CT-S1000V Challenge受賞のKAEDE LAPINさんに聞く、音楽制作への向き合い方

昨年、CASIOが実施して、現在その第2弾の応募受付中のコンテスト、CT-S1000V Challenge。その1回目で最優秀賞を受賞したのが、現在ニューヨーク在住で、ジュリアード音楽院でジャズを学んでいる、というKAEDE LAPIN(カエデ・ラパン @kaede_lapin)さん。4月にアメリカ・アナハイムで開催されたNAMM Showの会場で、そのCT-S1000V Challengeの授賞式が行われ、ここでクリスタルトロフィーなどがKAEDE LAPINさんに授与されていました。

その翌日にCASIOブース内の特設スタジオで「江夏と藤本のオトトーク」の収録をしており、そのKAEDEさんをゲストにお招きして、いろいろ伺ってみました。一方で、その収録とは別に、KAEDEさんが音楽を始めたキッカケや、アメリカに留学することになった理由、さらにはKAEDEさんのDTM環境についてなど、いろいろインタビューしてみたので、紹介してみましょう。

NAMM Show会場にて、CASIOのシンセサイザ開発者、岩瀬広さんからトロフィーを手渡されるKAEDE LAPINさん

まずは、その江夏と藤本のオトトークの#48と#49でKAEDEさんをゲストにお招きしての回を公開しているので、そちらをご覧ください。

 

KAEDE LAPINさんインタビュー

--改めて、CT-S1000V Challengeの最優秀賞受賞おめでとうございます。KAEDEさんが音楽、楽器を始めたのはいつごろからだったんですか?
KAEDE:3歳からピアノとエレクトーンを習い始め、本当にそれ一本だったのですが、高校生のときに作曲を独学ではじめて、そのときにDTMを始めました。そのときに使ったのがProToolsだったので、今もずっとProToolsを使っています。その後、フェリス女学院大学の音楽学部に入学し、大学では音楽を学びながら、読者モデルなどをしながら楽しく大学生活をしていました。

--大学卒業後はプロを目指して活動…ということだったんですか?
KAEDE:その思いではありました。でもバイトをしながら音楽活動を始めてみると、どうすればいいのか分からなくなってしまい、音楽活動への意欲がなくなっちゃんったんです。さすがにこのままではダメだと、いったん音楽はやめて会社員になってみようと、保険会社に入社し働き始めました。まったく音楽に関係ない世界で仕事を始めたつもりだったんですが、なぜか常に音楽と隣り合わせだったんです。イベントなどがあると「KAEDEさん、キーボード弾けるんでしょ、演奏お願い!」っていうような感じで、会社員になったのに、いつも音楽とともに……。これは、きっとこれは音楽から離れちゃいけない、ってことなんだなと思い、2年で脱サラしました。それからは楽曲提供したり、楽曲プロデュースをする一方で、自分でも演奏活動をするスタイルでお仕事をするようになりました。

--とはいえ、音楽を仕事にするって、簡単なことではないですよね。うまく動き出すキッカケはあったんですか?
KAEDE:学生のころから、二人組のユニット、MAY’Sが大好きで、追っかけのように、しょっちゅうライブなどを見にいっていたんです。そうした中、お二人とも話ができるようになり、いろいろ相談などもさせていただき、とってもよくしていただいたんです。そんな中、MAY’Sがプロデュースしたミュージカルに出てみないか、ってお声がけいただきました。ピューロランドのミュージカルだったのですが、そこで演奏者として出たのがプロとしての活動のスタートでした。それから、MAY’Sの前座をやったり、インストアライブをやったり、さらには楽曲提供……と活動の幅を広げていきました。

--CT-S1000V Challengeでの応募曲はインストというかCT-S1000Vによる歌声合成でしたが、KAEDEさんご自身も歌うんですよね。
KAEDE:はい。もともと歌っていたので、アーティストとしても活動するし、楽曲プロデュースもします。自分においてはセルフプロデュースという形で、これまで2枚のアルバムを出してきました。でも、そうした活動をしていく中で、自分の実力不足を感じることが増えていったんです。作曲をするたび、演奏をするたび、悔しいな…と思うことが多くなり、根本的にもっと音楽を勉強しなくちゃいけない、って思うようになったんです。本来なら、日本で学びながら仕事ができればいいけれど、それだと絶対に自分の甘えが出てしまって、ちゃんと勉強ができないようにも思いました。そこで、環境を思い切り変えて、アメリカに行ってみようか、と。ジャズが好きなんで、ジャズを学びたかった。ジャズといえば、ニューヨークかニューオリンズ、ということでニューヨークのジュリアード音楽院に飛び込んじゃいました(笑)。

