世界初の3Dシンセサイザー!?バイノーラルから7.1.4、Ambisonicsまで、空間オーディオで自由な音作りができるSkyDust 3D誕生

立体サウンドを作るためのツールを開発するポルトガルのソフトウェアメーカー、Sound Particlesから、非常にユニークなソフトシンセSkyDust 3D(税込標準価格51,700円、リリースセール価格 38,755円)およびSkyDust Stereo(税込標準価格25,960円、リリースセール価格19,470円)なるものが4月12日発表されると同時に発売されました。これはおそらく世界初となる3Dサウンドを直接出力できるシンセサイザで、普通にステレオ出力できるのはもちろんですが、SkyDust 3Dでは5.1chや7.1chなどのサラウンド、7.1.2や7.1.4などDolby Atmos互換のイマーシブのスピーカー設定、Ambisonicsに対応した設定での出力が可能で、環境に応じた立体サウンドでシンセの演奏ができるようになっています。

とはいえ、そんなスピーカー環境持ってないよ、という人がほとんどでしょう。でも大丈夫。ヘッドホンで立体的に音を鳴らせるバイノーラルにも対応しているので、オーディオインターフェイスとヘッドホンさえあれば、すぐに空間オーディオの世界に浸ることが可能です。またバイノーラルであればSkyDust Stereoでも利用可能となっています。もちろんシンセとしても非常に強力で8つのオシレーターを装備し、ノートごとに3D位置情報を持つ形で鳴らすことができたり、FMシンセシス機能でオシレータ同士をかけ合わせたり、さまざまなフィルタを装備していたり、もちろんアルペジエータ、エフェクト……などを持つものです。そのSkyDust 3Dを発表前に少し試すことができたので、どんなものなのか紹介してみましょう。

世界初の3D対応のシンセサイザ、SkyDust 3Dが発売開始

ポルトガルのSound Particlesに関しては、以前「ハリウッド映画御用達のツールメーカーが開発するプラグイン、Energy Pannerを使うと音が背後に!?」、「スマホを動かして、好きなところに音源を移動させる魔法のプラグインSpace Controller!」といった記事で同社のプラグインを紹介してきたことがありました。いずれも、ほかにはない非常にユニークなツールで、これらを使って立体オーディオ作品を作っている人も多いと思います。

そのSound Particlesが2023年のNAMM SHOWのタイミングで新たな製品を出すらしい……という情報を聞いていたので、今度はどんなエフェクトを出してくるんだろう、と思っていたのですが、エフェクトではなくシンセであることを知って驚いたところです。

そのSound ParticlesのSkyDust 3Dを紹介するビデオがあるので、まずはこちらをご覧ください。

なんとなく雰囲気は感じ取れたでしょうか?シンセサウンドを鳴らすと、そのサウンドを立体的に配置して、空間的な表現が可能になっているのです。単に立体的なエフェクトをかけて音を広げるというのではなく、たとえば1つ目の音は左上から右上に動いていき、2つ目の音は右後方から左前方へ動いてく……なんてことができるのです。

では、もう少し具体的に紹介していきましょう。SkyDust 3DおよびSkyDust StereoはMacのVST3、AU、AAXのプラグインとして、またWindowsのVST3およびAAXのプラグインとして動作するソフトウェア音源です。

SkyDust 3Dの起動時に表示されるメイン画面

起動させると、メイン画面が登場し、プリセットサウンドがズラリと並んでいます。シンセについてまったくわからない人でも、このプリセットから適当なものをクリックして、鍵盤を弾けば、即、立体的なサウンドで演奏することが可能になります。が、その前に一つ準備しておくのが、出力環境の設定です。もし、Dolby Atmosミックスなどを行っている方で、7.1.2chといったスピーカー環境を持っているのであれば、7.1.2を選び、5.1chのサラウンド環境がある方ならそれを選びます。一方、そうした立体的な配置のスピーカーはないからヘッドホンで楽しみたいという方は、Binauralを選択します。

