KORG iELECTRIBE for iPhoneの開発者である高橋和康さん(左)と岡本達也さん(右)
高橋:私が開発チームリーダーで、役割としては実装を含めたUIとデザインを担当しました。また岡本がサウンド担当であり、ファクトリープリセットを作るほか、音周り全般をサポートしている形ですね。
高橋:iPhoneはユーザー数も多いので、以前からiPhoneで動かせたら……とずっと思ってはいました。ただ、画面が小さいため、ここでiELECTRIBEを動かすのはUI的に現実的でなかったのが実情です。ただ、1年前にiPhone 6が発表されたのを見て、これだけ大きな画面なら、なんとか操作性を失わずに作れるのではないか…と思うようになったのです。もちろんiPhone 6 Plusであれば、さらに使いやすいだろうな、と。
左が5年前にリリースされたiELECTRIBE for iPad、右が新しく登場したKORG iELECTRIBE for iPhone
各機種で表示させたiELECTRIBE for iPhone。iPhone 6(上)、iPad Air2(左下)、iPhone 6plus(右下)
高橋:実は、私が初めて本格的に触った電子楽器が、ER-1だったんです。当時、まだ大学生だったのですが、これでエレクトロニカやドラム’n’ベースとかを、家にこもって一人で作って遊んでいたので、個人的にはとても思い入れのあるマシンなんですよ。だからこそ、次にiELECTRIBEを作るなら、ER-1のデザインにしたいと思っていたし、そのデザインも徹底的にこだわって再現しようと思っていました。
岡本:私もELECTRIBEは学生時代から触れていました。ER-1は友人の家で触ったことはありましたが、自分で買ったのはELECTRIBE MX(EM-X)でした。高校の学園祭でEM-Xを使ってライブをやったりしましたよ。といっても演奏は自分ひとりで、友人のダンサーが踊るという……(笑)。まだ入社2年目ですが、入社して最初にelectribe samplerのサウンドに関わり、2つ目がこれ。とっても楽しいですね。
岡本:サウンドエンジン自体は、iELECTRIBE for iPadで完成していたので、それを使っています。これはER-1をそのままエミュレーションできます。また、今回収録されているER-1のプリセット192個は、ER-1の実機から吸い出したパラメータそのものなんですよ。だから、このプリセットは1999年の実機を作った当時のスタッフが制作したものというわけです。一方で、新しいiELECTRIBEには新規に64個のプリセットが追加されていますが、そのうちの半分をRichard Devineさん(https://soundcloud.com/richarddevine)が、残り半分を私が担当しています。各プリセットのインフォメーション部分を見て頂くと、どちらが担当したプリセットなのか確認できますよ。
高橋:DSP自体を完全な形で移植していますので、同じ音が出ますね。ただ、実機にはないエフェクトを搭載しているので、その意味では大きく拡張されており、エフェクトを利用することで実機には出せないサウンドを出すことが可能になっています。
--ほかに音作りという面でER-1実機と違う点はあるのですか?
岡本:ピッチを揺らすという意味ではパート毎のモジュレーションと同じなのですが、クロスモジュレーションだと揺らしている時間を調整できます。Synth 1に対してSynth 2が揺らす役になるわけですが、2のディケイを極端に短くして同時に鳴らすと、2の短い音が鳴ってる瞬間だけ1にモジュレーションがかかるので、頭だけ高く金属的な響きを作ることができるんです。これによってアナログっぽくない硬い音を作ることができます。
岡本:フィルターはエフェクトの一種としてのみ搭載されています。なのでピッチモジュレーションのみで音作りをするわけですが、キックの音ひとつ作り込むにもなかなか奥が深く、楽しいんですよ。また、LOW BOOSTというツマミがありますが、これを一番絞るとシャキシャキと高音が立った音になるのに対し、右に回していくと高音が下がっていく代わりに低音が上がってきます。これを120前後まで上げると、音が歪みはじめ、キツイ音になってきます。これでうるさければ、DECAYを短くすると嫌な歪みのない、キックに仕上がってきます。こういった細かい音作りは、実機では実際にツマミを触りながら直感的に操作していたわけですが、iELECTRIBEではツマミをフリックすることができるので、より細かく作り込むことができますよ。
高橋:はい、ツマミの上をフリックすると値を1つずつ動かすことができます。あまり知られてないんですが、これはiELECTRIBE for iPadのときから使えた方法でして、他のコルグのアプリにも搭載されています。これを使うことで、シンセパートのピッチノブを1つずつ動かすことができます。1つで半音ですから、これをモーションREC機能で使うことで、ある程度意図したシーケンスパターンを作ることもできるわけです。
※インタビューを行った直後の9月16日に、AppleからiOS9がリリースされましたが、一部のDTM系アプリで不具合も出ていたようで、コルグからも「iOS9対応状況に関するお知らせ」としてのアナウンスが出されました。ただ、すでにKORG iELECTRIBE for iPhoneをはじめ、KORG Gadget for iPad、KORG Module for iPad、iM1 for iPadは修正版がリリースされているので、iOS9でも問題なく使えるようですよ。
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KORG iELECTRIBE for iPhone(2015年9月30日まで半額の1,200円)
【製品情報】
KORG iELECTRIBE for iPhone製品情報