--ジュリアードって、世界トップのクラシックの音楽大学という印象がありますが、ジャズの学科もあるんですね。英語がもともと得意だったんですか?
KAEDE:そうみたいですね(笑)。何も分からないまま飛び込んだのですが、ジャズの学科に関しては比較的最近できたようですね。英語ができたわけではないんですが、行けばきっとなんとかなるだろう、と。だから音楽学校に通いつつ、語学学校も一緒に通って、音楽と英語の両方を勉強する毎日なんです。アメリカに来たのは昨年11月だったんですが、勉強の毎日で余裕もまったくなく、これまでニューヨークからまったく外に出たことがなかったんです。そんな中、たまたまCT-S1000V Challengeで受賞できたことで、初めてロス・アンジェルス、アナハイムに来ることができました!

--ところで、DAWはProToolsを使ってきたとのことですが、シンセサイザはCT-S1000V以前どんなものを使ってきたんですか?
KAEDE:YAMAHAのMOTIFを長い間つかっています。が、これを使って音作り…というところまでは、正直なところできていません。最近は単なるMIDI鍵盤として使っている感じです。だから音源としてはソフトシンセが中心になっていて、ピアノ系でいえばSpectrasonicsのKeyscapeがメインになっているほか、Native InstrumentsのKOMPLETEは持っているので、この中から、その時々によって気に入った音を探し出して使っている感じですね。一方で、サンプル素材、ループ素材としてはSpliceを多用してますね。

--ほかに、プラグインなどのツールはどんなものを使っているんですか?
KAEDE:やっぱりボーカル修正などにはMelodyneを使うし、AutoTuneを使うこともあります。一方で、ノイズ除去など音の修正にはiZotopeのRXを使ってます。ただ、ミックスとかマスタリングは、いまだによく分かってないんです……。やりたいことはいっぱいあるんですが、極めることができないというか、全部が中途半端になっているのがもどかしいところです。DAWも好きだし、シンセも好きだし、楽器も大好き。でも、何か、これは誰にも負けない、というものを作らなくっちゃと、焦っている面もあります。

--そんなKAEDEさんがCT-S1000Vを使うようになったキッカケはどんなことだったんですか?
KAEDE:たまたま知人が使っていて、これがすごく面白いって聞いたんです。ちょうどニューヨークに来たタイミングだったんですが、MOTIFを持ってくることもできなかったので、何か鍵盤があったらいいな…とも思っていたタイミングでした。調べてみると、エレクトーンとも似た感じで、レジストを組んで、セッションを作って、一人でできる楽器としてすごく面白そうと、アメリカのAmazonで購入しました。

--CT-S1000V、確かにカシオトーンなので、マルチ音源としても使えるし、演奏性も優れているわけですが、これの目玉機能であるボーカルシンセシスはどうでしたか?
KAEDE:VOCALOIDの存在はもちろん知っていましたが、これまで縁がなく、使ったことはありませんでした。でもなんとなく興味を持っていた中、CT-S1000Vを使ったら、鍵盤を普通に弾くことで、自分の声ではない不思議な声で歌わせることができる。そこがすごく面白いな、とビビっと来たんです。しかも、ボーカルシンセシス以外の音色も、すごく使えるものがいっぱいで、これをProToolsに録っていくだけで、どんどんイメージが広がっていくんです。そんな中、ネットでCT-S1000Vの情報を探していたら、CT-S1000V Challengeの募集をしているのを知って、ふと応募してみたのが、今回の曲でした。どうすると、うまく歌わせることができるんだろう…と手探りで作っていたから、数日かかってしまったけど、半分勢いで出してしまったので、これが入選するとは夢にも思っていませんでした。

--この先、どんな活動をしていくのですか?
KAEDE:まだニューヨークに来て半年ですが、夏には一時帰国して体制を整えようと思っています。学費を少し稼ぐ必要もあるので、ライブ活動などもできれば…と。でも、秋には再度ニューヨークに戻り、勉強を続けていきます。そのうえで、しっかり実力をつけて、音楽プロデュース、作曲とともにアーティスト活動をしていければ、と思っています。ぜひ、応援をお願いします。

--楽しみにしています。頑張ってください。ありがとうございました。

【関連情報】
CASIO CT-S1000V製品情報
CT-S1000V Challenge2情報
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【番組情報】
江夏と藤本のオトトーク・YouTube再生リスト

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