビ-
ケロミン