DAWで立体的サウンドを作り上げるプラグイン、360 WalkMix Creatorの威力

ソニーが開発したオブジェクトベースの360立体音響技術を使った音楽体験ができる、360 Reality Audio。これを使うことで、ヘッドホンで聴いているのに、前後左右そして上下も含め、自分を取り囲むすべて方向から音が聴こえるという、とっても不思議な体験をすることができます。そんなコンテンツが少しずつ増えてきており、従来のステレオとはまさに次元の異なる作品が次々と登場しています。

今後、このような立体音響技術を使った作品作りは、着実に広まっていくと言われていますが、こうした音作りは何もプロだけの世界の話ではありません。プラグインを使うことで、普段使っているDAWで、作っていくことが可能なのです。そのプラグインとして発売されたのが360 WalkMix Creator(税込価格64,900円)というもの。Windows、Macの双方で利用でき、VST3、AudioUnit、AAX環境で動作するプラグインであり、各種DAWで利用することができます。いわゆるエフェクトのプラグインとはだいぶ違った使い方のソフトなのですが、これがどんなものなのか紹介してみたいと思います。

各種DAWで360 Reality Audioのサウンドを制作することができるプラグイン、360 WalkMix Creator

先日「DTMの世界を大きく進化させるイマーシブオーディオと360 Reality Audioの世界」という記事で、360 Reality Audioについて紹介しましたが、「名前は聞いたことがあるけど、よく知らなかった」、「すごく興味があるので、ぜひ体験してみたい」、「ぜひ、自分でも作ってみたい」……といった声を多数いただき、多くの人たちが興味を持ってみているのを感じました。そのときの記事でも触れたとおり、これからしばらく、DTMユーザーが360 Reality Audioのサウンドを作るにはどうすればいいのかを連載していくのですが、今回は、そのためのツールである360 WalkMix Creatorの概要について紹介していきます。

この辺の情報を詳しくチェックしている人だと、「あれ?去年、このプラグイン発売されてなかったっけ?」と思われる方もいると思います。その通りでアメリカ・ワシントン州シアトルにあるVirtural Sonicsという会社が開発し、その子会社であるAudio Futuresが、昨年4月にダウンロード販売を開始していました。エンジン部分はもちろんソニーによるものだと思いますが、プラグイン製品としてはAudio Futuresの製品としてリリースされており、私も、AV Watchの連載記事の中で何回か取り上げていました。が、その後、機能強化されるとともに当初の製品名から360 WalkMix Creatorと名称変更されて、この7月から国内でもメディアインテグレーションが扱う形で正式に発売されたのです。

メディアインテグレーションから購入したバウチャーを入力して、360 WalkMix Creatorと引き換える

いわゆるパッケージソフトではなく、国内でもダウンロード販売という形です。ただ、ソフト自体をメディアインテグレーションからダウンロードするわけではなく、購入して届くのはバウチャーコードと呼ばれるコードとなっています。このコードを360ra.comというサイトにアクセスして入力することで、プラグインがダウンロードできるようになっているんですね。

Windows版、Mac版ともに用意されているので、必要なものをダウンロード。同時にインストールできるのは3台まで

冒頭でも示したとおり、360 WalkMix CreatorはWindows版、Mac版があり、VST3、AudioUnit、AAXの規格にマッチしたプラグインとなっていますが、一般のプラグインとはやや動作の仕組みが異なるプラグインでもあるため、VST3などに対応したDAWなら何でも確実に動くことが保証されているわけではありません。現在動作確認が取れているのは以下のDAWとなっています。

Windows Mac
Pro Tools
Ableton Live
Logic Pro
Cubase
Nuendo
Sequoia
Studio One
Reaper

ただ、私がBitwigやFL Studioで試してみたところ、とりあえずは動作しているようなので、問題なく使えそうではありますが、現時点ではサポート対象外ということのようですね。