出力環境を設定する。SkyDust Stereoの場合もBinauralの設定は可能

その上で、鍵盤を弾いてみると、ヘッドホンからのサウンドが立体的に聴こえてくるんですね。どのように立体的なのかはプリセットによっても異なりますが、画面右側にあるSpatial Viewという7角形の中に、さまざまな色の点が動き回るので、それとともに音を聴くと、どこからどう聴こえてきているのかを確認することができます。

どこから音が出ているのかを視覚的に表示するSpatial View

このSpatial View、上が前方で下が後方を表しており、中心に行くほど頭上に向かっていく形になっています。画面左下の選択肢がデフォルトではKEYSとなっていて、画面下部分にキーボードが表示されていますが、これをSPATIALを選ぶと、真上からや正面から、後ろから見た画面に切り替わるので、より分かりやすくなると思います。

画面左下のスイッチをSPATIALにすると、各方向から見た音の配置が分かる

音色や弾き方によって、どこかの場所に定位していたり、動き回ったりする、とっても不思議な感覚のシンセです。

OSCセクションでは、SkyDustに搭載されている8つのオシレーターを1つずつ設定できる

では、画面上にあるタブ切り替えてMAINからほかの画面にしてみるとSkyDust 3Dのシンセの各パラメータが現れ、シンセの構造がより具体的に見えてきます。まずはOSCから。この画面を見るとわかる通り、SkyDust 3Dには8つのオシレータがあり、それぞれの波形を細かく設定していくことができます。基本波形としてサイン波、矩形波、三角波、ノコギリ波があるほか、サイン波x2というものやサイン波+無音で1つの波形にしたもの、さらにはピンクノイズやホワイトノイズ……といったものから選択できるようになっています。

それぞれのオシレータで使う波形を設定する

また、各オシレータの詳細設定画面に入るとエンベロープジェネレータの設定やLFOの設定など、オシレータを細かく設定していくことができます。そして、画面下をミキサーにしておくことで、各オシレータのバランス調整も可能になります。

各オシレータごとにEGやLFOなども細かく設定可能

一方、FILTERを選択すると、非常に強力なフィルタが搭載されていることがわかります。グローバルフィルタとして、全体にかけるフィルタがあり、ローパス、ハイパス、バンドパス……と各種フィルタを選ぶことができ、-6dB/Oct~-48dB/Octまで5段階での設定も可能になっています。そしてフィルタ用のエンベロープの設定できるようになっていますね。

フィルタもローパス、ハイパス、バンドパスなどから選択でき、カットオフフリケンシー、レゾナンスなど設定していける

ちなみにこのエンベロープジェネレータ、先ほどのオシレータの同様ですが、ADSRだけではないんです。AR、ADR、ADSR、AHDSR、DAHDSRと細かな設定が可能なので、音作りの幅も広がります。

SkyDustに搭載されているEGはADSRだけでなく、ARからDAHDSRまで、いろいろなものが選べる

さらに、このフィルタはグローバルフィルタだけでなく、先ほどの8つあるオシレータそれぞれに1つずつ設定することも可能になっています。そう、こだわればこだわるほど、複雑な音作りが可能なんですね。

が、このSkyDust 3Dのシンセのスゴイのは、この8つあるオシレータを自在に使ってFMシンセサイザを構築することが可能になっているという点。つまり8オペのFM音源ともいえるわけですが、アルゴリズムをマトリックス画面を用いて自由自在に組んでいくことができるため、本家ヤマハのFM音源の遥か上を行く自由さを持ったシンセサイザとなっているのです。ここまで自由度が高いと、どうすればどんな音が出るのか、さっぱり創造もつかないくらいですが、まずはプリセットからいじっていくといいかもしれません。

アルゴリズムまで自由自在に組み上げることができる8オペレータのFM音源

さらに、各オシレータごとにピッチを調整するパラメータもあり、シンセサイザとして、非常に整理され、よくできた構造になっているのですが、SkyDust 3Dの本番はここから。

各オシレータごとに空間内での音の配置が可能

SPATIALを選ぶと、このシンセをどうやって立体的に扱うのかの設定ができるようになっています。左側のタブがOFFだと、音の動きが止まった状態ですが、各オシレータごとに、どの位置から音を出すのか、Spatial Viewのパンナーで調整していくことができます。ヘッドホンを使ってバイノーラルでモニターしながらパンナーをマウスで動かしていくと、好きなところから音を出すことが可能となります。各Spatial Viewの下にあるスライダーは音の乖離度というか点からどのくらい音を広げるかの設定ができるようになっています。

