ハードシンセとソフトシンセが完全連動、デジタルもアナログも搭載する超強力で幅広い音作りができるArturia MiniFreak

昨年末、フランスのArturia(アートリア)から、非常に強力でユニークなシンセサイザ、MiniFreak(ミニフリーク)が国内でも発売されました(税込メーカー希望小売価格:132,000円)。Arturiaのシンセというと、MiniBruteやMatrixBruteなど、最新鋭のアナログシンセというイメージも強いですが、このMiniFreakはアナログとデジタルを融合させ、内部的に自由に組み合わせて音作りができるというもの。4年前に発売されて大きな話題になったMicroFreakの上位版という位置づけのものです。

MiniFreakには22種類のオシレーターモードを内蔵したサウンドエンジンが2系統搭載されているなど、多彩な音作りが可能になっていますが、特徴的なのはMiniFreak自体をソフトウェアで再現するMiniFreak Vがバンドルされてて、それと完全連動させることが可能であるという点。実はそのMiniFreak Vも1月17日よりArturiaの本国サイトから単独での販売も開始されています。今回はそのハードウェアのMiniFreakとソフトウェアのMiniFreak Vを連携させて使ってみたので、これがどんなシンセサイザなのか紹介してみたいと思います。

ArturiaのMiniFreak(手前)と、それをソフトウェアで再現するMiniFreak V(後方画面)

MicroFreakの上位版として誕生したMiniFreak

まず、MiniFreakがどんな製品なのか、Yasushi.Kさんが紹介している3分のビデオがあるので、これを見ると、その音や雰囲気が分かると思います。

このビデオの中でも解説されている通り、MiniFreakはMicroFreakのサウンドエンジンを2系統搭載し、強力なエフェクトを3系統搭載するとともに、アルペジエータやシーケンサなどを大きく進化させたというシンセサイザです。MicroFreakが基板むき出しのタッチセンス型のものだったのに対し、MiniFreakは、かなりしっかりしたキータッチの37鍵のミニキーボードであるのも大きな違いですね。

37鍵のミニキーで、ピッチベンド・モジュレーションはタッチセンサー式になっているMini Freak

そのサウンドエンジンにはバーチャルアナログ、FM音源、ノイズ、フォルマント、スピーチシンセサイザなど、以下の22種類から選択できるようになっていて、これらを選ぶだけでもまったく違ったサウンドになっていきます

Noise Comb Filter Chords
Superwave Phaser Filter Speech
Harmo Destroy Modal
Karplus Str. FM/RM SawX
BasicWaves V.Analog Harm
Audio In Waveshaper Bass
Multi Filter Two Op. FM
Surgeon Filter Formant

そのオシレーターが2つあり、それぞれをミックスさせて鳴らすこともできるし、掛け合わせて鳴らすといった複雑な使い方も可能です。その信号がフィルタに届くのですが、ここは完全なアナログ。LPF、BPF、HPFの3種類から選択でき、カットオフ、レゾナンスなどのパラメータで音を変化させていくのです。

フィルタはアナログ回路が搭載されており、LPF、BPF、HPFの3種類から選択可能

非常に自由度の高い、モジュレーションマトリックスを装備

さらに3系統のデジタルエフェクトが搭載されていたり、LFO、エンベロープジェネレータ、サイクリング・エンベロープ……といったものが搭載されているほか、アルペジエーターやステップシーケンサがあるなど、かなりバリエーション豊富な音作りが可能になっているのですが、なかでも大きな特徴になっているのが、本体左上にあるモジュレーションマトリックスです。7つのソースと13 のデスティネーションの掛け合わせが可能となっていて、通常のパラメータ設定ではできない、複雑な音作りも可能になっています。

さまざまなパッチングが可能なモジュレーション・マトリックス

またアルペジエータやシーケンサも非常に強力。とくにシーケンサは最大で16ステップx4=64ステップで組むことができるようになっているのですが、本体上のボタンで、ステップを点灯し、鍵盤でピッチを設定するだけで簡単にパターンを組んでいくことができるし、必要に応じて4種類のパラメータも調整していくことができるので、自在に使えるようになっています。