では、この360 WalkMix Creatorでは、どうやって、その立体的な音の世界を作っていくのでしょうか?ここで、まず知っておくべき用語が

オブジェクトベース

という言葉。これは360 Reality Audioに限らず、立体音響の世界において必ず登場してくる用語であり、対比されるのが

チャンネルベース

という言葉です。

みなさんもステレオでミックスする場合には右チャンネル、左チャンネルと、左右をチャンネルで捉え、どちらのスピーカーから音が出てくるかを考えていくと思います。これが、5.1chとか7.1chのサラウンドサウンドをミックスしていくという場合にも、前方のセンターのチャンネル、後方左のチャンネル……というようにどのスピーカーから音が出るのかという観点から作っていきます。普段、あまり意識していないとは思いますが、これがチャンネルベースでの音作りなんです。

それに対し、360 Reality Audioの世界では異なるオブジェクトベースという考え方をしていきます。これは例えばボーカル、ギター、ピアノ……といった各音源が空間上のどこにあるのかという位置情報を持たせて制作していくというもの。再生時にはプレイヤーやアンプ、スピーカー、ヘッドホンなどの再生環境がその位置情報を元に、音を再現するという仕組みになっているのです。実際の制作ツールである360 WalkMix Creatorでは、そのオブジェクトベースでの音作りとなっている、というのが重要なポイントとなってっくるのです。

前回の記事でも紹介したとおり、360 Reality Audioはヘッドホンで再生することで、立体的な音を聴くことができますが、ここで「右のドライバーユニットから聴こえる音」、「左のドライバーユニットから聴こえる音」のようにチャンネルベースで考えるわけではありません。またテレビの前に置くサウンドバーから360 Reality Audioの音を再生したり、必要に応じてリアスピーカーを設置して再生したりもできますが、ここでも「サウンドバーからの音」とか「後方左のリアスピーカーからの音」のようなチャンネルベースで考えるのではなく、どの位置の音であるかというオブジェクトベースて音を作っていくのです。

オブジェクトベースで音を全天球上に配置していく360 WalkMix Creator

360 Reality Audioのオブジェクトベースでの音作りでは、まず自分が球の形(全天球)の中心にいると想像します。その上で、たとえばボーカル、ピアノ、ギター……といった音がどっちの方向から聴こえてくるのか、全天球上に自由に指定する、という音作りの考え方になってるのです。つまりボーカル、ピアノ、ギター……といった一つ一つがオブジェクトであり、これらを全天球上に配置していくことで、ミックスしていくのです。この際、どこにスピーカーがあるのか、何個のスピーカーを設置するのか……といったことを原則的にはあまり考慮しないというのが、オブジェクトベースの音作りの醍醐味であり、面白さでもあるのです。

各オブジェクトをそれぞれ配置していく。ビューモードの切り替えにより前からや右からの画面でも設定できる

そして、この球面上に最大128個のオブジェクトを扱えるようになっているというのが、360 Reality Audioの特徴。「でも、このピアノサウンドはもともとステレオでレコーディングしているんだけど、その場合はどうなるの?」と疑問に思う方もいるでしょう。実はその場合はステレオを2つのオブジェクトのペアとして扱い、球面上に配置していくことができます。その際の2つのオブジェクトの相対的位置というか間隔=Widthも自由に設定できるので、ステレオで録ったものは、ステレオであることを生かしたまま、配置していくことが可能なんです。

ステレオで録ったもののステレオ感や広がりを調整しながら配置することができる

もちろんDAWにはオートメーション機能があるので、全天球上に配置したオブジェクトは固定しておくだけでなく、動かしていくこともできます。たとえばボーカルが前方から登場し、真上を通って後方へ抜けていく……といった作り方もできるわけです。もっとも数多くあるオブジェクトすべてがグニョグニョと動き出したら、聴いている人も、どこからどの音が出ているのか判断付かなくなってしまうので、動かす音はある程度絞るなど、効果的に聴かせるためのノウハウはありそうですが、その辺のテクニックも随時紹介していきたいと思います。

次回は、このように全天球上にオブジェクトを配置していく360 WalkMix CreatorとDAWのミキシングコンソール(ミキサー)がどういう関係にあるのか、このように作った音はどんな形式でどのように出力していくのか、ということについて見ていくことにします。

【関連情報】
360 Reality Audioサイト(クリエイター向け)
360 WalkMix Creator製品情報

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