オシレータの音の配置は固定させるだけでなく、動的に動かすことができ、その動かし方も自由に設定できる

さらに、このSPATIALにおいてMOVEMENT MODIFIERSを選択すると、音の位置を時間経過とともに動かしていくことが可能になります。この際、鍵盤を押している間、どのような動きをするのか、どのくらいの広がりや高さを持たせるのかなどの設定ができるとともに、鍵盤から手を放してからの動きも設定できるようになっています。しかも、8つあるオシレータそれぞれでの動きとグローバルでの動きも設定できるので、いくらでも綿密に作りこんでいくことができるわけです。

強力なアルペジエーターも搭載さいれている

さらにアルペジエータがあり、シーケンサも搭載されています。16ステップでも32ステップでも128ステップでも自由に設定して、ここでシーケンスパターンを組んでくことができるのです。しかもこのシーケンサ、単に音程を組んでいくだけでなく、ステップごとにフィルタの各パラメータを設定したり、FMのパラメータを設定したり、さらにはSPATIALの各パラメータを組んでいくことができるなど、自由自在。アイディア次第でかなり面白い使い方ができそうです。

何ステップでも自由に作れピッチだけでなく各パラメータも設定できるシーケンサも搭載

もちろん、SkyDust 3Dにはエフェクトも搭載されています。ディレイ、リバーブ、ビットクラッシャ、イコライザ、ディストーションと5種類が搭載されているので、これを最終段に組み込んでいくことができるのです。

5種類のエフェクトも搭載されている

そして、もう一つ重要な設定項目がMATRIXです。これは最近のソフトシンセにもよくあるマトリックスを組んでいくためのもので、SOURCE(元のパラメータ)とDESTINATION(ターゲット先となるパラメータ)を設定していく形になっています。ここで面白いのはDESTINATIONにフィルタやオシレータのパラメータを設定するだけでなく、SPATIALのパラメータも設定できるという点です。つかり、何かのパラメータを動かすと、それに伴って3D空間内での音の位置を動かしていくことが可能なのです。

マトリックス機能では、MIDIの入力も利用可能

その際、SOURCEをLFOとかEGなどに設定するだけでなく、MIDIの各パラメータを割り当てることができるというのが面白いところ。たとえばPitch Bendにすれば、ピッチベンドを動かすことで、音程が変わるだけでなく音の空間内の位置を動かすことができるし、アフタータッチにすれば、鍵盤を弾いた後に、押し込み具合によって、音の位置を動かすことができるわけです。もちろんコントロールチェンジも自由に割り当てていくことができるので、キーボードの弾き方で音の立体的な鳴り方を自由に変えていける、というわけなのです。

以上、SkyDust 3Dについて、その表面部分だけをざっと紹介してみましたが、その面白さが少しは伝わったでしょうか?とにかく自由度が高いシンセサイザであり、フィルタやエンベロープジェネレータを動かすのと同じ感覚で、空間内の音の位置も調整できるようになっているので、今までにないシンセサイザとして使っていくことができそうです。

冒頭でも紹介した通り、7.1.4chとか、Ambisonicsなどにも対応する3D版のSkyDust 3Dがあるほか、バイノーラルにも対応するステレオ版のSkyDust Stereoの2種類があります。すでにサラウンド環境やイマーシブ環境を整えている人であれば、もちろんSkyDust 3Dを選ぶべきですが、ヘッドホン環境で立体サウンドのシンセを使いたいという人なら、SkyDust Stereoで十分だと思います。確認したところ、残念ながらStereo版から3D版へのアップグレードパスは用意されていないとのこと。一方で、Stereoで作ったプロジェクトを3Dで使ったり、反対に3Dで作ったプロジェクトをStereoで使うことは可能で、互換性は保たれているそうです。いずれにせよ、このリリースセール中に買えば、かなり安く入手できるのでチャンスだと思います。

【製品情報】
SkyDust 3D/SkyDust Stereo製品情報

【価格チェック&購入】
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