鍵盤の上に並んでいるボタンを使うことでステップシーケンサのパターンを組んでいくことができる

また外部との接続性も非常に高くなっています。リアを見ると、いろいろな端子が並んでいるのが分かりますが、まずはMIDIのIN、OUT、THRUで各種MIDI機器との接続が可能です。これをMIDI音源と考えた場合、最大6ボイスのシンセとなっていり、デフォルトではMIDI Ch1で受信する形ですね。

Mini Freakのリアパネル。MIDI入出力、オーディオ入出力、クロックの入出力などが並んでいる

またオーディオのほうは左右チャンネルのライン出力があるほか、ヘッドホン出力、そして外部入力もそれぞれ標準ジャックで用意されています。また、同じ標準ジャックで、サステインべダル用の端子もあります。

一方、3.5mmの端子が3つ並んでいますが、それぞれClock In、Clock Out、Reset Outとなっています。内部シーケンサを外部機器と、このクロックで同期させることができるんですね。デフォルトは4PPQですが、2PPQ、24PPQ、48PPQを設定できるなど、細かな設定も可能。一方で、Reset Outって何だ?と思って確認してみたところ、これはMiniFreak本体での操作や外部のコントロールでアルペジエータやシーケンサがスタートすると、+5Vのパルスを5msecの長さで出力するというもの。これによって外部シーケンサをコントロールしていることを確認するために使用できるようです。

MiniFreakとMiniFreak Vのシームレスな関係

MiniFreakをソフトウェアで再現するMiniFreak Vが付属している

さて、そのMiniFreakにはArturiaの新しいソフトウェア音源、MiniFreak Vが同梱されています。これはWindows(Windows 10以上の64bit)/masOS(macOS 10.13以上のIntelもしくはApple Silicon)で動くもので、スタンドアロンおよびVST2/VST3、AU、AAX環境で動く形となっています。前述の通り、フランスのArturiaサイトから、このMiniFreak V単体で購入することも可能になっており、ハードウェアのMiniFreakとまったく同様に動作するのですが、やっぱり面白いのは、この2つが連携するという点です。

Advancedボタンを押すことで、さまざまなパラメータを画面に表示できる

どうやって連携させるのかというと、それが先ほどのリアの端子で触れていなかったUSBです。USB接続すると、MiniFreak V側が接続されていることを自動で認識して連携してくれるのです。この際、特に設定などは不要なようです。もちろん、手動で連携を解除したり、改めて連携させたり…ということも可能になっています。

USB接続することで、ハードウェアのMini FreakとソフトウェアのMini Freak Vを完全連動させることが可能

では、連携すると何ができるのでしょうか?簡単にいうと、ハードシンセ側もソフトシンセ側もまったく同じ動作をするようになるのです。たとえばプリセットを読み込むと、ソフト側で操作してもハード側で操作しても、同じ状況になります。それぞれで演奏すると同じ音で鳴るんですね。

でも実際に弾いてみて、その音を聴くとわかるのですが、当然ながらそれぞれ別の音源なんですよね。そのため、MIDIで同時に鳴らしたとしても、微妙にタイミングだったり、音の雰囲気だったりが違うのも面白いところ。たとえばフィルタにおいてハードシンセ側はアナログ回路で構成されていますが、ソフトシンセ側はアナログ回路をシミュレーションしているので、微妙な違いがある…ということなのではないでしょうか?

マトリックスでのパッチングも、ソフトウェアで行うほうが、より扱いやすい

ハードシンセにある各種ノブを動かすと、それがソフトシンセにも連動するから、まさにフィジカルコントローラとしても使えるわけです。逆にシーケンサ部分やマトリックスなどは、ソフトシンセ側のほうは操作性がいいから、コンピュータで操作して、ハードシンセを設定するというのも便利です。

シーケンスも、ピアノロール画面上で細かく組んでいくことが可能

もちろん双方でプリセットも同じものが設定されているから、たとえばソフトシンセでユーザープリセットをいろいろと設定し、整理しておけば、ハードシンセ側で簡単に呼び出すことが可能です。そして、USB接続を切り離せば、それぞれは完全に独立した別々のシンセとなるので、自宅のDTM環境の音をそのまま外に持ち出して使うことも可能になるわけです。

プリセットの管理もソフトウェアのほうがより操作性良く行える

なお、このUSB端子でやり取りできるのはMIDIの入出力と、ハードシンセ/ソフトシンセを連携するデータのやり取りのみで、オーディオの入出力はありません。もちろん、DAWからコントロールすることもできるし、ハードウェア側の鍵盤を弾いてDAWの別のシンセを鳴らしたり、レコーディングすることも可能ですね。ちなみに、ピッチベンド、モジュレーションはタッチセンサー式になっており、モードを変更することによって、これをマクロとしてつかったり、シーケンサやアルペジエーターのパラメータエディットに使うことも可能になっています。

ソフトウェア側でプリセットを設定し、ハードウェア側へと持ち出すことも可能

もしファームウェアアップデートに失敗したら…

ところで、最後にちょっとだけ補足的な情報を。MiniFreakはアナログ回路も入ったシンセサイザではありますが、ほとんどの部分はデジタル制御されたシステムであり、ファームウェアを通じて動作しています。そして時にはArturiaがファームウェアのアップデータを発表し、それを適用することで、不具合を直したり、性能UPしたりさせることができるわけです。

そして、そのファームウェアアップデートも、MiniFreak Vを使って簡単に行えるようになっています。実際、私も初めてMiniFreak Vを起動して、ハードウェアのMiniFreakをUSB接続したら、そのタイミングでファームウェアアップデートの案内が表れて、なるほど!と思った次第。

Mini Freak Vを通じて、Mini Freakのファームウェアアップデートが可能なのだが…

この緑のDownload & Install lastestというボタンを押したところで、電源を入れなおせ…といったようなメッセージが表れ、あまりちゃんと読まないうちに、MiniFreakの電源を切ってしまったのが大失敗。どうやらファームウェアアップデート中に電源を落としてしまったらしく、MiniFreakの電源を入れても、まったく使えなくなってしまったのです。マニュアルを見ても、そうした場合の対処法に関する記載はなく、ネットを検索しても見つかりません。これは大失敗で、メーカー修理事案か……と焦りました。

が、きっと何か手段があるはずと、適当に操作してみたらビンゴ!本体左にあるShiftボタンとその隣のOctaveの左ボタンの2つを同時に押しながら電源を入れなおしたら、反応し、ファームウェアアップデートが可能な状態になったのです。まあ、ちゃんと画面のメッセージを読んで行動するのがベストですが、もしもファームウェアアップデートを失敗して、MiniFreakが起動しない…という状態に陥ったら、ぜひ試してみてください。

ファームウェアアップデートに失敗した場合はShift+Octave(-)を押しながら電源オンで、改めてアップデートできる

以上、ArturiaのMiniFreakについて紹介してみました。定価で132,000円という価格なので、簡単に買える機材ではないものの、かなり面白く、使えるシンセであることは間違いありません。MiniFreak Vとの強力な連携も含め非常によくできているシステムだと思うので、ハードシンセの購入を検討している方は、その検討材料の一つに加えてみるといいと思いますよ!

 

DTMステーションPlus! Arturia特集のお知らせ!

2月14日配信予定のDTMステーションのYouTube/ニコニコ生放送の番組、DTMステーションPlus!において、Arturia製品を取り上げて特集します。今回の記事のMiniFreakや先日「超ハイコストパフォーマンスなMIDIキーボード&ソフトシンセのセット、Arturia MiniLab 3は全部込々で18,150円!?」という記事で取り上げたMiniLab 3などを、実際に音を出しながら紹介していくので、ぜひご覧ください。

日時:2023年2月14日 20:00~22:00

YouTube Live: https://youtube.com/live/mtsWPTl-mbc

ニコニコ生放送: https://live.nicovideo.jp/watch/lv340191557

 

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MiniFreak製品情報

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